移民大国ヨルダンのお国事情について調べてみた

ペトラ遺跡の水の利用方法からヨルダンの水不足事情に行き当たり、そこから「ヨルダンにはパレスチナ難民やエジプトなどからの出稼ぎ労働者が多い」という話に行きついた。

あれ? ヨルダンって資源も産業もないから出稼ぎで自国から出ていく人が多いんじゃなかったっけ? 労働力足りないわけじゃないよね…。
と思いながら調べてみたら、どうやら、人件費が高いぶん移民・難民を働かせてまかなっている部分もあるらしいということが見えて来た。そして何と言ってもイスラエルとシリアがすぐお隣にあるのだ。パレスチナ難民とシリア難民を大量に受け入れてきた歴史がある。

この本は薄くてすぐ読み切れるものの、調べものの入り口としてはいい感じにまとまっていた。

移民大国ヨルダン──人の移動から中東社会を考える (ブックレット《アジアを学ぼう》別巻) - 臼杵 悠
移民大国ヨルダン──人の移動から中東社会を考える (ブックレット《アジアを学ぼう》別巻) - 臼杵 悠

ヨルダン自体、イギリスさんの都合がもにゅもにゅして「作られた」国家であるが、人工的な国家の中では運営がうまくいっており、中東においては安定した平和を享受している。国際情勢の中での難しいかじ取りを強いられた薄氷の平和、ということはうっすら判るが、それでも周辺の国からすれば長い平和が続いているのは間違いない。そのため、パレスチナ、イラク、シリアと、近隣の多くの国から人が逃げ込んでくる。

建国からの人口増加グラフを見ると、中東戦争やアラブの春など社会的要因で増えている部分が大きい。

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これは人口比のグラフを見ても判る。最近の調査では、シリア難民が圧倒的に多く、続いて出稼ぎに来ているエジプト人、パレスチナ人。湾岸諸国と同じで、アジア系の出稼ぎ労働者も多いという。国の2/3は外国人、という構造だ。

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さらにヨルダン人と分類されている中にも、アイデンティティ自体はパレステナの人がいるらしい。これはかつてパレスチナの一部(西岸地区)がヨルダンに併合されていたことによる。併合時にヨルダン政府はそこに住むパレスチナ人にヨルダン国籍を与えたのだ。ここは現在はイスラエルが実効支配する場所となっており、国際的には「占領地」であるがイスラエル側から見ると「議論される土地」という微妙な扱いになっている。

なお、近年「新たに死海文書が見つかった」としてニュースになった地域も西岸地区の中にある。

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死海文書の眠る12番目の洞窟が見つかったよ、というニュースが判りづらかったので補足する
https://55096962.at.webry.info/201702/article_12.html

そんなわけでヨルダンという国の中には、「ヨルダン人じゃない人」が多数おり、「ヨルダン国籍は持ってるけどヨルダン人とは思っていない」人も多数いる。逆に、ヨルダン国籍がありヨルダン人というアイデンティティを持っているけど「ヨルダンでは仕事がないので他国に出ている」という人も多数いる。

それでも国としてまとまってやっていけているのは、王家という権威が統治しているからではないかと思うのだ。というか、国民の在り方が特殊なので、この国では国民主権や民主主義的なやり方は向かないと思うんだよな…。

あと、以前調べていた首都アンマンの水不足事情についても、この本に少し出ていた。
2015年の時点では、水事情はかなり改善され、給水車はまだ利用されているものの、断水などは減っているようだった。とはいえ大きな水源のない街で人口が増え続けているのは変わっておらず、どこまでいっても、都市と人と水の問題はつきまとうのであった。


都市で大きくなるごとに必要とされる水は増え続け、水を巧く使うために人は知恵を絞る。何千年も前から続く、生きるための宿命といえる。