現在位置を確認します。

アクセスカウンタ

zoom RSS 一冊の本に秘められた物語―「古書の来歴」

<<   作成日時 : 2013/01/28 00:10   >>

トラックバック 0 / コメント 0

物語は1996年、サラエボで、行方不明になっていた古書が発見されたところから始まる。

折しもサラエボは紛争が終わった直後。博物館は破壊され、貴重な収蔵品の多くは灰になっていた。誰もが失われたと思っていた貴重な本の再発見。主人公は、鑑定と修復を依頼されオーストラレアからやってきた女性、ハンナ。彼女の発見した過去の痕跡とともに、秘められた物語が次々と明らかになっていく。

古書の来歴 (上巻) (RHブックス・プラス)
武田ランダムハウスジャパン
ジェラルディン・ブルックス

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 古書の来歴 (上巻) (RHブックス・プラス) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


古書の来歴 (下巻) (RHブックス・プラス)
武田ランダムハウスジャパン
ジェラルディン・ブルックス

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 古書の来歴 (下巻) (RHブックス・プラス) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



これは、実在する古書、「サラエボ・ハガダー」を巡る、その本が作られてから現在までの500年間の物語を描いたフィクション小説。ストーリーのあらすじは先に書いたような内容だが、ぶっちゃけ下巻の「著者あとがき」と、訳者の「訳者あとがき」のほうがよくまとまっていて、しかも本を読んでみたい気にさせてくれると思う。

Sarajevo Haggadah
http://en.wikipedia.org/wiki/Sarajevo_Haggadah

通常のミステリー小説だと、これから起きることを知ってしまうとネタバレになるのだが、この本の場合は、多数の「既に起きてしまったこと」があり、1996年のサラエボに本が「現存している」という結末がはっきりしており、一部が欠損している/サインがある/装丁が付け替えられている 等の事件の痕跡が明らかになっているので、あとがきから読んでも特に問題はない。読者は物語を読みながら、それぞれの痕跡に秘められた過去を順不同に1つずつ旅していくことになる。

物語は年代順に語られるわけではなく、ハンナが発見した手がかりの順番に展開されていく。
年代順に並べなおしてみると、こうなった。


2002年 オーストラリア

1996年 ハンナ(主人公)

1940年 サラエボ(ナチスの焚書から逃れる、エピソード「蝶の羽」)

1894年 ウィーン(再装丁、エピソード「翼と薔薇」)

1894年 サラエボ(ユダヤ人家族が博物館に売却)

1609年 ヴェネツィア(最後のページのサイン、ラグーザへ海を渡る? エピソード「ワインの染み」)

      ハガダーは ダヴィッド→レイラの母→レイラへ引き継がれる

1492年 スペイン、タラゴナ(絵に文章がつきハガダー完成、エピソード「海水」)

      絵がベンヤミンから記述者に売られる

1480年 スペイン、セビリア(絵が描かれる、エピソード「白い毛」)


面白いことに、それぞれの主要エピソードに関わる主人公の半数は女性。意図してそうしたのかどうかは分からないが。それぞれのエピソードに登場する女性たちが非常に魅力的で印象深い。セビリアに売られた奴隷の少女、ハガダーの文章を書いた記述者の娘、本を持って海をわたることを考えているヴェネツィアの裕福な女性…そして古書の保存修復を行う専門家である主人公のハンナ。彼女もまた、本に関わる最新のエピソードの一つを織り成していく。

ハガダー自体は実在し、近代の歴史について(博物館に収蔵された経緯や、爆撃を免れたことなど)は事実もあるのだが、基本的には多くのエピソードは完全なフィクション。しかしそれを忘れそうになるほど、登場人物が生き生きとしていて、本とともに歴史の中を旅しているような気分にさせてくれる。

現在に伝わる一つ一つの遺物に歴史があり、それに関わる者も歴史の一部になっていく。
月並みな言い方だが、非常に奥深く、知的な作品の一つを読んだ。

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

一冊の本に秘められた物語―「古書の来歴」 現在位置を確認します。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる