目指せ石器作りマイスター?「石の目を読む」

何か読む本ないかなーと新刊を漁ってて一目ぼれして即ポチしてしまった本。表紙からして既に濃い匂いがぷんぷんするが、期待通り中身も大変濃かった。というかちょっと濃すぎるので、普通に考古学の本だと思って読み始めた人は真ん中あたりで挫折しそうな気がする。

まずこの本は、最初に「石割り」という章がある。その時点でお察しのとおり、ひたすら実際に石を割って経験した「石の割れ方」を考古学の世界に還元しているという本だ。つまり、実際に存在する石器を前に「これはxx型、これはxx型、時代は~ 出土地は~」といった丸暗記用の本ではなく、「石の割り方はこうだ。こうすればこういう石器が出来る。身体で覚えろ」という実践本に近い。

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http://www.kyoto-up.or.jp/books/9784814002559.html

手に取るのは考古学者を想定しているようだが、どちらかというと破壊力学に重点を置いている。つまり、石に加えられる力の向きや方向と割れ方、割れる際に石の表面に出来る痕跡の違いなどである。石器の表面に現れる痕跡には、すべて理由がある。「偶然そうなった」というものは存在しない。割れ方や痕跡に専門的な用語が多く呑み込むのに苦労はするが、人間が人工的に石を割るとどのような痕跡が生ずるのかについて多大な知見を得ることができる本でもある。

この本の知識は、石器と自然石の見分けにも役に立つ。
先史時代の遺跡から出てくる遺物の鑑定でよくあるのが、自然に割れた石なのか、人間の手が加わっているのか、という論争だ。実際に石を割って割れ方を研究していれば、自然石と人工物の区別はつくようになるはずである。難解ではあるが面白い。日本は火山国で石器に適した石も沢山ある国なので、河原で石を割って割れ方を確かめてみるとかもいいと思うよ!


なお、翻訳本のはずなのに表紙に「編著」とある理由は、あとがきを読むと判る。
元々の本がかなり難解で、図の入っている場所も適切でなかったり内容に重複があったりするのを、日本の読者向けに直してくれたのがこの本らしい。訳者の人お疲れ様です…。


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[>おまけ

冒頭に出て来たこの人の話が面白すぎた。

エドワード・シンプソン
「彼は極めて優れた割り手であった。みごとな作品は大英博物館に展示されたほどだ。何よりも石割りを愛し、ゆえに安定した職業に就くのを拒んだ。」

本物もかくやという石器を作れる石器作り名人だが、それを趣味にすればいいだけなのになぜか定職に就くことを拒みスリを働いて刑務所に放り込まれる羽目になる。何故…?? よくわからん人生だが、石器作りにかけた情念は本物だろう。その業界では有名な人なのかもしれない。

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[>あとおまけ


どうも日本で考古学をやってる「専門家」たちは石器の見分けが壊滅的に出来ないらしく、捏造された石器を本物として認めまくったという「ゴッドハンド事件」として知られる一大スキャンダルを引き起こしている。

石器の見分け方が判らんまま、出土した石器っぽいものを全部認めてしまうという体質は現在も変わっていないらしく、そのことは砂原遺跡の時にも散々ツッコんだ。この本の内容にたどり着く前に、そもそものところがそもそもすぎるのでどうにもならないと思うけど、日本のレベルはこんな感じです…。出来ない大御所が幅を利かせるとこうなる…。


「日本最古の石器」12万年前の砂原遺跡に見る日本考古学界の問題点
https://55096962.at.webry.info/201809/article_7.html