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zoom RSS 【狂気と】色んな意味で酷い(褒め言葉)本、「バッタを倒しにアフリカへ」【偉人の狭間】

<<   作成日時 : 2017/05/30 00:10   >>

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人間らしさと人工物っぽさのちょうどいい具合の中間を「不気味の谷」というらしいが、この本は、"この人ヤバくね? 頭おかしくね?" というのと、"すごいな…熱いし真剣に研究してるんだな…"っていうのの、ちょうど中間にハマって妙にぞわぞわくる不気味な本だった。「狂気に満ちた最高のエッセイ」と評している人がいたが、その言葉がドンピシャだ。

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)
光文社
2017-05-17
前野ウルド浩太郎

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 簡単に言うと、昆虫博士を目指したある若き博士の就職奮闘記である。

というと面接受けたり論文提出したりという話かと思うだろうが、なにしろ舞台の大半がアフリカのモーリタニア。著者の研究は、サハラの周辺に位置するサヘル地帯(緑がちょっとだけある)に大発生するサバクトビバッタなのだ。バッタが大発生して作物を食い荒らすと当然、飢饉が発生する。とっとと退治しなくてはならない。だが、発生メカニズムや生態が良く分からないのでは退治も大変だ。ていうかそもそもバッタの大群なんて発生しないほうがいい。

「バッタと戦いアフリカを救え!」
そんな熱い思いを抱いてアフリカに渡ったのが著者、…ということになっているが、正直そこらへんは良くある話盛りすぎなやつの気がして、暖かく流してしまったた。単純にバッタ好きなんじゃね? 群れとか見るとワクワクするからじゃね? それなら判るよ、私もダンゴムシの群れとか孵化したばかりのカマキリの子供の群れとか見つけたら「ウワアアア気持ちわるいいいい(と言いながらずーっと見てる)」とかやっちゃうから…。

でもまあ「アフリカを飢饉から救う」のほうがかっこいいし、たぶん記録としてはそっちの皆に理解されやすいほうで残される。



学者になるには、博士号をとったあとの就職先決定がとても大事だという。就職できない博士は「ポスドク」と呼ばれる。最初はお手当がつくが、支援のあるうちに実績を出さないと就職できないままプータローに転落してしまう。しかし著者は、特に就職活動をしないまま、思うように実績も上げられないまま(何しろバッタの発生が不定期だ…)アフリカで数年を過ごし、瀬戸際に立たされてしまう。

進むか、退くか。

そこから著者が世の中に出てくることになる。私はこの本を読む前にウェブナショジオの記事の方を読んでいたのだが、それ以外にもニコニコとかにも出てたらしい。なんとしてでも研究資金を集めて研究者としてやっていきたい。世知辛い話だが、お金がなければ研究は出来ない。お金集めはいかに上手にアピールできるかにかかっている。アピールが巧いだけでロクな研究成果も上げられていないクソ博士も世の中にはいるが、研究内容がいかに素晴らしかろうとアピール出来なければ研究資金は勝手に振り込まれたりはしない。その世知辛さ、現実を、明るい口調で、狂気と正気の狭間ギリギリインコースを攻めながら書いているのがこの本である。

…たぶん、アフリカのマイナーめな国にいきなり飛ぶ人は少ないと思うが、これから何かの研究者として一生を賭けたい、という人は、この苦労話を読んでおいたほうがいいかもしれない。大学までは、勉強さえしていれば入れる。博士号もまぁ取れる。他人の敷いたレールに沿って走れば目的地には着く。が、そこから放り出された途端、とつぜん目の前には何もない草原が、先人たちの歩いてきたうっすらした踏み跡だけ残る地図のない世界が、人生の終点まで続いている。

何をするも自由。どっちに進むかどころかその場に永遠と留まり続けることさえ自由。ただし目的地があるならば、タイムリミットまでに正しい方向を見定めて歩き出さねばならない――。
学者を目指すすべての人が成功するとは限らない。が、著者はうまくいった。
その結果を知っているから、辿り着くまでの苦労の数々を爆笑しながら読めるのであり、これで最後に「今も無収入です。」とかで終わっていたら…うん、目も当てられなかったと思う…。


この本には、専門的な話や研究成果は出てこない。それらは別の本のほうである。
とはいえ全編にわたり虫の話がたくさん出てくるし、バッタがもさっと固まっている写真なんかも出てくるので、虫嫌いな人は読めないかもしれない。ていうか表紙からしてバッタだし。実際は著者だけど。

モーリタニアでビールを飲むにはどうしたらいいかとかいうわりとどうでもいい話、日本がいろいろ支援していることやその代わりにモーリタニア産のタコが日本に輸入されていること、相棒のドライバー・ティジャニとの珍道中など、エッセイとして面白い要素は沢山ある。緑色の全身タイツでバッタを浴びる姿にドン引きしない人なら楽しく読めると思う。

*****

ウェブナショジオでの連載はこちら。
このノリと虫まみれ具合についていけたなら、本は読むべき。

研究室】研究室に行ってみた。モーリタニア国立サバクトビバッタ研究所
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20140114/379960/


****
【おまけ】

今年はアフリカではバッタの大発生はなかったぽいのだが、ギリシャの島で大発生して大変なことになっていたようだった。
バッタ博士は今ならギリシャの救世主になれる。ウルドに加えエウエルゲテス(善行者)とかの称号ももらえるかもしれない。

Greece battles locust plague on Agios Efstratios island
http://www.bbc.com/news/world-europe-39972713


【そもそもなんでバッタの話を追い始めたかというと…】

モーリタニアでサバクトビバッタが大発生すると、それはアフリカの反対側のエジプトさんにも飛んでくる。
近年で大発生したのは自分の見ていた範囲だと2013年で、その時の記事がこれ。ここ数年は、エジプトのニュースでバッタの話題を見た覚えはないが、農業国であるエジプトさんにとっても死活問題なのだ。

http://55096962.at.webry.info/201303/article_21.html

ただ前々から気になってるんだけど、古代エジプトの時代にはバッタは好意的に扱われていて、大発生した記録や蝗害の記録が見つからないんだ。

http://55096962.at.webry.info/201705/article_20.html

古代エジプト語文献になかったとしても、ギリシャ入植者が増えた時代からくらいならギリシャ語でなんかありそうな気もするけど見たことがない。現代はエジプトでもギリシャでもバッタの大量発生があるというのに…。なんでなんだろう? 歴史からのアプローチは生物学の人では苦手だと思うので、歴史学者、誰か…だ、だれかたの…。

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