ナショジオチャンネル「発掘!砂漠に眠るファラオの謎 」、ファラオの謎はあんまり関係ないよねコレ

この番組、今なら全編Youtubeに公開されているぞ。
ギザ台地の、近年まで発掘されずにガレキ置き場みたいになっていた場所を発掘したら、一般庶民の墓がたくさん出てきたよという話。
https://www.youtube.com/watch?v=AikUwfAwxHs

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その発掘現場自体は面白いのだが、それ以外の要素が雑すぎる番組である。

視聴率稼ぎのためにとりあえずフォラオ絡めとこうか、とばかり「ピラミッドの中から消えたファラオの遺体はどこにいったのか。王家の谷のミイラたちのように、盗掘を受けたあと後世に埋葬し直された可能性もある。…そう、この発掘現場の墓のどこかにあるかもしれない!」などと、かなりコジツケな理由で期待を抱かせる、日本の昭和のバラエティ番組みたいな作りにしてしまった。お陰で発掘現場の情報は細切れだし、映像はきれいなのに安っぽさが否めない…。

そもそもの話をすると、ピラミッドが作られた古王国時代には、まだミイラ製造技術は確立されていない
現代人が見てよく知っているキレイなミイラは、すべてピラミッドから1000年以上後の新王国時代のものだ。それ以前は人間の形すら怪しい。
実例は以下に載せておいた。

もしもクフ王のミイラが無事だったら: そのミイラは、ほぼ確実に我々の知る姿ではない、という話。
https://55096962.at.webry.info/201610/article_11.html

なので、そもそも再現画像で人間の形で胸の前で手を組んだミイラが出てくるのが、そもそもの間違い。
ピラミッドが作られていた時代のミイラは、乾燥させたあて石膏で無理やり固めた代物のはずだから…。当然、保存状態は良くない。石膏像の中身はいいとこ骨の残骸である。実際、2008年に未盗掘で発見されたシェシェティ王妃のピラミッドの中身は、「茶色い染み」とでも呼ぶべき代物となっていた。遺体の回収すら出来ないので、残っていたとして再埋葬は不可能だろう。
当然、専門の学者ならこのくらい知っている。なので番組作りで夢をもたせるために現実を隠したということになる。


また、末期王朝時代にピラミッドが崇敬の対象になっていた、という話なのだが、そこにクフ王を入れるのはおかしいと思う。
なぜかというと、ヘロドトスがクフ王は残虐な王で、人民をむりやり働かせて巨大なピラミッドを作ったのだと書いているからだ。第23王朝からで考えても、ヘロドトスがエジプトに来るまでのたった数百年で伝承や考え方が大きく変わるというのは不自然だ。「クフ王は暴君として伝承されてしまったので、小さいピラミッドを築いて人民に配慮したと考えられたメンカウラーだけが崇敬の対象にされました」とするならば、まだ整合性は取れると思うのだが…。


あと、メンカウラー王のピラミッドから搬出された木製の棺と人骨は、まだイギリスにありますよね?? 無くしてなければ!
棺の話しておきながら、中身が新しい人骨だった話を出さないのは片手落ちでは。あと棺を海に沈めたのはあなたの国ですよ…あなたの国ですよ…イギリスさん! ちょっと! 目をそらさないで!!

ファラオの呪い=ツタンカーメンはもう古い。これからはメンカウラー王も入れてあげよう!
https://55096962.at.webry.info/201504/article_23.html

中に残ってた棺持ち出した上に無くした話もしないっていうのは、ちょっとフェアじゃないと思うんですよね。そういうとこだぞ。


以上、うるさいマニアからのツッコミでした。
とりあえず何でもファラオに絡めとけば視聴してもらえるだろ的なノリは勘弁してほしいんですよねー番組として面白くなくなっちゃうので。