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zoom RSS ヴァイキング・ソードとヴァイキング時代の武器/汝、戦士として身を立てるならば

<<   作成日時 : 2017/07/15 00:10   >>

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ヴァイキング時代っていうと何か剣でカッコよく戦ってるイメージも強いと思うのだが、残念ながら史実的には剣はあまり使われていなかったようだ。ていうか使えなかった。という話をしよう。

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結論から言うと、

 ・平民は防具なし+木の丸盾+斧
 ・一部の富豪、高貴な身分の人のみチェインメイル+兜+剣

 ・サクソン人は槍がすき
 ・弓兵の地位は低い
 ・小刀は全員装備

メイン斧、剣はあまり出さない。これでだいぶリアリティが出せるはず!


で、細かいところはこれから説明するのだが、ヴァイキング時代に剣があまり使われなかった理由を最初にまとめておく。

【あんまり剣が使われなかった理由】

 ・鋳造技術が低く、実戦向けの剣がほとんど作れなかった(おそらくかなり偶然に頼っている)
 ・良質な鋼は輸入品で高価
 ・斧なら各家庭で作れてメンテも出来る

剣は身分が高い人や一部裕福層だけが手にするステイタス・シンボル的なもので、見栄を張るつもりでなければ斧のほうが安価で使い勝手が良かったのだ。しかも、初期の剣は強度的に「貫く」ということさえおぼつかなかった可能性があり、おそらく戦力的にも劣る。司令官がカッコつけに持つならともかく、前線の民兵が持つものではなかったようだ。

*************************

というわけで細かい話に入る。


<<予備知識>>

・ヴァイキング時代の開始は8世紀半ば〜11世紀半ば

・ヴァイキング行に出たのは北方のゲルマン系民族で、略奪対象となったブリテン島やフランス沿岸部には既に別のゲルマン系民族が住んでいる
・なので場合によってはゲルマン系同士の戦闘にもなる(サクソンvsデーン とか)
・現在はブリテン島にケルト人の大規模な移住はなかったことが明らかになっているためヴァイキングとケルト系住民との戦闘は起きていない

・ヴァイキングは民族名ではなく行為の名称であり、ヴァイキング行に出ていない時は基本的に農場経営をしている


というわけで、ここで「ヴァイキング」ではなく「ヴァイキング時代」と範囲をとったのは、ヴァイキングに攻撃される被害者となっていた同時代のゲルマン系民族も入れたかったから、ということ。実際にヴァイキングやってたのは北欧の、主にノルウェー・スウェーデン・デンマークあたりの人たちなわけですが、似たような文化圏であり繋がってもいる地域を排除するのは難しい。実際にヴァイキング時代の遺跡は、ヴァイキングに行った先(ブリテン島など)でも発見されている。

さて、ヴァイキング時代の剣は、サガや神話で多く言及され、絵などでも残っていながら実物はほとんど見つかっていない。 これが、絶対数が少なく一般的ではなかったことの証明の一つとなっている。見つかる場合は裕福な人の墳墓から出てくることがほとんどなのだが、成分分析をしてみると実戦では使えない「なまくら」だったことが判ってきたりしている。

少し前に紹介した、ヴァイキング・ソードの成分分析についての記事をもう一度紹介する。

ヴァイキング・ソードをスキャンする/ヴァイキングたちの武器とは?
http://55096962.at.webry.info/201704/article_15.html

墓から出てきた剣の成分を確認したら、耐久性があまりなく、不純物が混じっていて「なまくら」だった、という記事だ。

ブリテン島での記録だが、剣の製法としては、初期には焼けた鉄の棒を溶接して叩き伸ばすことで作られていたようだ。この工程には一ヶ月もかかったという。剣の価格は10世紀半ばの時点で「奴隷15人分」ととんでもなく高価だったことが判っている。(「サクソン/ヴァイキング/ノルマン ブリテンへの来寇者たち」より)
この分析対象となった剣もおそらく、素材の溶接が巧くいかなかったケースなのだろう。


で、剣の成分についてはもう一つ、ハイカーがノルウェーで見つけた剣についての記事に詳しく補足されている。

Hiker Discovers 1,200-Year-Old Viking Sword in Norway
http://www.history.com/news/hiker-discovers-1200-year-old-viking-sword-in-norway


"Many later Viking sword blades were emblazoned with specific markings, believed to be the names of their creators. Of the thousands of Viking swords that have been discovered across Scandinavia and northern Europe―most excavated from burial sites or found in rivers―some 170 have been marked with the name Ulfberht. Their superior quality shocked archaeologists, as the technology needed to produce such pure metal would not be invented for another 800 years. In order to liquefy iron ore and remove impurities (known as “slag”), modern metal workers heat it to 3,000°F (1,650°C); carbon is then added in order to strengthen the brittle iron. In medieval times, when ovens could not achieve high-enough temperatures to liquefy the iron, metal workers would have to remove slag by pounding it out, a much less effective process. With very little slag, and high carbon content, the Ulfberht blades are made of what’s known as “crucible steel,” a state-of-the-art metal that would not be seen in Europe again until the Industrial Revolution."


スカンジナヴィアや北ヨーロッパで見つかっている剣のうち170に「Ulfberht」という作者名がマーキングされている。(ちなみに今までに見つかっているヴァイキング・ソードの総数は約2000本) これらはヴァイキング・ソードの中でも優れた品質の剣として知られているが、特に、最先端の"crucible steel"を使用していることが特徴的だ。この金属はヨーロッパでは産業革命ごろまで再登場しないとまで言われている。

この"crucible steel"は「るつぼ鋼」と訳せるが、なんのこっちゃわからんなと思ってたら日本語で説明ページを作ってくれてる人がいたよ…!

http://asait.world.coocan.jp/kuiper_belt/section4I/crucible.htm

上記ではイスラム世界の文書に言及されているが、記事中でも「るつぼ鋼」はイスラム世界からの輸入品ではないかと述べられている。ヴァイキングたちは、東方ヴァイキングという形でコンスタンチノープルを経由して東地中海や黒海にも進出しており、北欧のヴァイキング時代の遺跡からはイスラム貨幣も見つかっている。また、ヴァイキングでなくても、ヨーロッパの商人たちが東地中海に出向くことはあっただろう。輸入経路がどうであったにせよ、優れた鋼は西ヨーロッパでは自力生産することが出来ず、はるか東のイスラム世界からもたらされるしかなかったのだ。

となると、当然ながら優れた剣はとてつもなく高価なものとなる。
それでも剣がほしい、たとえ質は劣っても安価な地元産の剣を…となると、最初にリンクした記事のごとく、「見た目は剣だけど強度足りてなくて実戦向きじゃない」という剣といっしょにお墓に入るはめになる(´・ω・`)



となれば、一般人には剣を持つことは出来ない。実戦でなまくらを手にしてたら命に関わる。
もっと安価で、そして自宅の農場でもハンドメイドできる斧や小刀に頼ることになるのは必然である。

ヴァイキング時代に武器としても使われた手斧については、よさげなページを教えてもらった。
http://www.hurstwic.org/history/articles/manufacturing/text/viking_axe.htm

つくりかた。

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簡単ですね!!

ただの鉄の板をぐにっと曲げて叩くだけ。
これがないと暖炉にくべる薪も作れないはずなので、当時はどこの家(農場)にも必ずある。しかも研ぐのも修理するのも自分の家で出来る。準備するのに高度な技術も必要ない。しかも安価だ。


ヴァイキング時代の一般人にとっての主要な武器が、剣ではなく、ホームメイド・アックスだったことはこれで理解できたかと思う。というわけでヴァイキング行に行きたい男子は、手斧を用意して、まずはまき割り修行で足腰と腕力を鍛えるところから始めよう。剣道じゃなくて。

オススメは炭焼き小屋か陶芸工房でのバイトである。
いつか身をたてヴァルハラに呼ばれるその日のために、各々精進されたし。

Good luck!


****
おまけ

斧の使い方いろいろ! 投げて敵を倒す方法もあるよ

History Of Axe Documentary - History TV
https://www.youtube.com/watch?v=8Gb9gKDDhJc

真ん中過ぎたあたりからハンドアックスの戦い方が出てくるよ!

MILITARY HISTORY : Medieval Armour and Axes
https://www.youtube.com/watch?v=zAbnf5fxSlk

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