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zoom RSS 行動学+生物学でイヌの行動を解き明かす本「イヌに『こころ』はあるのか」

<<   作成日時 : 2016/11/30 00:10   >>

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日本語タイトルのせいでヘンな啓蒙本かと思いながら手にとったが、ぱらっとめくったら「あっこれローレンツやん…」ってなった。なんで犬写真本にまぜて置いてあるの、これ心理学棚にあってもいいやつじゃないの。

イヌに「こころ」はあるのか: 遺伝と認知の行動学
原書房
レイモンド コッピンジャー

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* 基礎知識 ローレンツ*

「刷り込み行動」を理論付けることによってノーベル賞を受賞した医学者・動物学者。心理学では行動心理学の先駆者として触れる。

参考
http://www.moonover.jp/psy/lorenz.htm
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有名な「鳥のヒナが生まれて最初に見た"動くもの"を親だと思いこむ」というのも、ローレンツの研究からから来ている。この「親を覚える」という学習機能は、当然ながら遺伝的に決定されているものだ。そして、誕生から間もないごく短い一定期間にしか発動しない。これを、その行動が発生する時期(臨界期)というが、イヌについても同じような臨界期が存在する。(もちろん人にも存在するが…人の場合は成長に時間がかかるぶん、けっこう長い。)

本の中ではイヌのもつ臨界期について幾つか出てくる。

たとえば子イヌが「母イヌのおっぱいを吸う」という行動を覚えられる時期は、なんと誕生から数時間以内なのだという。なので、その間に何らかの原因でおっぱいに吸い付けなかった子供は、人間が授乳してやらないと乳を吸えない体になってしまう。

逆に母イヌのほうでは、子犬の発する緊急時の鳴き声に反応できる期間が決まっている。発動はお産の終了から八週間とか十二週間とかの間だけなので、お産終了前にロストした子犬の悲鳴には反応しないし、期間が過ぎ去ったあとのお産後十三週目とかでも同様に、子犬を助けに行かないという。だから、たとえ子犬を見捨てる母イヌがいたとしても、特別に冷たい母イヌというわけではないかもしれないのだ。単純に、決められた行動をとる条件を満たしていなかったから、というほうが可能性が高い。


一番「へえー」って思ったのは、オオカミが群れで狩りしてるように見えるのは、実はあれ別に協力してるわけじゃなかったって話。オオカミが持っている行動ルールは2つだけ。

 ・獲物のリーチぎりぎりまで近づく
 ・リーチぎりぎりまで近づいたら他のオオカミからは離れる

これを全員が繰り返すことによって獲物の周囲を取り囲み、行動を制限するという、一見すると「群れで狩りをしてるっぽい」状態が生まれるんだそうだ。判っちゃえばルールは単純。人間が考えるような複雑な協力関係も意識も必要ない。

心のように見えているものの多くが、こうした"機械的な"本能によって形作られていることが判ってくる。


…という具合に、「人間はイヌを擬人化して勝手に行動に意味をつけようとするけど、実は遺伝的に決められた条件行動をとってるだけのことが多いよ。」と、ザックリ解説していくのが、この本の中身である。「こころはあるのか」とは、「こころをどう条件づけるか」という話で、最後の最後に出てくるに過ぎない。本題は「イヌはどう行動するか」で、原著タイトルもそうなっている。

愛犬家ほど反発するだろう、的なこともチラっと出てきてたけど、まぁ、うん、「イヌは人間くらい賢いんだ!」って信じたい人からすると、「その行動は単に条件反射なんですけど・・・」って言われるのは納得いかないかもしれないね。でもまぁ生物ってそんなもんだから。人間の母性なんてものも、実際はホルモンの仕業だったりするからね。



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この本はイヌのことばっかり書いてるわけじゃなく、ほかの動物の本能的な行動についても解説してるんで、動物の行動学をかじってみたい人にも面白いと思う。

たとえば「ピューマが獲物を襲うための一連の行動」。大雑把には

 定位>注視>忍び寄り>急襲>かみつき捕獲>噛み殺し

と手順を踏んで最終的に獲物を食べるのだが、この行動は中断されると次に進めなくなってしまうのだという。たとえば、忍び寄ってる最中に意識がそれてしまったら、目の前に獲物が来てても噛み殺せない。いったん下がって「定位」から再チャレンジ。
イヌの場合は、一連の行動を連続して行う必要がなく、いきなり噛み付き行動に移れる。

これが、「ピューマは活きた獲物しか食えない」「イヌは死体でも食える」っていう違いに繋がっているらしい。


ガンの渡りの話も面白い。なぜキレイなV字を作るのかというと、他のガンの起こす気流に乗ったほうがエネルギーが節約できるからで、気流に乗るためのベスポジが「他のガンの斜め後ろ」なのだという。で、後から来たガンがつぎつぎ斜め後ろに繋がっていくと、きれいなV字になるんだという。つまれあれだ自転車ロードレースで先頭のヤツが向かい風受けて後続選手の体力温存させるやつだ(笑)


人間が勝手に意味を与えてる動物たちの行動。その裏には実は別に深い意味も感情もなく、ただ淡々と決められたルールに乗っ取って行動しているだけなのかもしれない。あるいは、それらを取り除いていった先にあるものが、本当に「心」と呼べる何かなのかも。

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