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zoom RSS ラメセス2世は「白い肌」? ここから始まる勘違いへの補足など

<<   作成日時 : 2017/12/20 00:10   >>

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なんか不思議発見とかのテレビ番組でラメセス2世特集をしたときに、ラメセス2世のミイラの鑑定で「赤い髪」「白い肌」だった、というのが流されて、そこからびみょーに勘違いが生まれているようだったので勝手に補足しておく。

 × 白い肌 ○ アフリカ内陸部よりは"色白"

「白い」とは何をもって白と言っているのかという話である。

画像
*このフィギュア欲しかったんだけど早々に品切れになっていた…



まず基本事項として、白人・黒人という人種的な差は存在しない。人間の肌の色は生活環境に応じてわりと最近になってから生まれた個体差であり、肌の色の濃さは赤道からの距離で決まるからである。つまり、赤道直下のアフリカの中央部がいちばん濃い色、いちばん離れている極近くは薄い色、その中間にあるエジプトを含む地中海部分ではちょうど中間くらいの色になる。

これはクレオパトラが黒人か白人か、という話の時にも説明したとおりだ。
エジプトは南北に長い国なので、南部(アスワンなど)のヌビア地方の人の肌の色は、北部(アレクサンドリアなど)の沿岸地方の人よりは濃い肌の色をしている。逆に言えば、北部の人は南部の人より「色白」("相対的に"肌が白い)。

その意味では、北部出身のラメセス2世はまぁ「南部よりは肌が白い」だろうが、だからって白い肌という表現は微妙だろうと思う。ふつうの人は平均的なエジプト人の肌の色なんて知らない。ベルベル人を例に出されたってわからんと思う。ついでに言うとベルベル人はエジプトから西方に住んでいて、ラメセスの一族は逆の東方出身と思われるので、たとえが微妙だとも思った。

ちなみにベルベル人がファラオになった可能性があるのは第19王朝ではなく第22王朝で、この王朝はリビア系の民族の王朝。王の名前「シェションク」はベルベル語から来ているのではないかという説がある。


じゃあラメセス2世の所属する第19王朝はどこから来た人たちなのか、というと、アジア系という可能性が示唆されている。根拠となっているのはミイラの身体的特徴ではなく、ラメセス2世が建立した「400年記念碑」というものである。これは一族のセト神への信仰400周年を記念するもので、逆算するとちょうどヒクソス人がエジプトを席巻していた頃になる。

アジア系の移民は、エジプトに移住する際に嵐の神バアルの信仰を持ち込んだ。そのバアルがエジプトの嵐の神セトと同一視され、のちにセト=バアルとなるのだが、ラメセス2世一族がヒクソス系だとしたら、一族がセト神を信仰してることの説明がすんなりとつく。

また、バアル信仰のあったシリア・パレスチナ方面のアジア系民族であれば、地中海沿岸に暮らしているので肌の色はアフリカ中央部の人たちより若干薄めになるので整合性もとれる。


…というわけなので、別にわざわざ、誤解を招きかねないミイラの肌の色とか出さなくても、ラメセス王朝が外来系である可能性は語れたはずだと思う…。


********

人間の「肌の色」や「人種」は、国によっては非常に敏感な問題なので言及するときは気をつけなければならない。
ことにファラオの「肌の色」は、過去に差別に使われてきた経緯があるため、現在ではほぼタブーのような扱いを受けている。「ファラオの肌の色は"白い"」、この表現は、たとえばアメリカでは間違いなく大炎上する。

というか、近年でも大炎上した例がある。

ツタンカーメンの肌の色は何色?
http://www.afpbb.com/articles/-/2288796?cx_infinite=1

これはニューヨークでエジプト展が開かれた際の騒動である。
ファラオの顔が白すぎると物議を醸し、エジプト人であるザヒ・ハワス博士がファラオは褐色の肌と発言しただけで炎上。なんかもうめんどくせーよってなるけどこのテの揉め事はザラに起きている。

ものすごくザックリまとめると、

[ファラオの肌は黒かった派]
エジプト文明は黒人の文明だ → 素晴らしい文明を築ける黒人もいた → だから黒人はスゲエ

[ファラオの肌は白かった派]
エジプト文明は黒人の文明だ → 劣っている黒人にそんな高等な文明が築けるワケがない → だからエジプト文明は外来の白人が発展させた

という感じ。

そしてほんの百年ちょっと前くらいには、ミイラを解剖して「脳が大きいのでこれは白人のミイラです」という結論を出すような、今かには考えられない差別的なものが真っ当な学問の顔をして信じられていた。その反動として、今の「ファラオは黒人だったはず」という逆方向の極論が出てきているのだが、正直、どっちもどっちである。中間の「褐色」という発言でさえ両方から文句が出るわけなので、ファラオの人種・民族、とくに肌の色などは、よっぽど慎重に言葉を選んで説明するか、そもそも触れないのが無難だろう。

テレビで堂々と「白い肌」と流して何も起きない日本、ある意味、すげえよ…。

********

で、もう一度言うけれど、「白人」「黒人」という区別は差別用語としてはあるけれど学術用語としては存在しない。というか定義が出来ない。

人間の肌の色は、赤道からの距離によってだんだん薄くなっていくため、どこにも境目が存在しないからである。緯度的に近いギリシャとエジプト北部の肌の色はだいたい同じ。エジプト北部とアジアもだいたい同じ。なので肌の色からはエジプト人のルーツの特定は出来ない。どちらかというと、判断には不要な情報である。

「アフリカ内陸部に近いエジプト南部の人よりは色白」。
これで覚えて欲しいです。

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追加検証分

ラメセス2世は「白い肌」という話の出所/ソースの検証
http://55096962.at.webry.info/201801/article_2.html

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