クルド人の祖先にまつわる伝承と、肩先のヘビの話

以前、クルド人の口承伝承について気になる記述を見つけたことがあった。

「古代ペルシャにはザッハークという残虐な王がいた。両肩からヘビが延び、全身に痛みが走る。ある日、医者に化けた悪魔から『若者の脳みそを両肩のヘビに食べさせれば痛みは収まる』と聞かされ、王は毎日、二人ずつの若者を殺させるようになった。だがある日、若者を殺すのをためらった家臣が、若者を逃し、羊の脳みそを王のもとへ持っていった」――

この時いらい、逃された若者たちの人数は日に日に積み上がり、やがて山奥に逃げ込んだ彼らの子孫が独自の文化を持つ「クルド人」になったのだという。

…まあ、うん。
ザッハークって名前で「あっ…」て気がつくと思うんだが、これ、シャー・ナー・メの中に収録されてる物語そのまんまで、逃げた若者が自分たちの祖先、っていうところを付け足ししただけなんだよね。
なのでオリジナルの民族記憶ではないんだろうな…ペルシャの神話からの流用だろうな…とは思うんだけど、「肩からヘビ」の部分のオリジナルがちょっと気になるのだ。

Mir_Musavvir_002_(Zahhak).jpg

メソポタミアでは肩からヘビ=冥界の神ニンギシュジダだから。

データ
http://www.moonover.jp/2goukan/meso/god_list/nin-gishuzida.htm

画像
ningishzidagudeasealblackgreen.jpg

「肩からヘビ」そのまんまの姿をした神様なので、これが元ネタなのはほぼ間違いないだろうなと思ってる。
だけど、なぜこの神様が「ペルシャの王」にされてしまったのか、なぜザッハークという名前にされてしまったのかがわからない。一説によれば、ザッハークの名はペルシャ語で「三頭の竜」を意味するAzi Dahakaから来ていて、竜/蛇の頭二つと自分の頭で合計三つの頭を持つように見えるニンギシュギダの元ネタなのでは、というが、それなら別に「ペルシャの王」という設定にしなくても良さそうに思える。

いつ、どういう経緯でメソポタミアの神話がペルシアに移植されたのか。(ゾロアスター教経由?)
なぜクルド人はそれを自分たちの祖先に結びつけようとしたのか。

調べてみても腑に落ちる答えが見つからないので、とりあえずメモだけしておこうと思う…。


*ちなみにクルド人の口承伝承の話はここに載ってた
*参考までに。

クルド人 国なき民族の年代記――老作家と息子が生きた時代 - 福島 利之
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