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zoom RSS ラメセス三世暗殺と、「叫びのミイラ」に隠された謎

<<   作成日時 : 2018/02/14 00:10   >>

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謎のミイラの正体は謀反を起こして処刑された王子のミイラかもしれない、という話。

A strange way to mummify: The mystery of Egypt's 'screaming mummy'
http://english.ahram.org.eg/News/290824.aspx

※記事はミイラ画像注意なので、サムネ用にラメセス3世の神殿の写真とか

画像



このミイラは、1886年6月にガストン・マスペロによって梱包をとかれた時に発見された。

「叫びのミイラ」という名前で判るとおり、断末魔の悲鳴を上げているような表情のままでミイラにされた謎の若い男性で、棺には何の装飾もなかったため、発見場所からしておそらくラメセスV世の血縁者だろうといわれてはいるものの現在まで身元不明である。(この記事の写真だとヘヴン状態wにしか見えないが、苦しんでいるような顔になっている。)

王族のミイラと思われるのに粗雑な処理をされ、名前も残されていないミストリアスなミイラの一体である。

この記事は、あまりにも異様な表情をしたそのミイラの正体についての推測を述べている。曰く、第20王朝の時代、父ラメセスV世の暗殺による王位簒奪を画策した、ティイ王妃の息子ペンタウレー(Pentawere)王子ではないか、というのだ。

この推測は今までにも存在したが、今回は、調査は、カイロ博物館から、新しく建造中の大エジプト博物館への遺物輸送に伴って改めて調査した結果、その可能性が高そうだという内容になっている。


「未知の男性 E」とも呼ばれているこのミイラは、なぜか羊の皮に包まれ、手足を縛られ、乾燥はさせられていたがミイラ化の処理はされていなかった。そのため、ミイラ化処理が出来ない/されない、何らかの理由があったと考えられてきた。

同じように苦悶の表情を浮かべて死亡している王に第12王朝のセケエンラー・タア王がいるが、こちらは戦場で多くの傷を受けて戦死したと考えられており、戦場から輸送するためミイラ化処置が遅れたため体をよじったような格好になっているとすれば謎はない。しかしそれでも、セケエンラー・タア王の場合には出来る限りのミイラ化処置を行った痕跡があり、今回のケースとは異なる。

もしも推測のとおり、苦悶の表情を浮かべたまま適切なミイラ処理もされなかった理由というのが「父王への反逆」ゆえの罰だったとしたら、なかなかドラマティックな物語だ。


ただし、この記事の中に証拠として挙げられているものはいずれも状況証拠に過ぎない。これだけで名前まで特定するのにはかなりの無理がある。

DNA鑑定でラメセスV世の息子と判明した、と書かれているが、DNA鑑定で判るのは親子関係までであり、どちらが父でどちらが息子かなどは分からない。もっと直接的に言うと、DNAの「古い」「新しい」は判別がつかない。
しかも血縁関係を"確率的に"はじき出すのがDNA鑑定による親子鑑定で、これは現代でも古代でも同じ。ある一定以上の確率が出れば、「血縁関係あり」と見なすことが出来るのだが、古代のDNAだとそこまで綺麗に確率を計算できないはずなので、現代基準で確率まで計算して関係ありとしたのかどうかがちょっと怪しい。

あと、以下の、ツタンカーメンのミイラのDNA鑑定の時に書いた記事を参考にしてもらいたい。

ツタンカーメンの親子鑑定DNA解析に見る問題点(1) STR検査法とその使い方
http://55096962.at.webry.info/201604/article_20.html

ツタンカーメンの親子鑑定DNA解析に見る問題点(2) 科学の体裁を模した"解体ショー"
http://55096962.at.webry.info/201604/article_23.html

STR法を使った場合、遺伝型は親子で50%、伯父や兄弟で25%の一致だが、赤の他人でも11%は一致する。 なので、この方法を不完全に使ってしまったツタンカーメンのミイラの親子鑑定はいまでも疑いが持たれていたりする…。確率でしか答えが出せない以上、果たして、客観的に見てその確率がどれくらいか、というのが重要になってくるのだが…古代のミイラだと…その確率が出せないんだ。



なお、ラメセス3世の暗殺後の裁判について記録された、いわゆる「後宮陰謀パピルス」の裁判部分はトリノ・エジプト博物館が所蔵しており(The Judicial Papyrus of Turin)、高級官僚や王妃たちも多数関わっていたことが記録されており、刑の下された人物名がある程度わかっている。このミイラ喉のあたりにHanging marks、つまり首吊り刑にされたっぽい傷がある、という話はなるほどと思ったが、絞首刑になった人物が誰だったのか、一人だけだったのかといった細かい状況までは特定できない。

というか本当に暗殺の首謀者の王子だったなら、そもそも遺体は残さずにバラバラにして犬に食わせる的な罰を与えるのではないかとも思う。説としてはドラマティックで面白いのだが、まあ、そこはそれ。話盛って売り込んでいくのがいつものエジプトさんなので、多少差し引いて考えたほうがいいと思うが、それでも十分に想像力をかきたてられる案件だと思う。


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おまけ
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ラメセス3世データ
http://www.moonover.jp/bekkan/chorono/farao79.htm

王族ミイラ一覧
http://www.moonover.jp/bekkan/mummy/mummy_list.htm

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