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zoom RSS くまなく旅するトルコの裏事情 多民族国家の闇/「トルコのもう一つの顔」が面白い

<<   作成日時 : 2015/12/28 00:10   >>

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なんとなく本屋で通りすがりに買った本。冒頭は著者の学生時代の貧乏旅日記から始まり、ヒッチハイクに野宿、途中でお金を盗まれてピンチ…などという良くある微笑ましい系の話から始まり、そのままいくのかと思いきや、途中からトルコの闇の世界、対外的に隠されている部分へと深く入り込んでいく興味深い本。

トルコ旅行記やトルコの文化・歴史を紹介する本はたくさんあるが、「現在の」トルコが抱えている民族問題や闇の部分を、現地に深く関わってまで書いている本は見たことが無い。実に興味深い。そして出版されてから時間が経っていても考えさせられるものがある。

トルコのもう一つの顔 (中公新書)
中央公論社
小島 剛一

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トルコが、かつてオスマントルコという広大な面積をもつ多民族国家であったことは、とりあえず一通りの歴史を学校でやっていれば何となく知っていると思う。

その広大な領土を、戦争に負けたからと鼻歌まじりにケーキでも切るように切り分けてしまったのがフランスやイギリスで、ために現在の旧オスマン領土は「国家」と「民族」と「言語」と「宗教」がてんでバラバラのマーブルケーキ状態になってしまっている。オスマントルコの中心だった部分を残した現在の「トルコ」という国の中でもそれは同様で、特に東部はクルド人が多く住む地域として知られている。

クルド人独立紛争は、最近ではよく報道されるから日本でも知られていると思う。

しかし、トルコ国内にいるのはクルド人だけではない。ザザ人、チェルケズ人、アッシリア人(これは古代のアッシリア人の子孫らしき人々だが、はっきりそうだとは言えないらしい)など、色んな少数民族がいる。そしてそもそもクルド人というのも一つの人種・民族のことではなくて、その中に「クルド諸語」というべき色んな言語が混在しているという。

公用語としてトルコ語があり、ギリシャ語とアラビア語もいちおう認められてはいるものの、それ以外の少数民族の言葉は使うことすら認められていない。秘密警察が見張っているから、人前では民族の言葉で歌さえ歌えない… という生々しい世界。なんとなく中国と一緒だなという感じがする。中国がチベットを併合したように、トルコも、国内にあった別民族の居住地ディルスムを併合し、名前もトゥンジェリと変えてしまった。中国が「大中華」を掲げるようにトルコも「大トルコ」を掲げ、少数民族の同化政策をしている。

これらの事情の本当のところは、観光地化されていない村落をくまなく回らなければ見えてこないものと思う。

ただ、トルコで教えられている歴史が、トルコ外から見ると噴飯ものであるというのは、イスタンブールにある軍事博物館に行けば少し体験することができる。トルコ民族はすべて起源は一つであり、中央アジアからやってきた騎馬民族の子孫なのである。だからクルド語はトルコ語の一種であり、言語とは認められないし、アルメニア系の民族なんて国内には存在しないことになっている。トルコに住むのは、すべて「トルコ人」なのだ。

これを国家政策として半ば洗脳のようにやっているから、ある意味トルコさんはすごい。
親日で、旅人に親切で、長い歴史をもつ国土と興味深い観光地… というのは表向きの顔。この本は、ひたすら「裏」の顔、今まで誰も見ようとして見て来なかった世界を書く。著者は、外国人には基本的に親切なはずのトルコで、官憲に捕まって牢屋に叩き込まれるという体験までしている。

ただし、これは、告発本ではない。

著者はトルコ大好きなんである。愛ゆえに深入りしてしまい、通っているうちにトルコのもう一つの顔を見てしまったということのようだ。
このへん、戦地に行けば衝撃的な報道が出来るとか名を残せるとか安易に思い込んでいるジャーナリストの人にも是非見習ってもらいたい。戦争が起きて無くても報道すべきことはあると思う。声なき人々の声を拾うには、その人々がどこにいるのかをまず知らなければならない。

どこの国にも、対外的に隠しておきたい裏の顔、あるいは意識していない別の顔はある。
この本は、トルコが好きな人にこそ読んでもらいたいと思った。

あとこの本に書かれている民族問題を理解すると、現在のトルコで、なんで民族紛争が絶えないのか、イスタンブールをはじめとする都市でのテロ事件が起きているのか、ISより優先してクルド人を攻撃するのは何故なのか、あたりの話も、原因が見えてくると思う。それも中国と同じなのだ。存在しないことにされた民族の必死の抵抗の結果。クルディスタンとウイグルは、問題の原因も現状も良く似ている。

解決するにはトルコ政府自身が政策転換する必要がありそうなのだが、国粋主義者が大統領を長くつとめてしまってたり、逆に少数民族の締め付けを強化してたり、長年の偏向教育により国民の認識が過激な方向に行っちゃってたりするので、難しそうだなぁ…。


*****

最後にトルコから追い出されてしまった著者がギリシャでピンチになるところで本が終わっていて「えええ…」って感じなのだが、どうやら続編があるらしい。こっちも探してこようと思う。

漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」
旅行人
小島 剛一

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