古代エジプトの書記の三段腹の意味するところ、とは。

古代エジプトの書記坐像は、おなかの皮がたるんで三段腹になっていることが多い。こういうやつ。

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この三段腹について、「太っている=裕福であることを表現している」のような説明をよく見かけるのだが、なんか違うな?? と思った。
太ってたら、下腹が出るから。

そう、これは、そのまま見れば、太っている表現ではないのだ。
全般的に、顔や腕も細く、別にでっぷりしているわけじゃない。そもそも理想の体型に厳しいエジプト人のこと、デブの表現は美しくないと考えて、敢えて全体の印象はスレンダーにしたまま腹だけたるませた可能性はあると思うが、それより「腹の筋肉がたるんでる=重労働してない」という表現のほうが妥当な解釈なのではないかと思った。

古代の書記たちは、座ったままペンと紙を持っていればいい職業だった。
徴税のために各地に出向く必要のある下っ端でもなければ、屋内だけで仕事を完結させることもできる。
父親が息子を諭すために語った「訓戒文学」と呼ばれるものでも、「書記になれ。その他の職業は重労働で大変だぞ。」と繰り返し語られているように、現代でいう「デスクワーク」の職業なのだ。

だとすれば、ペンを持つ腕はともかく、腹や足の筋肉は緩む。
ホルスとセトの戦いの神話でも、書記の神トト神が「座ったままの軟弱者」とセト神に悪口を言われている。これらの坐像は、「書記」という職業に対する「重労働しなくてもいい」というイメージの表現ではないか、と思うのだ。