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zoom RSS エジプトがギリシャ化していた時代のミイラマスク「ファイユームの肖像画」はどこまで生前の姿に忠実か

<<   作成日時 : 2015/12/01 00:10   >>

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ファイユームの肖像画、またはマミー・ポートレートなどと呼ばれるもの(Fayum mummy portraits)は、たぶん展示会などで見たことがある人は多いと思う。こういうやつ。

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これが何かというと、ローマ属領になったあとのエジプトでミイラにはめこまれていた「死者の似顔絵」だ。

古代のファラオたちは立派な黄金のマスクをつけ、その後の庶民も亜麻布を固めて立体的に作ったカルトナージュという仮面をつけていたりしたが、それすらも面倒くさくなって、より安価に量産できる方式で顔を残そうとした時代のものがこれ。使われていた時代は紀元前1世紀〜紀元後3世紀あたりで意外に短い。
ちなみに材質は木であり、木の板の表面に似顔絵を描いているだけのものだ。

これらはヨーロッパで1880年代に大流行した。
ミイラ本体からひっぺがして、単に「古代ローマ時代の芸術品」として扱われていたのがその時代だ。実はミイラにくっついているものだったと分かったのは、きちんとした発掘調査が行われたあとだったという。ちなみに発掘はフリンダース・ピートリが行っている。逆に言うと、ピートリ以外にあまりまとまった研究がなく、ローマ風の衣装を纏ったこれらの被葬者が果たして入植者だったのか、土着エジプト人だったのかといったことすら、良く分からない。

(近年ファイユーム以外の場所から見つかったミイラ・ポートレートについては一応資料がある。)


ピートリの時代には、この肖像画は死者の生前に描かれて準備されていたものだった、と考えられていたようだが、現在ではその考えは主流ではない。本人の顔に似せたと思われる部分もあるが、全般的に没個性であり、一定のルールに従って描かれているからだ。端的に言うと、すんごいデブとか、ハゲとかがいないんである(笑)  このミイラ・ポートレートの「顔」は、古代のファラオたちの像と同じく、ある程度理想化されているのではないかと推測される。

では、どの程度理想化されているのか。本体のミイラにどのくらい似ているのか?


それを確かめたのがコレ。
ミイラ本体の頭蓋骨から再現した顔モデルとの比較。

Proportion and personality in the Fayum Portraits
https://www.britishmuseum.org/pdf/3d%20Proportion%20and%20personality.pdf

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…うん、まあ、似てるっちゃ似てるけど似てないっちゃ似てないというか、肖像画はプリクラでいうデカ目機能が使われていたんだね…?(笑)

女性のほうはわりと似てるけど男性のほうは若作りになってる。ただ、男性のほうで復元された顔の目が若干斜視になってるのが似顔絵のほうでも再現されてたりするので、特徴は捉えられてるようだ。美化されてはいるものの、完全に空想で描いたわけではないことが分かる。

この肖像がはおそらく、故人が志したあと、遺族や知人に見てもらいながら絵師が作成したものなのだろう。
モンタージュ写真なんかと同じだ。「あの人はワシ鼻で口は大きめでした」「こんな感じですか?」「ああそうそう。でも唇はもう少し分厚く…」みたいな感じで。残された人の記憶の中にある顔を絵師が聞き取って再現したとすると、生前に肖像画を用意しておく必要はないし、その人の元気だった頃の顔が再生されることになる。


というわけで、

 ・美化されてるけど特徴は残ってるよ
 ・基本的にデカ目・美肌エフェクトかかってるよ
 ・一枚ずつ故人にあわせて描いてるよ

たぶんこの時代にはミイラ・ポートレート専門の故人似顔絵屋さんがいたんだろうな、と思う。

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