地学×考古学 エジプト・プトレマイオス朝はアラスカの火山噴火で衰退したか

最近これ系の研究けっこう出てくるなー。というわけで、火山噴火による気候変動によって地中海世界の覇権争いの行方が左右されたのではないか。という話。

Eruption of Alaska’s Okmok volcano linked to mysterious period of extreme cold in ancient Rome
https://www.dri.edu/eruption-of-alaskas-okmok-volcano-linked-to-mysterious-period-of-extreme-cold-in-ancient-rome/

アラスカの火山が噴火したことによって地中海世界に共和制ローマとプトレマイオス朝の崩壊に繋がったのでは、という話だ。元々、カエサルの死んだ紀元前44年にローマで異常寒波や穀物の生育不良などが記録されていたという前段がある。その原因は火山の噴火ではないかと考えた学者たちが、該当する噴火を探していた。そこで、紀元前43年にアラスカのオクモック( Okmok)火山が噴火していたらしいというところに辿りついたわけだ。

11.PNG
↑クレーターめちゃくちゃデカいぞ…。。


研究は氷床コア、つまり積み重なった氷の中に残った痕跡の分析によって行われている。火山噴火による灰などが氷の中に閉じ込められているのだ。噴火は2年続き、その後の10年間は過去2,500年の間で最も寒い時期であったという。
また、紀元前44年には地中海でエトナ火山の小規模噴火もあり、火山噴火の影響は重なっていたかもしれない。

OkmokTimeline.png

ヨーロッパでは雨量が増えすぎて穀物が育たず、ナイル上流では雨が降らなくて増水が起きない。どっちもキツい。あと10年も寒冷なに時期が続くと流石に、国力も衰退しますやね…。それでもローマはそれなり国力を保てていたところからして、やっぱ国土が広かったからなのか。エジプトは川沿いに集中してるし穀物の生産はナイル川沿いがメインだからなあ。あとこれ、研究がローマとエジプトに集中してるけど、この規模の気候変動なら他の文明地域にも影響は出ているはず。中国あたりとかどうだったんだろうか。今度調べてみよう。




[>類似研究

似たような研究が数年前に出ている。
ナイルの増水はモンスーンによる降水に起因しているため、降雨量が変動すると穀物の収穫量が大きく増減することは以前から指摘されていた。現在はコンピュータシミュレーションなどにより、地球上のどこか離れたところで火山が噴火しても影響を受けやすい、ということが分かってきている。気象が歴史を左右するため、歴史を学ぶ者は地学も履修したほうがいいという…。


【気候科学】火山の噴火と古代エジプトの衰退
http://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/12224


考古学の世界のトレンドは、わりと考古学いがいの政治や人々の興味に左右されているところがある。
最近のこのテの「気候変動による文明崩壊/衰退」説は。気候変動に対する興味の高まりが裏側にある。ちなみにかつては移民(民族移動)による文明の入れ替わりや文化の発展がトレンドだったこともある。

だからどう、ってわけでもないけど、普通、文明や国家の変遷、衰退、隆盛などは一つの原因に収束するものではない。複数の要因が絡み合った結果が歴史だろう。たとえば日本の場合でも、歴史上、噴火や大地震などは多数起きているが、それ単体では歴史は動かない。そこから連鎖的に引き起こされる現象が歴史を作っている。
だから、この研究も「原因の一つにはあったかもね」くらいの認識でいいと思うよ。


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ちなみにこんな本も出てたりします。面白いよ。

歴史を変えた火山噴火―自然災害の環境史 (世界史の鏡 環境) - 石 弘之
歴史を変えた火山噴火―自然災害の環境史 (世界史の鏡 環境) - 石 弘之


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あとおまけ

新アッシリアは旱魃で衰退したか 鍾乳洞の石から気候を測る研究
https://55096962.at.webry.info/201710/article_23.html

アッカド王朝は旱魃で衰退したか。サンゴの化石から分析する古代都市の栄枯盛衰
https://55096962.at.webry.info/201911/article_1.html