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zoom RSS 「あれから40年・・・」 イヌイットいまむかし

<<   作成日時 : 2013/12/01 00:10   >>

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最初にカナダ・エスキモーという本を読んだ。全く知らなかったエスキモーの生活を知ることの出来る面白い読み物だったが、この本が出たのは今から40年も昔だった。「カナダ・エスキモー」の締めくくりには、「エスキモーの生活は近代化されつつあり、今後大きく変化するだろう」と書かれており、今はどうなっているのかなぁ… と、気になっていた。

というわけで最近の研究を書いた本を探してきた。
『イヌイット 「極北の狩猟民」のいま』 という本だ。

イヌイット―「極北の狩猟民」のいま (中公新書)
中央公論新社
岸上 伸啓

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前者の「カナダ・エスキモー」が書かれたのが1960年代。
こちらの「イヌイット」は1990年代後半から、本が出版された2005年までの様子を書いている。対象は、両者ともカナダの東側に住むセイウチやアザラシなどの海獣を主食としてきたカナダのエスキモー。

40年の時間を隔てたエスキモー世界の変化は、 …想像していたより小さかった。



というのも、日本が戦後に体験した大きな社会の変化と、そう大差ないなと思ったからだ。

予想していたとおり、犬ぞりは姿を消し、ウミヤックの仕様も限定的になり、スノーモービルやモーターボートが当たり前に使われるようになった。セイウチやアザラシの皮を売って金を稼ぎ、その金でスノーモービル用のガソリンを買う。または、「外貨獲得用」に「作られた」伝統である版画や彫刻で金を稼ぐ。中には市役所などで働いてカネを手にする者もいる。しかし外貨獲得の手段は、そう多いわけではない。彼らはカナダ政府の支援なくして自立して生きていくことは、たぶん難しい。

家はバラックではなくなり、近代化され、電子レンジや冷蔵庫、テレビなども導入された。
しかしセイウチやカリブーの生肉を食べる食習慣はなくなっていない。ご飯時には、床にダンボールをしいて、各自が手にしたナイフで好きな所を切り取って食べる。これは40年前の姿とあまり変わっていない。変わったのは、時間の概念が導入され、一日三食、決まった時間に食べるようになったこと。またピザや冷凍チキンなども食べるようになったこと。若者の中にはセイウチ肉をあまり好まない者も出てきていると書かれていたが、これは日本でいう「コメを食わずにパンばかり食べる若者」みたいなものだろう。

伝統が失われていく面もあるが、便利になっている面もある。
40年前には、狩りで得られる食料が安定せず村まるごと全滅するようなことも珍しくなかったというが、今ではなんと携帯電話やeメールを使って、遠方の同胞に食料不足を訴えかけることができるという。イヌイットの相互補助の習慣と合わせ技で、これは強力だ。イヌイットは食料の備蓄を計算できないという話が「カナダ・エスキモー」のほうに出てきたが、計画性や備蓄の計算を覚えるよりは、携帯電話の使い方を覚えるほうが早かったようだ。

「カナダ・エスキモー」で懸念されていた、酒やタバコとのつきあいかたも少しずつ上手にはなってきているらしい。ただ、伝統文化と新規なものとのはざまで揺れ動く社会にありがちな「鬱」状態はエスキモー社会にはずっとつきまとう問題で、辛いことがあると酒に溺れる者が後を絶たず、自殺率も高いという。日本も自殺率が高い高いと言われているが、北欧やエスキモーなど極地に住む人々の自殺は、日本の場合より衝動的なだけに深刻度が高いと思う。


深刻度が高いといえば、…この本にはエスキモーの「負」の面も書かれているのだが、生活が苦しいからと生活保護に頼りきりになるエスキモーが多いという話が気になった。

村を追い出されたり、居づらくなったりしたエスキモーが都市部に流入し、ホームレスになったり、相互扶助の伝統を頼りにして友達の家を転々としながら生活保護を貰ってプータロー生活をしたりしているケースがかなりあるようだ。先住民であれば、身分証と住所さえあればタダでカネ貰って暮らせるって…。日本の生活保護(いわゆるナマポ)も、外国人に与えたりして相当ザルなところがあると非難轟々なんだが、カナダのこのシステムはどうなんだろう。絶対社会問題になってるよね、これ。
しかも仕事がないからナマポもらいながら酒びたり、麻薬びたり、犯罪も起こす、って…。
うーん…。

アメリカもインディオに対する保護政策で同じような状態になっていたと思うんだけど、カナダもなあ…。

そもそもカナダがイヌイットを自国民に組み入れて保護政策をとるようになったのは、彼らが住んでいた極北地域の石油などの天然資源を合法的に手に入れたかったというのがキッカケみたいなんで、カネやって黙らせてるみたいな穿った見方もできなくはない。

かといって、昔ながらの伝統猟だけで食っていける時代は終わったし、カナダ国民として組み込んでしまった以上、都市に憧れる若者が極北から南下してくるのは止められないし…。

都市で大学まで出て成功したエスキモーもいるが、ほんの一握りだという。教育レベルや生活水準の格差が埋まるのは、まだまだ先なんだろうな。


というわけで、40年後の「今」。
もはや、隔絶された極北の地に暮らす純然たる「エスキモー」は存在しない。
北の大地はロマンだけでは語れない、生々しい社会問題もはらむ世界として、今、我々の目の前に存在するものとなった。

****

しかしそれにしても、イヌイットはほんとうに日本人によく似ている。みんな黒髪だし、背格好や目鼻立ちは普通に日本にも居そうな感じ。どこか、ヨーロッパやアフリカよりも近いところで血が繋がってるんだろうな、と、しみじみ思った。

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