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zoom RSS メソポタミアとエジプトでは、文字を使う目的と発展の仕方が違うような気がする。

<<   作成日時 : 2014/04/21 00:10   >>

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エジプトのヒエログリフが、メソポタミアの楔形文字に刺激されて生まれた、というのは、今のところ定説のような感じになっていると思う。これはヒエログリフの起源が楔形文字だったというわけではなく、「文字を使う」というアイディア(あるいは文字の原型となる「絵や記号で物事を記憶する」という行為そのもの)がメソポタミア方面から伝わったのではないか、という説だ。

これについて正しいか正しくないかは、とりあえず今回の話には関係ないので置いておく。
メソポタミアとエジプトのふたつの文明が、だいたい同じくらいの時期に「文字を使う」ということを思いついて、それぞれの地域で発展させていったことについては、誰も異論は無いと思う。相互の影響があったとしもごく初期の間だけで、紀元前5000年ごろに使われ始めた楔形文字とヒエログリフは、その後、それぞれの地域で独自にに発展していくことになる。



だが、この二つ、同じ「文字」というカテゴリで見てみると、文字の使い方が大きく違う。

メソポタミアでは楔形文字を粘土板に書く。そんなことを言われなくても分かってるよと言われそうだが、メソポタミアの文字は主に粘土板に書くものだ。そして泥封や書類のサインがわりには印章(ハンコ)を使う。

エジプトでは大抵の場合、ヒエログリフを壁画に、ヒエログリフを崩した筆記体のヒエラティックをパピルスに書く。(あるいは"刻む"。)

両者の違いはなんだろう。
まず、メソポタミアでは象形文字が使いにくいからと書きやすい楔形文字に早々に崩してしまったのに対して、エジプトは、象形文字に近い状態のヒエログリフも装飾用として残しつつ、書類などに遣う速記用の書き文字としてヒエラティックを作り出して併用していることではないだろうか。

 文字を装飾として使うか否か。

ここが一つ目のポイントだと思う。

楔形文字は装飾に使われない。だがヒエログリフは文字として使われると同時に、墓や棺、石碑や神殿を飾るための装飾でもあった。メソポタミアでは文字は「記録のための道具」に特化されているのに対し、エジプトの文字は文字であって文字では無い使われ方も同時にされ続けていた。


またもう一つは、ハンコに代表される楔形文字の「商売のための道具」という側面だ。

楔形文字の発展するキッカケになったと推測されている「トークン」という小さな陶器は、牛やヒツジなどの家畜の管理や、遠く離れた人への納品証明などに使われていたと考えられている。この考え型の延長上に「文字を装飾に使う」という目的はない。

それに対して、エジプトでは、文字が考慮されはじめた初期の頃から、文字に神秘的な側面、魔術的な意味合いを持たせようとしていた。

もちろん、楔形文字に神秘的な意味合いがまったく無かったとは思わない。だが同じ宗教に関わる文章でも、「この契約は神が証明するものである」などと書いてハンコを押す楔形文字の文章と、難解で幾重にも意味を仕込んだ、読んだ意味だけでは十分に理解したとは言いがたいピラミッド内部のヒエログリフの文章とでは、その差は明らかだろう。

 文字の使用目的の比重が何処に寄っているか。

これが二つ目。

メソポタミアとエジプトで識字率に大きな差があったとは思わないが、商売上の記録や契約書といった実利的な文書に使うことを主目的とした楔形文字は、外界に向けて開かれた、国際語となる素地をヒエログリフ以上に持っていたと思う。

もちろん、ヒエログリフのほうに商売のための道具という意味がまったく無かったわけでもなく、初期の頃から公的文書や納税書類に使われていた証拠は見つかっている。ただその文書は国内でのみ使用され、書記などの限られた役職の人が読めればよいというものだった。

のちにヌビアでヒエログリフに似せたヌビア文字が使われるようになったことを除けば、ヒエログリフはエジプトでのみ使われ、楔形文字のように発祥地周辺の他国・他民族で共有されることは無かった。これは、ヒエログリフはエジプト文明と分かちがたく結び付けられた、内に向けた文字だったことに起因するのではないか。


これは、エジプトでいう新王国時代、つまり紀元前1500年ごろのオリエント世界における「国際語」が、楔形文字を使って書かれたアッカド語だったことの説明にもなると思う。難解で、宗教的な概念を色濃く含むヒエログリフの知識は、おそらく外国人に積極的に広められることはなかったのではないかと思う。




こうして考えてみると、現在の第一の国際語となっている英語を書き記すのに使われている文字「アルファベット」が、ヒエログリフを崩したフェニキア文字から発展したというのは皮肉に思われてくる。楔形文字の子孫は、なぜ現代まで生き残れなかったのだろうか。つくづく、歴史とは不思議なものである。


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