コロナウィルス対策のうがい・手洗いはインフルエンザ流行防止の役にたったのか、データから推測してみる

タイトルのとおり、「コロナウィルス対策のうがい・手洗いはインフルエンザ流行防止の役にたったのか」という話である。

今年のインフルエンザの流行は、昨年爆発的に流行していたにもかかわらず、年が明けてからは低調なまま、ここ10年で最低ラインのままシーズンを終えようとしている。
これには、年明けから報道が流されはじめた新型コロナウィルスへの対策として、うがい・手洗いやマスク着用を徹底し、体調に気を付けたことが功を奏したのだという意見がある一方、今年は暖冬だったから流行らなかっただけだ、という意見もある。これについて、前者は証明が難しいが、後者はデータから推測することができる。気象庁の過去データと、インフルエンザ流行の傾向を突き合わせればある程度見えるからだ。

結果から言うと、
うがい・手洗いなどの予防効果はおそらく一定はあった。

 ・今年は特別な暖冬ではなかった
 ・そもそもインフルエンザの流行と気温は直接的な関係がない
 ・関係するのは絶対湿度



順番に説明していこう。


●これまでのインフルエンザ流行傾向と気温

最初に、2006年から現在までのインフルエンザの流行傾向の履歴を出しておく。
縦軸のメモリがグラフごとに違うのに注意してほしい。インフル感染者は年々増えているので、年ごとにメモリがだんだん大きくなっていっている…。
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/flu/flu/

-2010.png

2011-2016.png

2015-2019.png

これを見ると、2019年~2020年のシーズンは、年明けからガッツリ感染者数が減っているのが分かる。
これが気温と連動しているかどうかは、気象庁のデータを見れば一発である。

kion.png

過去10年とか漁るのは面倒なんで、気になる人は自分で気象庁のサイトいってください…。
ここ数年分を出してみた。確かに今年の1月はあったかかったのだが、それでも平均気温でせいぜい2度くらいしか変わらない。また、最高気温という意味だと2017年のほうが高い。この程度の差で感染者数が2017年の1/5まで減るというのは、さすがにナンセンスだろう。他の要因もあると考えるべきだ。


●流行が極端に少なかった2007年の事例

ところで、過去のインフルエンザ流行グラフの中で、2007年だけ流行数が異様に少ない。
この年に何があったのかも、実はインターネット上で履歴を追うことが出来てしまう。
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/eiken/kansen-center/shikkan/a/influvaccine2007.html

ここは、インフルエンザが世界的にあまり流行せず、B型インフルが流行しなかった年だと分かる。
つまり元々インフルエンザが流行しづらかった年、と理解出来る。今年はB型も流行しているし、去年時点では大流行も推測されていた(実際に秋ごろには大流行した)ので、このパターンには当てはまらない。


●そもそも気温とインフルエンザの流行りやすさは直接の関係がない

そして、そもそもの話だが、気温の高さとインフルエンザの流行りやすさの間には、直接的な関係がないようなのだ。
このへんの論文から追っていくと、以下の情報にたどり着く。
https://www.niph.go.jp/journal/data/48-4/199948040003.pdf

・インフルエンザウィルスは湿度が上がると生存率が下がっていく
・ウィルスが6時間後にも50%以上生存していられる環境になると流行が始まる
・相関関係にあるのは絶対湿度

ここで「絶対湿度」と書いたものについて軽く説明する。
空気中に含まれる水分の量は、相対的に計測してしまうと、気温が下がると高くなり、気温が上がると下がる。なぜかというと、空気は暖かくなると膨張するからだ。空気が膨張する=一定範囲内にある水分の密度が下がる=湿度が低く出る。絶対湿度では、このような誤差を無くすために一定の気圧で、一定の空気量に対してどれだけの水分が含まれているかを表現する。

気温と相対湿度が分かれば、絶対湿度は計算できる。
参考までに、ここ数年の相対湿度はこんな感じだ。これも気象庁のサイトにいけば過去データはある。

situdo.png

試しに絶対湿度を少し計算してみた。月の平均気温と平均湿度から出しているのでかなり大雑把だが、傾向はわかると思う。
(計算式などはググれは出てくるので割愛。多少の誤差はあるものとして)

2016年
1月 3.2
2月 3.5
3月 4.7

2017年
1月 3.0
2月 3.0
3月 4.1

2018年
1月 2.8
2月 3.1
3月 5.4

2019年
1月 2.8
2月 3.7
3月 4.7

2020年
1月 4.0
2月 3.7

2018年1月と2019年1月の極端に低い数値のところは、グラフで見ると本当にインフルエンザ感染者数が増えているし、2015年から2016年にかけては低めに押さえられていて、なるほど相関はありそうだなと分かる。
そしてこれを見ると、確かに2020年1月は例年に比べて湿度が高めで、元々広まりづらい環境にはあったと言える。
しかしインフルエンザウィルスの生存率が高まる6.0を割っており、これだけで流行が極端に抑えられたとは考えづらいのも確かだ。



というわけで、冒頭に戻る。

今年の気候でインフルエンザの流行に関連するのは「気温」ではなく「絶対湿度」のほう。
実際に絶対湿度を計算してみると、ここ数年より高めの数値が出るため、おそらく「湿度によって例年より流行しづらい状況にあった」と言うことは出来る。

しかしそれだけでここまで抑えられると言えるほど、突出した数値でもないため、「コロナ対策でうがい・手洗いなどを徹底した効果も上乗せされていると考えるのが自然」。

以上がデータから私が導き出した結論になる。


ここでは月平均の絶対湿度を大雑把に見ただけにすぎないため、週ごとの状況や、その年に流行していたインフルエンザの型までは考慮に入れていない。医療関係者でもないので、専門知識があればもう少し細かく考察できる人はいるだろう。ただ、なんとなく「気温が高かったからインフル流行らなかったんでしょ」みたいなお気持ち意見よりは多少マシな話が出来たのではないかと思う。

というわけで皆、インフル予防も兼ねて手洗いとか体調管理とかしっかりやろうな。
毎年毎年、同僚がインフルで倒れるたびに一人ぽつんと残って必死で前線維持する役をやるの飽きたんだよぼくは。