シュメール人=宇宙人説なるものがあるらしいのだが、いつもの如く色々ツッコミどころあるよね

「最近、古代エジプトネタで超古代文明とか宇宙人ガーとか言ってくる人いないんスよねー」って話してたら、「その手の人たちは最近シュメールでブイブイ言わせてるよ」って言われたので早速探してみたら、なんかすっげー出るわ出るわ、シュメール人は宇宙から来たアヌンナキ星人だとか、ニビル星がどーたらとか、色々アレがアレなことになってて面白かった。

仲間内で楽しんでる人たちに無粋なことは言いたくないのだが、せめてシュメールとは「いつ」「どこ」の時代なのかだけは覚えて欲しい。


 シュメール人が歴史の表舞台にいたのは紀元前4,000年頃~2,000年頃の間
 場所はメソポタミア南部のみ



これがなぜ重要かというと、たぶん多くの人が「シュメール」のイメージの中にシュメール以降の時代を混ぜているから。


 ・時代にバビロニアは入りません
 ・地理的にもバビロニアは入りません

 ・標準版のギルガメシュ叙事詩まだ成立してません
 ・イナンナはアッカド語、イシュタルがシュメル語 神様の名前が変わります

シュメール人/シュメール人の活躍した時代の話をする時、高確率でバビロニア混じってる気がしたので念のため。
都市としてのバビロンはウル第三王朝から栄えていたのでぎりぎりシュメールだし、ウルは古バビロニア時代の最初の頃もまだ大都市なので若干時代が被ってはいるんだけど、古バビロニア時代はもうシュメールではない…。有名なイシュタル門や巨大なジッグラトは、相当あとの時代のもの。

※このへんについては以下にもまとめておいた。

メソポタミア=シュメール ではない。シュメール、アッカド、アッシリア、バビロニア、違いをまとめた。
https://55096962.at.webry.info/201506/article_12.html

バベルの塔の本来の意味、現存するジッグラドの数とか
https://55096962.at.webry.info/201410/article_24.html

なお、シュメール人は固有の民族と言うにはちょっと微妙で、複数の民族入り混じった社会であったことはほぼ確実、かつ言語についてもシュメール語+近隣の民族の言語、という感じのバイリンガル以上が普通であった可能性がある。その場合、そもそもシュメール人という概念自体が現代人の認識によってつくられたもので、本人たちは単に「のちにシュメールと呼ばれる地方に住む俺ら」くらいの意識でしかなかったかもしれない。




で、以下は無粋なツッコミというか、興味ある人むけの蛇足である。
超古代文明とか吹聴してる人たちが唱える説のそもそもの間違い点。

シュメール=宇宙人説によく出てくる、「ニビル星」なるものは、シュメール語の原典のどこにも存在しない。ゼカリア・シッチンというオカルトの人が「独自に」解釈してその言葉を捻りだしたものだからだ。

太陽系内に未知の惑星が存在する、という説自体は荒唐無稽なものではなく、実際に存在する可能性はゼロではない。「プラネット・ナイン」と呼称されており、科学者たちがその存在を検証している。また、ニビルに限らずヤハウェとか勝手に名前を付けて神話に絡めようとする試みは世の中に幾つもある。だが、それらには残念ながら根拠が無い。途中までは科学的な事実だが、途中から論旨が飛躍してファンタジー世界に突入している。嘘だと思うならとりあえず「ニビル」って書かれてる原典を探すといいと思う…無いから…。

次に、シュメールの神々が天から下って来た宇宙人アヌンナキである、という話だが、これは日本でいうところの天孫降臨の話と一緒だ。神は天に住むもの、と考えられていたので、人間の住む地上へは天から「降りて」くることになる。だからメソポタミアでは神殿を、神の住む天に近づけるため丘の上に建てる。(これがいわゆる「ジッグラト」)

この場合の「天」が、地と対比されるいわゆる空のことであり、宇宙でないことは、実際に神話を読めばすぐに判る。

「天と地の創(はじ)めは次のごとし
 天においてアヌとアヌンナキが生成したとき、
 穀物はいまだ天の下にあらず、かれまだつくられていなかった。
 シュメールの地の運河を神ウットゥのためにいまだ創られてしなかったし
 神ウットゥに対して神殿の土台はつくられていなかった」


シュメール神話集成 (ちくま学芸文庫)
シュメール神話集成 (ちくま学芸文庫)


一般的に、アヌンナキは宇宙人ではなく天に住まう神々の集合体と解釈されており、文脈からしてもそれ以外に解釈する理由がない。まぁ日本語でも訳は出てるし、「読めばわかるよ」的な話ばかりなので、このへんに疑問に抱かず引っかかる人は、特に古代文明に興味はなくファンタジーで楽しみたいだけだろうと思う。だから真面目にツッコんで空気読まない人になるのも面倒かなーと…

とはいえ、シュメールと言いながら新バビロニアとか混ぜられるとやっぱり「???」ってなるので、時代区分だけは何とか定着させたい。日本の平安時代に清朝が混じってるようなもんなんで。


ちなみに紀元前2,000年以降、シュメール語は死語化、民族としても他民族に吸収されて消えてしまう。
シュメール人の活躍した時代は案外短いし、メソポタミア史の中では前半の助走にあたる部分だけだ。
なので、純粋に「シュメール」で遊ぼうとすると意外に制約が多い。時代的に、まだ無いものが沢山あるから…。