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zoom RSS チェコ王カレル4世と3人の侍従の一週間の物語「カールシュタイン城夜話」

<<   作成日時 : 2013/04/29 00:10   >>

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帯の部分に「カレル4世」の文字がなかったら、たぶん手には取らなかっただろう本。
「カールシュタイン城夜話」は、チェコとボヘミアの王、のちに神聖ローマ皇帝となりカレル4世と名乗った、ある数奇な運命をたどった王の、カールシュタイン城での奇妙な一週間の物語である。

病に侵され(毒を盛られたとされている)、療養のためカールシュタイン城を訪れた王のために、三人の側近たちが毎夜、物語を語る。その物語はすべて女性たちを主題としたもの。ただし、女性の名前がタイトルについていてもすべてのエピソードで女性が主人公なわけではない。また語り手たちは騎士、僧侶、医師と皆、男性たちなので、女性の描写に関しては男性的な解釈を伴う。

物語の構成としては、チョーサーの「カンタベリー物語」の縮小版のような感じで、各エピソードもさほど難しくも示唆に富んでも居ない。だが、この物語はオチの部分で「あっ」と思わせられる。なぜ物語られるエピソードがすべて女性たちに関するものなのか。物語の主題が何なのか。カレル4世の人生と著者の意図するところが重なり、理解した時、断片的な過去でしかなかった物語が突然、色を持って目の前に迫ってくる。

カールシュタイン城夜話
風濤社
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ちなみにカレル4世は、↓のいちばん左にいる王様。

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カレル4世は、王としては非情に有能で、恵まれた人生を送ったように見える。

チェコ王として初の神聖ローマ皇帝となり、現在のチェコの首都でもあるプラハを帝国の中心と位置づけた。学識高い王でもあり、中央ヨーロッパ最初の大学であるカレル大学を創設。貧者への施しのための公共事業でも知られている。
カレル橋のたもとにある写真の彫像(いま飾られているものはレプリカ)の、少しおどけたような仕草からしても、国民に愛されていた王なのだろうということは感じられる。

しかし、一人の人間として見た場合は…。

父と母の不仲が原因で、幼くして母と引き離され、父は百年戦争のさなかにイングランドとの戦いで戦死。若くして即位するも、何度も妻と子に先立たれ四度の結婚を繰り返す。
作中で語られるカレル4世自身の、「女性たちとの出会いと別れ」の物語、「母の影を探していた」「彼女を最も愛していた」などのセリフはフィクションに過ぎないが、彼の数奇な人生を思うと成る程と思わずにいられない。


この作品を通して作者がやりたかったことは多分、カレル4世の人生を描き出すということなんだと思う。
従者たち、そしてカレル4世自身の口から無関係を装って語られている出来事の中で語られる、様々な女性たちの人生。物語がその最後にたどり着くのは、ある人物からの告白である。

このオチはある意味最初からバレバレで読めているとも言えるのだが、ぜひ最後まで気づかないフリをしていただきたい。順番に読み進んで最後にそのシーンにたどり着けば、「ああ、なるほどな」と思えるはず。

この本は、なんとなくでもカレル4世とか神聖ローマ帝国とかに興味持ってる人むけ。あと、巻末にも書かれているが「ナチス・ドイツ占領下で書かれた」というところから来るだろう若干の愛国心っぽい要素が気に入るかどうか。

時折物語の中に暗い影を落とす悲しみの記憶、残酷な告白、王としての試練。しかし誰かに愛されるということは、憎まれながら平穏な人生を生きるより、きっと幸運なことなのだろう。
話が淡々と進むこともあり読む人を選びそうだが、ブラハの町並みを思い浮かべながら読めばきっと楽しいと思う。

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