現代人も心が痛い訓戒集。「シュルッパクの教訓」

古今東西、「教訓文学」と呼ばれるものを持つ文化圏は多く在る。
たとえば古代エジプトの「プタハヘテプの訓戒」「イプエルの訓戒」「アメンエムオペトの訓戒」など訓戒シリーズや、古代北欧の「オーディンの箴言」など。父親や神など年長者から息子や弟子、後世の若者などに伝える形式となっている。

古代のメソポタミア、シュメール人にもそれはあった。「シュルッパクの教訓」というもので、シュルッパクの王でウバラ・トゥトゥの息子であった人物が息子ジウスドラ(洪水伝説に出てくる)に宛てたものである。シュメール語で書かれたのがおそらく最初で、4千年以上前にはすでにあったとされる。現存するのは「The Abu Salabikh tablet」と呼ばれる版だが、それ以降も複写され伝えられ続けた人気の金言集となっている。

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で、この内容がけっこう現代人にも刺さる…ていうか…ものすごく現代っぽいところがあるんである。

The instructions of Shuruppag: translation
https://etcsl.orinst.ox.ac.uk/section5/tr561.htm

たとえばこのへん

19-20
You should not vouch for someone: that man will have a hold on you; and you yourself, you should not let somebody vouch for you (1 ms. adds:: that man will despise (?) you).


あなたは誰かの保証人になるべきではない。
その人はあなたを支配するだろう。

また、あなたも誰かに保証人になってもらうべきではない。
その人はあなたを軽蔑するだろう。


 めちゃくちゃ
 真 理

ていうか…保証人制度…古代からあったんだ…。
他にも「債務者を邪険にしてはならない」とか、「人を雇う時、その人はあなたと運命をともにする」のような経営者視点のものがあるのが、この教訓がそれなりに身分のある階級向けに書かれたものなんだろうなって感じがある。

あと、「盗みをするな」「悪口を言うな」「奴隷に手を出すな」などはどこの文化圏でもありきたりの内容だが、「お祭りで配偶者を選ぶな」「若い配偶者ほど良いわけではない」とか「ビールを飲むのに躊躇するな(?)」あたりは、なんとなくメソポタミア特有の感じが出ていて面白い。娼婦や奴隷関連の教訓が多いのも特徴的。となりの文化圏のエジプトの教訓文学には、奴隷や娼婦の話は出てこないので、ほとんど存在しなかったか、あまりメジャーではなかったのかもしれない。

エジプトと共通する項目としては、「強きものに手を出してはいけない」とか「権力者には従うこと」といった上下関係重視の内容があるところか。

こういう、長く伝えられる教訓集は、その文化圏の代表的な考え方、世界観が色濃く繁栄されるので、とても興味深いものだと思うのです。