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zoom RSS 「日本人の起源」を語り始めたのは禊の終わりか? かつてと同じ道を歩まぬために

<<   作成日時 : 2016/04/29 00:10   >>

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タイトルだけでは何のことやら分からないと思うのでザックリ三行で言うと。

 ・日本の考古学界では、かつて日本人の起源を巡って大規模な遺物の捏造事件があった

 ・発覚は2000年。現在その主要な関係者の多くが他界している。

 ・最近騒がれ始めた日本人の起源云々のプロジェクトは、事件が風化したと判断されて始まったものではないか





ものすごく 意地悪な、 邪推と怒られてもしかたの無い疑いではある。しかし最近の、「日本人の祖先は凄かった」「謎に満ちた日本人の起源を探る!」といった各種の報道や、センセーショナルな(そして不正確な)キャッチコピーの在り方に、私はいささかの不安を覚えるわけである。ちゅーてもまぁ、今の段階だとうっすらとした不安でしかないわけだけども。


以前、科博がやろうとしているプロジェクトにツッコミを入れた時にも書いたとおり、


 数万年前などという時間軸上に 日本と言う国は存在しない


そもそも国などというものは、つい最近出来たものではないのか。人の移動は現在の国境ではなく、地球規模で見なければ意味がないのではないか? なんで、「数万年後に日本と言う国が出来る場所」に「たまたまその時住んでいた人」が「日本人」なのか。そりゃ少しは血の繋がりはあるかもしれんけど、ほぼ他人でしょ…。


三万年前に日本に渡って来た人々も、一万年前に日本列島に住んでいた人々も、縄文人や弥生人も、現在日本に住む私たちの血の中に繋がっている「かも」しれないが、そのものでは決して無い。

それを日本人などと一括りに言うことは不正確であるし、自分たちが特別だと無意識に思いあがっている証拠に過ぎない。我々はホモ・サピエンスという種族の一画である。すべてのホモ・サピエンスの祖はアフリカを出て別れたりくっついたりしがら日本に辿り着いた。したがって言うなれば、日本人のみならずすべてのヒトの祖先はアフリカ人なのである。


だから、数万年前の骨を指して「日本人の祖先だ」とか言ってる人がいたら、ツッコミを入れてあげてほしいのである。その時代に日本という国は存在しないし、その当時日本付近にいた人たちの子孫が今の日本に生きているかどうかは不明である。因みに縄文人などという民族も、本当は存在しない。便宜上、縄文時代と区切られている、一万年も続くやたらと長い時間の中に生きた様々な人々の集合体を、これまた便宜上、そのように呼んでいるだけなのだから。


******************

長い前置きとなってしまったが、というわけで、2000年以前に語られていた、今となっては荒唐無稽な「日本人の祖先」論と、それに纏わる大規模な捏造について概要を説明しよう。



今から五十年以上前、戦後間もない考古学の世界では、日本列島に人が住み始めたのは縄文時代からだと考えられていた。縄文時代の始まりが1万数千年くらい前、というところまで遡ってはいたものの、それより前の段階が発掘されていなかったのである。

しかし、それより前が絶対にあるはず、という理論のもとに石器を探し続けた人々がいた。
伝説となった相澤忠洋などはその筆頭になる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E6%B2%A2%E5%BF%A0%E6%B4%8B

彼らの発見により日本にも縄文以前の旧石器時代があることが証明された。
そしてそこから、さらに年代を遡らせようとした人々もいた。

発覚より数十年前、1980年頃の日本の考古学では、旧石器時代の中でも「後期旧石器時代」の存在は認められていたが、前期旧石器時代のものはまだ見つかっていなかった―― そして、絶対に存在するはず、と考えて譲らなかった人々の中から捏造者は生まれた。何十年後に見つかるかもわからないものを、批判にさらされながら地道に探すことは大変だが、自分の手で証拠を捏造するのは絶対にやってはいけない最悪の方法だ。

信念を持つことは悪いことではないが、あまりに求めるあまり捏造を容易く信じ、あるいは捏造に加担したことは許されるものではない。

ちなみに2016年現在、前期旧石器時代のものと考えられている石器はいくつか見つかっている。古いものだから数は少ないが、捏造なんかしなくても、真実であれば追い続ければ明らかになるのだ。最も、原始的な石器ほど自然石と見分けがつきにくいものだから、今も議論があるようだが…。



捏造の内容に戻ろう。

人類の出アフリカは20万年前。したがって、それより古い石器はすべて現生人類以外がつくったものとなる。しかし1980年頃の世界では、まだ人類の発祥地が定まっておらず、そこからの拡散ルートも現在ほど明確にはなっていなかった。そんな中、日本からは数十万年も昔の、高度な技術で作られた石器が山ほど出てくる。もしかして日本が人類の起源なのか、他の地域とは異なり日本人だけは原人から直接進化したのではないか、などという、今となってはファンタジーでしかない起源論が飛び交った時代である。

だがその石器がすべて捏造だったのだ。
古い地層に埋められた縄文時代の石器。「まるで人間が作ったような」「高度な石器」であるのは当然のことだった。まさしくそのものだったのだから。

かくてファンタジーな日本人の起源論は露と消えた。
それらを支持した学者たちは消えなかったが。





というわけで、冒頭で書いたとおり、日本の考古学会が「日本人の起源」を今になって大々的にまた取り組むようになったのは、あの15年前の超絶こっぱずかしい事件をそろそろ世間が忘れたと考えているからではないか、と思ったからだ。しかも今回も最初から、事実にファンタジーを織り交ぜて宣伝されている。これは一歩間違うと、またマスコミの盛り上げに釣られて雰囲気に酔ってやらかすんじゃないか。何しろ、あの旧石器捏造事件で日本の考古学会は、捏造を直接行った一人をスケープゴートに仕立て上げ、二十年も(!)捏造を見抜けなかった自分たちの無能っぷりを十分に反省しなかったからだ。

時が経ち、確かに関係者の多くは他界したが、そもそも何でシロウトでさえおかしいと思うような捏造が見抜けなかったのか、根本を正さない限り何度でも同じことは繰り返されるだろう。

ちなみにその旧石器捏造事件には、国立民俗学博物館や東大の研究者も加担している。
科博のプロジェクトだって、科博だからダイジョウブ、なんてことは言えないのだ。

学者といえど"人"である。
ナショナリズムや時代の雰囲気に惑わされれば、容易く真実を見失う。それをまざまざと見せ付けてくれた前例が既にあるのだから、警戒したくもなろうというものだ。



最後に、捏造事件に絡んで今なお舌鋒鋭いある学者の憤懣やるかたない言葉を引用しておきたい。


"考古学は「古代のロマン」という偽りの幻想を食い扶持にする商売になり下がったのである。"

"この十年待っていたが何も変わらなかった。彼らが望むように、事件は忘れ去られていくだろう。しかし、自らの清算も改善もしない研究者たちの論文や著作にどのような説得力、意味があるのだろうか。"


であるならば、風化させずに何度でも繰り返すことが未来のためのささやかな努力にもなるだろうか。「日本人の起源」探しは大いに結構であるが、そこに過度な期待や、事実に反するファンタジーは必要ない。日本人は数あるホモ・サピエンスの一部であって、特別な民族でも種族でもない。
まずそこからでいいんじゃないのかな。



************

旧石器捏造事件の顛末とかこのへん。

久し振りに読み返してみて「あー新聞で見たなコレ」って懐かしかったり。ただ自分はこの当時はまだ考古学とか全然興味なくて、うっすら記憶はあるんだけど報道内容の細かいとこまでは覚えていなかった。

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< ぜったいに忘れちゃだめな事件だと思うんだ。
< 忘れさせないよ…

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