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zoom RSS 資料をまとめて読むスキタイの本「騎馬遊牧国家の歴史と考古」

<<   作成日時 : 2018/04/16 00:10   >>

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タイトルを見た瞬間、別の著者の「騎馬民族と騎馬遊牧民の違いを定義すると〜」という声が脳内で聞こえてきた(笑) 彼らの場合は騎馬「遊牧」民族、でいいんだろうか…? 「スキタイと匈奴」のように騎馬民族をまとめている本は少なくないのだが、スキタイ単体でまとまっている資料はあまり無かったので、とりあえず読んでみた。



タイトルには考古とも着いているが、考古学資料は少なめ。どちらかというと、ヘロドトスの「歴史」やアッシリアの記録など、文献資料を一次ソースとして大きく取り扱っている本である。そこがちょっぴり残念だったが、スキタイ研究でよく出てくる遺跡の名前と場所が地図にマッピングされていたのは助かった。

分布を見るとクリミア半島周辺の、緊張の高まっている地域に有名な遺跡が集中しているのがわかる。そりゃあ研究も滞りますよって…。

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エジプト脳的には、スキタイの全盛はコーカサス山脈を南に突っ切って東地中海南岸のシリアあたりに出張ってきた、メディア王国と戦ったりアッシリアと同盟したりしてた頃である。その後の時代は特にエジプト史に出てこないのでよく知らない。
だが、スキタイ史的には、北方に引っ込んでからも第二スキタイ王国という続きの物語がある。それがクリミア半島あたりの話で、どうも世間一般的にはスキタイというとそのあたりの時代のことらしい…。
これは遺跡地図の分布を見るまで気がついていなかった。そうか有名な古墳などはコーカサスの北にしかないのか、と。

黒海の北岸で一時期は広大な範囲を占めていたスキタイとその支配部族の領域だが、紀元後2-3世紀頃にはゴート族の進出に伴って文化が途切れてしまう。そのあとにアジア方面からやってきてゴート族を駆逐していくのがフン族だ。時代を連続して見ると、騎馬民族の移住に伴い、黒海沿岸の通り道は何度も民族分布が書き換えられていることがわかる。


ただ、この本には、どこからどこまでを何という時代に区切るのか、という年表が載っていなかった。
どうも編年に問題があるらしく説がまとまっていないように見受けられた。どこからどこまでの時代で区切るのか。著者がどれかの説を根拠を挙げて採用すればいいだけの話なのに、ご丁寧に色んな説を並行して載せてくれているので逆に判りづらくなっている。

同じく、スキタイという民族の起源に関する話や、主要な遺跡の分析についても、諸説あるところは今では否定されている古い説まで載せてくれているのでとても判りづらい。巻末に著者自身が書いているように、よく判っていないところをズバっと書けなくてそうなつてしまったのだと思うが、もう少し書きようはあったんじゃないかと思う。可能性の高い説と低い説を同じ論調で並べて書いてしまったら、そりゃあ判りづらくもなる。

そのへんが少し残念で、物足りないと感じた部分だ。沢山の資料を当たっているのは判るが、資料の重み付けが不十分だと思う。途中でWikipediaを検索して「記述が間違えていた、この記述を信用する人がいたら困る」などと憤慨しているあたりはちょっと可愛いと思ってしまったが、マジメな話をすると、Wikipediaはそもそも一般人が使う、最初から信頼性の低いことが明らかなソースなので、それを学術的な報告書なり論文なりと同等の重み付けをすることは有り得ない。重み付けの軽いソースなのは普通は分かっている話なので、そこは心配する必要がない(してもしょうがない)。



とはいえ、今までに辿ってきた主要な資料がだいたい盛り込まれていたのは助かった部分でもある。脳内の年表と地図はだいぶ整理できたので、もいっかいフン族とごっちゃにされてる本とか読み直してみたいと思う。イラン系と思われるスキタイと、アジア系と思われるフン族では基盤がだいぶ違うので、本当は一緒に研究するのは難しいものだと思うんだよな…。

*****

[>おまけ

スキタイの「鹿の顔をした馬」、パジリク遺跡出土の馬の装飾品
http://55096962.at.webry.info/201704/article_26.html

それと、この本にちょっとだけ出てくる「ナルト叙事詩」とアーサー王伝説の関連については、過去に色々書いたことがあるので…。ざっくり言うと、「関連があるとする根拠が無い」です。

「アーサー王伝説の起源 スキタイからキャメロットへ」の、ダメなところを解説してみる
http://55096962.at.webry.info/200906/article_21.html

アーサー王の剣とは?
http://www.moonover.jp/2goukan/arthur/excalibur.htm

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