ファラオ・アメンホテプ1世のミイラ、CTスキャンされる。(※実は初調査ではない)

第18王朝のファラオ、アメンホテプ(アメンヘテプ)1世のミイラがCTスキャンされたよ、という話が年末に流れていた。
このファラオは、古代エジプトの黄金時代を築いた第18王朝初頭の王様で、新王国時代の基礎の多くを、特に葬祭に纏わる伝統を築いた人である。

「王のミイラは腕をクロスさせてつくる」とか「墓はピラミッドではなく崖に掘った坑道内にして、墓と葬祭殿を分ける」とか。死後の王を神格化し、葬祭殿で祀るという伝統や、歴代の王たちがカルナック神殿の増改築を行う伝統もそう。つまりは、「古代エジプト」と聞いてみんなが想像するいろんなものの創始者が彼である。「新王国時代の祖」と呼ばれることがあるのもそのため。

(他データここ)

…とかいう話をすればいいのに、いきなりミイラ(遺体)の話から始まって、それしか語られないからモヤモヤするんですよ。
この遺体、元は生きてた人ですからね? ファラオっスからね???


さて、例によってこの報道、色んなところが間違えている。


古代王のミイラを「透視」 年齢や死因など初解明―エジプト
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021122900138&g=int

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まず、この王のミイラが調査されるのははじめて、というのが間違い。
何十年も昔だがX線で調査されている。 CTスキャンのほうが詳細に判るが、CT使ってるのは「最近の流行り」というやつである。1940年代とかはX線が流行りで、X線を使ってミイラ解剖!!とか報道してたのだ。

また、死因は判明していない
当たり前なのだが、ミイラというのは死後何千年も経過した加工済みの遺体である。それを検死して死因なんて判るわけがない…。
人体を断面図にして、体に目立つ外傷や、病気の痕跡が見つからなかったというだけの話であり、要するに「大怪我するような事故死ではなさそう」くらいの、ふわっとした話に過ぎない。
これは全てのミイラにおいて言えることなので、覚えておいてもらいたい… 死因が判ることはあり得ないので、死因判明! の報道はほぼ全てが誇張です。。。
例外はラメセス3世とかかな…暗殺された記録があって、実際にミイラの喉元に致命傷が残っているという特異な状況なので…。


共同通信は、エジプトに何の恨みがあるのかっていうくらい毎回飛ばし報道かましてくるので、ソースに使わないほうがいいっす。
反対に、毎回マトモな(そして妙にエジプトマニアっぽい)報道をしてくるのがBBC。

Egyptian pharaoh's mummy digitally unwrapped for first time
https://www.bbc.com/news/world-middle-east-59808883

この王を含め他の王族のミイラたちも、いったん包帯をとかれたあとに梱包し直されている。その際に高価な装身具などは回収され、後世の王たちの資金源にされた、というのが定説なわけだが、再梱包が丁重であることから、「第21王朝の神官たちは愛情こめてミイラを扱った。決して装身具を剥ぐためにミイラを回収したわけではない」という論調になっている。

しかし、装身具や副葬品が回収されてなくなっているのは事実なわけなので、そこに敬畏や愛情があったとしても、墓やミイラを資金源として見ていたことは変わらんだろうと思う。ていうか、もしただ「敬畏をもって」包み直すだけのつもりだったなら、元々の自分の墓に荒らされずに残ってたアメンヘテプ2世のミイラが包み直される意味とか、その際に首飾りが奪われる理由とかが無いわけですよ…。わざわざ全ての棺を開けて中身の遺体を再埋葬しているのは、必要なもの回収したかったからなんですよ。


という感じで、もーツッコむのも面倒くせえーってなりながら、各種の報道を見てた。
古代エジプト関連の報道は、注目集めてナンボとばかりに毎回、不正確な内容で話を盛りすぎなんですよ。