トトメス4世がスフィンクスの足元に建てた「夢の碑文」、適当に訳してみた

「夢の碑文」とは、古代エジプトの第18王朝の王トトメス4世がギザ台地のスフィンクスの足元に建てた碑文だ。厳密に言うと小神殿と一緒につ作ったらしいのだが、現在は本体の碑文の上の方しか残されていない。

一般に「Dream Stele」という名前と、夢の中でスフィンクスに「お前を王にしてやる」と言われた、という内容はよく知られている。
彼は正妃の息子ではあったものの、どうやら皇太子ではなかったようだ。なのに何故か即位出来ていて、その理由づけとしてこの石碑を立てたのではないか――とされているが、なぜスフィンクスだったのか、などは謎である。

で、まぁ、本などで概要は出て来るものの細かい内容ってどーなってんだっけ? と思ったので、ちょっと訳してみた。
大雑把に内容分かればいいや的な内容、かつ英訳からの多重訳と見せかけて「ここ違うくね?」ってところは自分で補正しているので、文句がある人は自分でやってください。あと原語から起こせる人はそっちから頑張って…。

Giseh_Traumstele_(Lepsius)_01.jpg


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陛下の即位1年目、最初の季節(増水期) 第3月 19日目、輝きを得たる二女神(イシスとネフティス)のお気に入りにして強大な雄牛であるホルスの威厳の下で、剣の強大な黄金のホルスであるアトゥムのように、九つの弓(全ての異国)を撃退し、王位を維持したるお方。
上下エジプトの王メンケペルラー(トトメス4世の即位名)、ラー神の息子、トトメス、王冠の輝くもの、アメン神に愛されしもの、ラー神の如く生きよ、永遠なれ。安定的な支配あれ。

生ける善き神、アトゥム神の御子、ホルアクティの守護者、全てを統べる者の生ける似姿、ラー神から生まれた者、ヘプリ神の優れた後継者、父の如く顔美しき者、父の子なるホルス神の如くあるもの、王なる者…<欠損、以下おそらく王への賛辞が続く>…九柱神の寵愛を受け、太陽の街ヘリオポリスを清め、ラー神を満足させたる者。

メンフィスを美しくし、マアト(真実と秩序)をアトゥム神に捧げ、壁の南にいる神(メンフィスの主神プタハ)にそれを捧げ、万物を創造したる神に捧げし記念碑を作り、南と北(上下エジプト)の神々のために利益を求め、石の家(神殿)を建て、神々の望む全ての供物を捧げし者。アトゥム神の体の息子(皇太子の意味)、トトメス、ラーの如く王冠の輝く、ホルスの玉座の後継者(国土の支配者という意味)、メンケペルラー、生きよ。

陛下がまだ若きホルスのように幼少だった時、若きクフ王(ギリシャ語でケンミス)の如く、彼の美徳は彼の父の守護者のようであり、まさに神そのもののようであった。軍隊は彼を愛し歓喜に沸き、彼は天の女神ヌゥトの息子(セト)の再来の如く力を誇示し、すべての王の子ら、すべての偉大なるもの…

<欠損あり>

見よ、彼は、メンフィス州の高き地(ギザ台地)で歓喜する。
メンフィスより南北の道(メンフィスは国土の中心なので全土でという意味)で銅板を射抜き、砂漠で獅子や動物を狩り、風よりも速く二頭立ての馬車で駆けた。


今、彼が従者たちとともに来たりし時、セテペト(ホルエムアケト=スフィンクスの聖域)で ロ・セタウ(冥界の地名)のセケルの横で、イアレト・タ=ムゥトのレネヌテト女神が<欠損あり>砂漠(もしくは墓所)の南で、ムゥト女神<欠損あり>ネイト女神、南の壁の女主人。
セクメト女神は、時の始まりの丘を支配する。そこはケル・アハ(メンフィス近郊の地方名)の街の領主たちの向かいにあるもの、イウンの街(ヘリオポリス)の西の墓所にある神々の秘密の道に通じる場所。

今、大いなるヘプリ神(ヘプリは太陽の化身)の像は、彼の偉大なる力の場所に休む。
力を誇示し、頭上には太陽ラーの影がある。
メンフィスの四方、かの地のかたわらにある全ての都市は、かの地へ来て彼のために両手を挙げ、彼のカー(魂/精力)のために貢物をした。


ある日のこと、王の子トトメスが真昼の時間、この偉大な神の影の中で休んでいた。
太陽が天頂を迎えた時、この崇められた神なるお方は自らの口で、父が息子にそうするように語った。
側に来たれ我が息子トトメスよ、我は汝が父なるホルエムアケト・ヘプリ・ラー・アトゥムである。我は汝に地上の王国と王冠を授けよう。祖神より受け継がれしゲブ(大地)の玉座に上り、白冠と赤冠を身につけよ。
国土は、その隅々に至るまで、全ての主たる汝の目の間に輝くものである。
二つの国の食物は長きに渡り汝のものであり、すべての偉大な国よりの貢物となる。
我が顔はあなたに向けられ、我がの心は汝の元にある。
我が聖域の砂は我が元にある。
我が望むことをせよ。我が息子よ、我が守護者よ。
見よ、我は汝とともにあり。我は汝を導くであろう。


このお告げを聞き終えると王子は目を覚まし、これを聞いて……神の言葉を理解し、自分の心の内にとどめた。
彼は言った。「我々は、この神のために供物を持って来よう。…、牛、新鮮な野菜(等)
そして我々は顔美しき者をたたえよう…カフラー、アトゥム・ホルエムアケトを作りし者…<以下欠損>

<ここにおそらく、トトメス王子からスフィンクスのお告げに対する返答や業績が入る>


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ホル・エム・アケトは「地平線のホルス」と言う意味で、スフィンクスのこと。
ヘプリ・ラー・アトゥムはすべて太陽神ラーの形態のことで、東の空に生まれた若い太陽=ヘプリ、中天にある時=ラー、西の空へ過ぎ去った老いた太陽=アトゥム、という三形態の思想。

見ての通り下半分の、トトメス4世が実際なにやったのかという肝心の部分が欠けていて、「で、何でキミは即位出来たんだい」というのが分からない。「軍は歓喜し」とか書いてあるし、なんか部下受けは良かったぽい…これが事実なら。

碑文からは太陽神に対する篤い信仰が伝わってくるが、彼の孫がアクエンアテンで、太陽信仰を個性的な方向に昇華しちゃうことを知ってると、歴史の皮肉のようなものを感じる。