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zoom RSS 「クフ王のピラミッドに巨大な空間を発見」→「空間」の"意味"はまだこれからです。

<<   作成日時 : 2017/11/09 00:10   >>

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いやまあ、なんか微妙に盛り上がってるしいちおう記事にしとこうかなって。
特にまだ何も判ってないし、「そっかー、これからに期待して待ってますね」って感じの正座待機案件なんですけど。
NHKの特番は見てないっす、自分で情報探しにいったほうが早そうだったんで。



【元論文】

Discovery of a big void in Khufu’s Pyramid by observation of cosmic-ray muons
https://www.nature.com/articles/nature24647

名大のF研の先生の名前で出してる。考古学論文ではなくて宇宙線によるピラミッド透視がメインの内容。


ちなみに論文の内容をもうちょっと判り易くしてるのが名古屋大のプレスリリース。
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20171107_iar_1.pdf


【概要】

今までに知られていない空洞がピラミッドの中に見つかった。
この部分は「空洞がある可能性が高い」ではなく、ほぼ間違いなく「ある」と言っていい内容になっている。ミューオンの透過量が明らかに多い。

これが論文にあった、どこに装置をおいて宇宙線を受けたかという図。

画像


で、NE1とNE2という装置で受けた宇宙線の透過量をグラフ化したのが↓こちら。
cとdが現在知られている空洞である大回廊や玄室を計算にいれてシミュレーションした結果。aとbが実際の計測結果。空間らしきものがもう1箇所出ているので、この結果からすると明らかに空間がもう一つある。

画像


ただし、この空間が「何」なのかについては、この調査方法だけではわからない。

玄室なのでは?! と先走る人もいるが、場所からするにその可能性はほぼゼロである。
大回廊という空間のすぐ側、石の密度の低くなっている場所に重たい石棺や大量の埋葬品を入れると床か壁が抜ける。ていうかまず、今回見つかっているものは、棺や副葬品を入れる出入り口もない閉鎖された空間である。

また分析の精度はそこまで高いわけではなく、数十センチ単位での空間の有無まで調べるのは難しい。1mの空間2つの間に30cmの壁があったとしても、2mの繋がった空間に見えるはずである。つまり、この「30m級」と言われている空間が、一塊の大きなものなのか、細かい空間が連続して存在するのかは分からない。

現状知ることの出来ているデータから考えると、おそらく大回廊という空間を作るために、石の荷重を減らす意味で計算して作られた空洞だと思う。つまり、「王の間」の上にある「重量拡散の間」と同じような構造が、大回廊の上に隠れているのではないかと思う。

エジプト学者が反発するのは、空間があるという発表自体ではなく、その空間を埋葬室や宝物庫だと飛ばし記事を書くメディアに対する牽制ではないだろうか。少なくとも、元論文を読む限り内容は明瞭で(つーても中の人に判る範囲での話だが)、「空間がある」という結論自体は特に疑うものではないと思われる。まあ「巨大な」空間、っていうのは微妙な表現だけども。



【ここまでのおさらい】


・ミュオン(ミューオン/ミュー粒子)を使ったピラミッド"透視"とは?

ミュオンは、宇宙線(元々は水素などから出来ている)が地球の大気中にある原子とぶつかって崩壊するときに出来る。発生する二次宇宙線のうち30%くらいがミュオン。
で、物体を透過するごとに数が減っていくので、透過してきた数が多いところ=空洞がある、少ないところ=中身が詰まってる、という感じで中身の見えないものの構造を解析することができる。ただし宇宙から降り注ぐものなので、調べたい物体より「下」にミュオンを計測する装置を置かないといけない。ピラミッドの調査では、ピラミッド内部の空間(玄室や通路部分)にビッシリとミュオンを受け止める板を並べて調査していた。その模様はスキャン・ピラミッド・プロジェクトのサイトなどで見ることが出来る。


このプロジェクトをやっているF研の説明
http://flab.phys.nagoya-u.ac.jp/2011/appli/muon/

難しすぎるわ! もっと素人向けに説明しろや! って場合はウチのテキストで。。。(解析装置の写真なども入れてある)

ミュオン(ミューオン)を利用したピラミッド透過プロジェクトの近辺
http://55096962.at.webry.info/201601/article_29.html



画像






空間が見つかったとされる場所については、以下の記事に載っている図がわかりやすい。
玄室があると考えることのできる場所ではなさそう、というのは、ここが大回廊の真上だからだ。

Scientists discover hidden chamber in Egypt's Great Pyramid
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2017/11/scientists-discover-hidden-chamber-in.html

画像


画像


石積みは、下から順番に作っていくしかない。

従って、この図の場所に空間を作るには、「王の間」の上部の「重量拡散の間」と同時でなくてはならず、また、大回廊の建設が始まった時点で設計図に盛り込まれていなければならない。つまり、「王の間」を作ってから計画変更してもう一つ部屋を作ったということは有り得ない。
最初から計画されていた空間で、しかもピラミッドの完成時点では完全に閉ざされていなければならない。

…と考えると、これは大回廊に対する石の荷重を減らすために計画された石のスキマなんだろうなぁ、となるわけだ。



ただし、現時点では素人考えでしかない。
そのへんを議論して最もらしい結論を出すのが、これからの考古学者のお仕事。

調査の「結果」はあくまで一つの結果であり、それがどんな意味を持つのかは人間が考えなくてはならない。全く同じデータから正反対の結論を引き出すことも可能(※)だからだ。元論文には考古学者が関わっておらず、考古学的な考察はこれから出てくるはずなので、それを待つのが吉だろう。

どんな結論が出てくるのか、楽しみにしながら正座待機…ですよ…!


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※全く同じデータから正反対の結論に至る例

例えば、カルタゴで幼児を儀式の犠牲に使うことがあったかどうか、あったとしたらどれほどの頻度だったかについての議論。幼児ばかりが埋葬された墓所の調査結果をもとに、幼児犠牲が頻繁に行われていたとする学者と、それはない単に幼児専用の墓所があったんだとする学者が正面からバトルしていたりする。

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