100年前に見つかった古い歯の検証~ホモ・サピエンスとネアンデルタールの交雑の証拠が新たに見つかる

ちょっと気になる記事を見つけたのでメモ代わりに。
イギリスとフランスの間の海峡にある島で、1900年代初頭に見つかっていた歯の骨を再分析してみたところ、ホモ・サピエンスとネアンデルタールの交雑から数世代しか経っていないと思われるものが見つかった、という研究成果についてのものだ。

これがなぜ気になるかというと、年代が「4万8千年前」なのだ。ネアンデルタールの絶滅は、現在の説だとおよそ4万年前~5万年前となっている。つまり、両者の混血はネアンデルタールという種が消滅する直前(何千年か前)まで続いていたことの証明になる可能性がある。記事のタイトルが「絶滅ではなく吸収」となっているのは、そういうこと。

More Evidence That Neanderthals Were ‘Absorbed’ by Humans, Not Wiped Out
https://gizmodo.com/more-evidence-that-neanderthals-were-absorbed-by-huma-1846173050

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今の世の中では、DNAの解析によってネアンデルタールと現生人類が交雑していたことは、既に確定的な現実となっている。しかし、その物理的な証拠は意外に少ない。いま生きている我々のDNAの中にネアンデルタール由来のものがあるからどこかで交雑したことは間違いない、というくらいで、場所や年代は学者によって主張が異なる。判っていることは、純粋なアフリカ人以外のほぼすべての人々が約2パーセントのネアンデルタール要素を持つ、というところまでで、従って、交雑は現生人類がアフリカを出たあとのどこかの段階で起きたものとされている。

今回のこの発見は、ネアンデルタールと現生人類の交雑が、アフリカを出た直後ではなく遠く離れた場所でも起きていたこと、ネアンデルタールが消滅する直前まで続いていたことを示している。交雑はおそらく、一度や二度ではなかったはずなのだ。(でなければ、全世界の人類に広くDNAが受け継がれるはずがない) 喩えが微妙だが、二種類の人類は、犬とオオカミとか、飼育ロバとノロバくらいの差しかなかったのかもしれない。

しかし、別種の人間であるからには、そうホイホイ交雑していたわけでもない、と思う。
問題となるのは、どういう状況なら互いをパートナーとする条件が満たされるのか、ということ。たとえば、ある集団でたまたま男性が全滅してしまい、他所から男性を迎え入れなければならなくなった時とか、またその逆とかだ。そして、現在まで生き残っているのがホモ・サピエンスの側ということは、迎え入れる側がホモ・サピエンスであることのほうが多かったのだろう。


数十年前までは、ネアンデルタールは現生人類によって「絶滅」させられた可能性がある、とまで言われてきた。
しかし現在では、絶滅ではなく吸収であり、現生人類の中にネアンデルタールは今も生きている、という説が主流になりつつある。こうした古い資料の再検証などによっても、説は強化されている。
見える世界はほんの数十年で大きく変わる。これが人類史の面白さであり、読めないところでもある。


なお、今回の歯について、現段階ではまだ形質の判断からの推論だけで、DNA抽出はこれからやるらしい。それによって説が修正される可能性があるのには留意しておきたい。