労働力は日数で売れる…ウル第三王朝の会計簿が面白い

ここまでの流れ

中の人、いろいろあって簿記三級まで勉強する。
→ 簿記はビジネスの世界の共通語だよ! とかいう話になる
→ この知識で古代メソポタミアで会計文書書いてた役人さんたちと会話出来るのか…?
→ そういやメソポタミアの簿記ちゃんと調べたことないな
→ 資料発見

 →見 慣 れ た 人月計算式 が

…うん、あれだ。
ウル第三王朝の簿記…なんか…とってもITに馴染みのある概念使ってる…。


というわけでその簿記の内容。
1日あたり1人どのくらい処理できるかをあらかじめ想定した上で、労働人数×労働日数=総人日 としている。
繰越分も赤字も人日で計算されてるのがミソ。

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収入、支出、差額しかないのでかなり簡素な内容だが、収入も支出も労働日で計算されている。
ここでは粉挽き女1人の1日の労働力が「1」という単位。何でこんなことをするの? という話だが、古代にはお金という概念がないことを想定してみよう。そう、財産は「小麦粉」とか「羊毛」とか「銀」とか、何かモノの単位でしか計算されない。そして物々交換のレートは常に変動するため、変化しない共通項目で会計簿を記載しないと、通年で計算することが出来ない。
その点、人間の労働による生産量は、劇的に増えることも減ることもないので都合がいい。

粉挽き女が1日にひける(大麦の)粉の数が10シラで、粉挽き労働1人x1日分=粉10シラ と単位が決まっているならば、会計簿として成立するのである。

で、こちらは36人の粉挽き女の1年間(30日×12ヶ月)の総労働日数に対する計算。
神殿への奉仕労働のために何人か貸し出してるのも労働日数で計算しているが、人月売りの概念とほぼ同じなので、「ああ…うん」という感じ。炎上してるチームから、臨時で2ヶ月10人で出してくれ、とか言われた時の計算だ…。
挽いてる粉の種類によって生産量が若干変化しているのも面白くて、上質な粉は同じ1人x1日でも生産量が少なくなっている。この当時の社会としては、使い勝手のいい計算方法だったんじゃないかと思う。

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楔形文字の文書は、こういう会計に関わる内容が多い。
今までは数字ばっかりで面白くないなと思ってたけど、当たり前だけど、ちゃんと読み解いて考えられるようになると面白いもんなんだね…。また一つ勉強になりました。
面白くないのは自分が無知なせい…。

なおソースはこちら

古代オリエント史講義: シュメールの王権のあり方と社会の形成 - 徹, 前田
古代オリエント史講義: シュメールの王権のあり方と社会の形成 - 徹, 前田

前半はわりと一般的な話だけど、後半は独自研究っぽい感じで他で見かけない内容も沢山出てきて面白かったです。