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zoom RSS バルトルシャイティス「イシス探求」

<<   作成日時 : 2008/08/02 17:05   >>

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この、不思議なイメージに満ちた本は、イシスについての歴史的な研究書ではなく、むしろ古代エジプトは出てこない。歴史や考古学的な観点から古代エジプトを見、エジプト人自身の信仰としてのイシスを研究しようとする人々にとっては、あまりにも荒唐無稽な与太話の集積、と思われるだろう。

この本の内容を三行でまとめると、こうなる。

 ヒエログリフの読み方も、古代エジプトの知識も失われた時代
 ヨーロッパの人々が、残された断片的な歴史の記憶を材料に
 様々な空想を駆使して作り出した 新しい神話と物語


また、本の間に挟まっていた販促リーフレットで、彌永(いやなが)信美氏は、こう書いている。

バルトルシャイティスの仕事は、ひとことで言えばヨーロッパの「夢想の歴史」であると言えるだろう。



ロマンのない言い方で言ってしまえば「多くの誤った歴史概念を含む様々な空想」、「根拠のないトンデモな学説、主張のさまざま」なんだが、神学の一種だと思えばいいのかもしれない。イシスとは何か。どのような意味を持つのか。彼女の成した業績とは。また、彼女はどのような姿をしていたのか。
信仰にも似た熱心さで、人々は夢中に語りだす。

これは、古代エジプトの時代が去り、ヒエログリフを読めた最後の人物が死に、エジプト人自身もかつての自分たちの言葉を失ったのち、確かだといえる者が誰もいなくなったのちに初めて始まる、「もう一つの」エジプト神話なのである。


登場する例は様々だが、イシスとオシリスはあらゆる神々と結び付けられている。
エジプトは全ての文明の源となり、イシスはキュベレイとも、ティアマトとも、アテネとも、聖母マリアとも成り、ギリシャ・ローマはもちろん、中国(!)にもマヤにも放浪する。イシスにあるのは普遍的な「母」「女神」のイメージであり、オシリスはホルスと混同され「太陽神」「皇帝」の普遍的なシンボルとなる。

この本を読んで私はようやく、ヨーロッパの美術に登場する不思議なエジプトの神々が何を意味しているのかを知った。頭上に天を抱き、麦の穂を抱えたイシスとは、タロットカードでいう「世界」と、魂を意味する「アニマ・アニムス」の概念と、エジプトの豊穣神としてのイシスのイメージを、全部ないまぜにドッキングしたものだったのか…。(汗)

この本、面白いには面白い。魔術風味が好きな人には、きっと楽しめるはずだ。
…のだが、あまりにもあっちこっちにカッ飛びすぎて、なかなか、ついていくのが難しい本でもあった^^;


■空想の内容例

宗教画。これでイシスだと言われても、説明がなきゃ分かりません。

画像


「夢想」の前にこじつけという言葉はないらしい。

赤熱した鉄を水中に投じてみよ。水はイズ−イズ、またはイス−イス、エス−エスと叫ぶであろう。自然の火が貪る冷たい毒のシンボルである蛇も、イス−イスという音をたてる。
ゆえに、古代世界の唯一の歴史家たる画家が、十字架にかけられたイエズス(Jesus)の足元に蛇を書き込んだのは、イシスの名を比喩的に表すためなのである。


三段論法のおそるべき柔軟性。

「トートは文字を発明した。
 シナの文字は伏義によって発明された。ゆえに
 トートは伏義である」

ってオイオイ!! みたいな。三段論法はまさに無限の論法(笑) これを使えばありとあらゆるものが一つに出来るんじゃないのか。いつの時代も人は、こうして架空世界を作り出してゆくのだな。

重要なのは、これらが「空想の歴史」として、長い年月をかけて形成されていったこと、その空想(歴史的に見れば誤り)を心から信じていた人々もいたということ。空想の系譜もまた、歴史の一部だ。



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