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zoom RSS ナショジオ2月号の酒特集が色々とおかしい…のでツッコんでみる。

<<   作成日時 : 2017/02/05 00:10   >>

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2月号の「酒の誕生」という特集が、ちょっとめったに見ないくらい酷い内容だと思ったので、片っ端からツッコんでいきたい。

「なんとなくよくわからんし歯切れが悪い」と思ったのなら、多分それは正解だ。色んな人に話を聞きにいったはいいが、互いに矛盾しているのを考慮せずにツギハギにしただけの記事だし、個々のインタビュー内容に根拠がない。もっと言えば明らかに「飛び」すぎていると思われる部分もあった。自分に知識がない部分もあるので、そもそもツッコミ内容が間違えている可能性もあるが、この記事がなんだか良く分からない「ツギハギ」なのは確かである。

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2017年 2月号 [雑誌]
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●酒の起源がいつのまにか凄まじく遡らされている

まず表紙の時点で一つ。
「中国で9000年前の発酵飲料の証拠」という記述だが、以前ツッコんだときは「5000年前」でそれすらだいぶ無理があったのに、いつの間にかさらに4000年も遡らされてて何がどうなってるのか全くわからない(笑)

中国5000年の歴史、ビール作りが5千年前から始まっていた? ―結論ありきで研究するとこうなるという
http://55096962.at.webry.info/201606/article_10.html

上記の記事を書いたときにも突っ込んだが、5000年前にはまだ、中国ではコメの栽培が開始されている証拠がない。 コメの栽培が開始されていた確実な証拠がある上限となる。(長江下流。上流はさかのぼって3000年が限度)
原料に「米」が入っているからには、米の栽培伝播の歴史を数千年遡らせないといけない。野生のコメで醸造するのは相当厳しいだろう。コメや麦は、原種でも糖分を十分に持ち、発酵が容易なブドウとは条件が異なる。だから酒の製造は栽培化以降のはず、というのが前提なんだが…。

さらに酒製造の根拠として挙げられている成分は、穀物をカメのなかに水分と一緒に一定期間置けば自然に出来上がるもので、意図的な醸造であったという証拠にはならない。つうか、集落なり家なりが放棄されるときに置き忘れられたものが腐って発酵した可能性を否定できないのだ。酒を造っていたと言うためには、酒造りの道具や、検出量や回数といった複合的な条件が必要となってくる。

…と、いった面をクリアできていないので、これを決定事項として出してくるのには違和感がある。中国さんの起源論はたいてい証拠が怪しいので、再検証されない限り使えないんだ…。

そして、表紙で「中国の酒造りの歴史は9000年」と宣言しておいて記事の真ん中あたりの図では7500年前になっている。一つの記事の中でのこの矛盾は何だ(笑) というか、5000年前という主張でさえ証拠不十分なのに、それより前に設定するのは、さすがに無茶。たぶん、「野生のイネを利用しはじめたのが8,000年前くらい(推定紀元前6000年〜7000年)」という情報と、栽培化の歴史とがごっちゃになっていると思われる。


ただし、「ザグロス山脈では7,400年前にはワインが醸造されていた」いう記述、これは正しかった。
ザクロス山脈の付近はぶどうの原産地で古くから栽培が行われていて、一番古いのがハッジ・フィルツ遺跡の紀元前7000年くらいの酒壷。こちらは壷の中の成分だけで判断したなんてことはしてなくて、前後の時代の近くの遺跡から同じように酒壷が出ていることやブドウ栽培の証拠から結論づけられているので確実性は高い。



●アルコールを分解する遺伝子が生存に有利に働いたのでは、という説

中に出てきた「酔っ払ったサル仮説」なるものは、あまりにも荒唐無稽に思えた。
霊長類は腐った果実(発酵したもの=アルコールが生成されている)を食べるために、アルコールを分解する遺伝子を得たという理屈だ。確かにアルコールを分解する遺伝子があれば酒を口にしても大丈夫だろうが、しかし、それが「発酵した果実のため」で、その遺伝子が生存に有利に働いた、というのは、思いつきレベルでしかない。

そもそも、栽培化の過程を経ていない原種植物の中の一体どこに、発酵するほど糖分が多い果実を作るものがあるか。(そう、糖分がなければ発酵は起きない!)

現代に存在する、糖分の多いジューシーな果実の大半は、人類が最近作り出したものに過ぎない。もし仮に天然発酵できるほどの糖分と水分をもつ果実があったとして、果たしてそれは、アルコール分解遺伝子を持つようになった1000万年前の人類の故郷には存在したのか。

さらに、その遺伝子は変異して消えてしまったせいでアジア人のほとんどが持っていないか欠損している。生存に有利な遺伝子だったというのなら、なぜあっさり消滅し、消滅後も繁殖し続けることが出来たのか。そのくらいは説明出来なければ、説として成立しないだろう。


さらにツッコむと、「人類は酒のために木から降りた」などと言い出すのは、机上の空論以外の何モノでもない。言い出した学者さんは実際に果実がなってるのを見たことの無い人かなんかか。自然に発酵するほど糖分の多い果実なら、鳥や虫にあっという間に食われてしまう。発酵するまで放置されることは絶対にない。ほかに生き物のいない場所でもなければ。

けれど植物の果実というのは元々、それを食べにくる動物に果実を与えるかわり種を遠くに運んでもらうという関係性のために生まれたものだ。だから一般的に、果樹は果実を食べる動物の多い地域に生える。つまり果実は、熟れた瞬間から他のライバルたちと争って口に入れるのを宿命付けられた存在であり、地面に転がった果実が天然に発酵するのを待っていられる状況など発生しない。

果実が腐って発酵するのはふつう、木のウロの奥深くなどである。いわゆる「猿酒」だ。身体の大きな動物は入り込めず、鳥のくちばしも届かず、器用な手と長い腕を持つ人類の祖先だけが手に入れられる場所。発酵した果実を食したいなら、むしろ木から下りてはいけないということになる。

ていうか、同じ記事の中で「動物はアルコールなんか飲まないよね」と書いているのだが、アルコール分解酵素を持ちはじめた頃の人類ってまだホモ族にもなってなくて、動物の一種だと思うんだが…これも同じ記事の中で矛盾していないだろうか…。



●定住を始めたのは、酒のためだったという説


地域によっては有り得なくもないだろうが、記事の中に出てきた考え方だと話の因果関係を考えずに書いているので成立し得ないことになってしまう。

記事にあるギョックリ・テペの例で、「宗教の場を固定する→その周囲で定住が始まる」が前提だとする。
酒造りのために必要なブドウや麦などの作物は定住でしか作れない。
とすると、定住開始→定住で食物を得るために狩猟と栽培を並行→栽培作物から酒が出来る という順序になるはずだ。

もし「酒のために定住を開始した」と考えるのであれば、ヒトは、「定住化によって出来る作物が酒の原料である」ことを、定住開始前に知っていなくてはならない。また、野生の植物から酒を造っていたのなら、酒のために定住するという発想に至るだろうか。そもそも酒では腹は膨れない。酩酊の効果にしても、糖分の少ない野生種の麦を発酵させるのは相当難しかったのではないか。うまく発酵させられたとしても、現代のように高いアルコール度数まで進むことはなく、すっぱい濁ったビールしか出来なかったのではないかと予想する。

アルコール度数の高い、曲がりなりにも「酔える」酒を造るには、穀物が栽培化されて糖分が増えてないとだめだと思う。

そもそも宗教に酒による酩酊は必須ではないし、酒がなくても宗教を持ってた連中だっている。宗教の発達と酒造りの時期が近いからといって、何も考えずに両者を結びつけるのもしっくりこない。



*****

というわけで、酒が人類の歴史に深く関わってきたというのはそうだろうし、歴史を変えてきた部分もあるだろうなと思う、そこはいいんだけど、細かいところ疑問譜がつきまくるし、紹介している説もごく一部の人しか支持してなさそうなやつで私には絵空事に見えた。さらに同じ記事の中で矛盾が発生しているのは、もう何がなんだか。

これをメイン特集にもってきてるのは、よほどネタがなかったのか編集長が夏休みだったのか。。

たまにこういう納得いかない記事も載ってくるので、天下の黄色い雑誌様の言うことでも頭から信用するのはオススメしません!!




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