アッカド王朝は旱魃で衰退したか。サンゴの化石から分析する古代都市の栄枯盛衰

オマーン沖のサンゴ化石から古代の気候を再現するという、なんだか面白そうなプロジェクトがあるなぁと思ってみてたら、まさかの北海道大学…日本だった…!

サマリー
アッカド帝国崩壊の原因をサンゴの化石から解明〜サンゴの化石から復元した月単位の古気候記録の証拠〜
https://www.hokudai.ac.jp/news/2019/10/post-580.html

詳しいやつ
アッカド帝国崩壊の原因をサンゴの化石から解明〜サンゴの化石から復元した月単位の古気候記録の証拠〜
https://www.hokudai.ac.jp/news/191023_pr3.pdf

英語版
Strong winter dust storms may have caused the collapse of the Akkadian Empire
https://www.global.hokudai.ac.jp/blog/strong-winter-dust-storms-may-have-caused-the-collapse-of-the-akkadian-empire/

サンゴの化石っていうのはこういうやつ。
死んだサンゴの化石を分析して、そのサンゴの生きてた時代の海の環境を再現している。その結果、「約 4,100年前の冬は他の時代と比べて極めて乾燥・寒冷であった」という結論に達したとのこと。

sango.PNG

この場所の海が寒冷になるには、西アジアの地域風(シャマール)が冬に頻発することが条件となることから、英語版のタイトルは「冬の嵐がアッカド帝国を崩壊させた」というものになっている。

アッカド帝国を「帝国」と呼んでいいのかどうかという問題(私はあれは帝国ではなく「王朝」と呼ぶべきものだと思うが…)や、果たして異常気象だけに全ての原因を帰していいのかどうか、という問題はあるものの、これはなかなか面白い研究だと思う。メソポタミア以外でも、インダス文明の衰退に冬モンスーンが関わってたのでは? といった研究もある。程度にもよるだろうが、異常気象と文明の繁栄はある程度連動する、というより影響を受けざるを得ないだろうというのが一般的な考え方だ。

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なお参考までに、メソポタミア(バビロン以南)での農業カレンダーはこんな感じ。

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ちょうど麦の生育時期がシャマールの発生時期と重なってしまう。冬季の降水がなかったり、極端に気温が低かったりした場合は、主食の麦の生育に影響は出るだろうな…。



ただ、この説の大きな穴は、冬の気候変動は周辺の都市国家もまんべんなく影響が出るはずだというところ。
アッカドだけ衰退して、周囲の都市国家がぴんぴんしているということはあり得ない。アッカドと入れ替わりに勢力を拡大するウル第三王朝は一体どうやって勢力を維持したんだよ、とかいうツッコミも入れられてしまう。

なので、「冬の異常気象がアッカドを倒した」は言い過ぎで、「アッカドの衰退の原因の一つになったかもしれない」くらいで認識しておくのが無難な感じかなと思います。