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zoom RSS 今更だが「ツタンカーメンのマスクはネフェネフェルウアテン女王のもの」というニュースに補足を入れてみる

<<   作成日時 : 2016/01/21 00:10   >>

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去年の年末頃に少しだけ流れたこのニュース。
http://weekly.ahram.org.eg/News/13828/47/Tutankhamun-unmasked-.aspx

ツタンカーメンの黄金のマスクの、ツタン様の即位名(prenomen)である「ネブケペルウラー」の部分の下に、うっすらと元の名前「アンクケペルウラー」が残ってるっぽいことが判った、というニュースだ。記事の中にある緑色が現在見えているツタン様の名前。黄色いほうが復元された別人の名前。ただし残っているのは赤い線の部分、かすかな凹凸だけで、黄色のカルトゥーシュは想像になる。

そこで黄色いほうの名前の持ち主として登場するのがネフェルネフェルウアテンという人物。
でも…これは一体誰なのか?

画像


「ネフェルネフェルウアテン」とは、アクエンアテンとツタンカーメンの間に入るとされる、いまのところ正体不明の王の名前だ。記事の中ではネフェルティティと同一人物のような書かれ方をされているが、それは記事の研究者リーブス博士が推している一つの説に過ぎない。(専門家といえど、一般論のフリをしてしれっと自説紛れ込ませてくることはあるから、頭から信用してはいけないw)

ちなみに、アクエンアテンの娘にも「ネフェルネフェルウアテン」という同じ名前の人がいるが、同一人物ではない。



「ネフェルネフェルウアテン」が女王であるとする説は、形容辞(エピセット)の中に"beneficial for her husband"、「夫のために有益である者」という言葉が入っているところから来ている。治世は長くても1-2年。単独統治の期間はなく、アクエンアテンかスメンクカーラーとの共同統治のみであるという説もある。ただ、「アテン」の名前が入っているので、アクエンアテン以降、ツタンカーメンの治世初期までの期間に存在したことは間違いないだろう。

さてこの人がなんで「正体不明」かというと、正体の候補が幾つかあり、どれが正解か不明だからだ。王の妻として実権を握ったとすれば、誰の妻だったのかが問題になっている。

アクエンアテン以降の継承順は以下のようになっている。

 ・アクエンアテン
 ・スメンクカーラー or ネフェルネフェルウアテン
 ・ツタンカーメン


家族関係には不明点も多いが、今のところ可能性が高そうなのは、スメンクカーラーはアクエンアテンの兄弟もしくは娘婿で、ツタンカーメンは息子というものである。で、ツタンカーメンの治世初期にアテン信仰の時代は終了するので、候補となるのは前の2人だけである。

というわけで、ネフェルネフェルウアテンの正体については、だいたい以下の3つの説が主流となっている。


 ・ネフェルティティ説(アクエンアテンの妻)

ネフェルネフェルウアテンはアクエンアテンの正妻であるネフェルティティの別名(即位した際の名前)であるというもの。この説の場合、夫の死と前後して姿を消すネフェルティティは、死亡したのではなく名を変えてしばらくは生存していたことになる。

 ・キヤ説(アクエンアテンの妻)

アクエンアテンの下位の王妃キヤの即位名であるというもの。この説の場合、ツタンカーメンはキヤの息子で、まだ幼かったためキヤが臨時で即位したとも考えられている。

 ・メリトアテン説(スメンクカーラーの妻)

ネフェルネフェルウアテンはアクエンアテンの娘で、スメンクカーラーの妻となったメリトアテン王女の別名であるというもの。この説の場合はスメンクカーラーとメリトアテンがほぼ同時に即位して、ほぼ同時に姿を消したことになる。


かつてはスメンクカーラー=ネフェルネフェルウアテン説もあったと思うが、今は、その説は無くなっているようだ。また、全く新規で「ネフェルネフェルウアテン」という人物がいたという説は見かけない。大量の妻と娘たちの蠢くアマルナ大奥の女たちで、ぽっと出の人間が権力闘争に勝って女王を名乗るなど現実的に考えると難しいという判断だろうか。

どの説をとるかでアクエンアテンの死後のシナリオが大きく変わるのは勿論のこと、「この時点で女王が許されたのなら、なんでツタンカーメンの死後、嫁のアンケセナーメンは大慌てで旦那を見繕おうとしたの? 自分が女王として即位すれば良かったんじゃね?」という疑問も湧いてくる。また、「そもそもネフェルネフェルウアテンは本当に女王として即位してたの? 王の肩書きを名乗っただけじゃね?」というのもあったりする。肩書きからすると、おそらくは夫の王とペアではじめて権力を保てた、実質は共同統治の副王のような存在だったのではないかなと思う。


…追いきれてない説とかもあるかもだけど、だいたいこんな感じ。
その「ネフェルネフェルウアテン女王」用のマスクだったかもしれない、というのが、このニュースの本体だ。



ただぶっちゃけ、この「書き直し」をもって、マスクの元の所有者を特定するのは無理ではないかと思う。

「アンクケペルウラー」という即位名だけならスメンクカーラーも持ってるので、これをネフェルネフェルウアテンのものと断定するには、カルトゥーシュ部分に書き直しの痕跡があるというだけでは厳しい。(アンクケペルウラーはスメンクカーラーのものではなくネフェルネフェルウアテンだけのものである、と証明できれば話は別だが…多分今はそこまで結論づけられてはいない)

ついでに、誕生名ではあるがアクエンアテンの「Neferkheperure-waenre」でも「ケペル」と「ネフェル」の字は入ってるので、たぶん嵌めようと思えば嵌められる。

まず前提として、
「マスクの耳にイアリングの穴が空いている」→「元々は女性用に作られたものでは?」
という推測があり、そこから
「ネフェルネフェルウアテン女王の持っていた肩書きと同じ名前が過去に刻まれた形跡がある」→「これぱ彼女のものでは?」
という説に結びついていることに留意が必要だ。

つまり前段がそもそも間違えていれば、後段に繋がらない。
前段については、もしイアリング穴が本当に必要ないものであったなら、カルトゥーシュを書き直す時にどうして一緒に修正しなかったという疑問にも繋がる。

更に言えば、そもそも女王にまで黄金のマスクを被せようとするか? という話である。
ファラオ様ならともかく、一時的に権力を握っただけの王妃に何でそんな高価な副葬品を個別に用意する必要があるのかとか。このマスクが短命に終わったスメンクカーラーのものとして作られ、途中でツタンカーメン用に変更されたというなら納得できるが、ネフェルネフェルウアテン女王のために作られたという説には疑問譜が付く。

発表したのが、ツタンカーメンの墓の中にネフェルティティの隠し埋葬がある! と言ってるニコラス・リーブス氏なので、たぶん彼の思いいれで話が盛られてる部分も大いにあると思うんだ(笑)正しいかもしれないけど思い込みかもしれない、そこは「真実は時の娘」ってやつで今後の研究と他の研究者の精査を正座して待ちましょう。

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