悪の宰相は(たぶん)お仕事めっちゃ忙しいし、二人セット。古代エジプト・新王国時代の政治体制

古代エジプトの政治体制がどうなっていたか、というのは研究が一杯でてるんだけど、わりと日本じゃ知られてないっぽいなぁ。と思ったので、メモしておきたい。

*これが体制表(出典元: ファラオの生活文化図鑑/原書房)
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重要ポイント:エジプトものの創作でよく使われる新王国時代には宰相は二人いる

これは上エジプトと下エジプトで分けてそれぞれに宰相置いてたから。日本で言うと右大臣・左大臣みたいな感じ。なので、悪の宰相とか出てくる場合、もうひとりのほうどうしてるの? という観点が必要になる。

また、宰相は王に継ぐ力の持ち主だが、現代の役職名で言うと首相で、一般的な行政のほぼ全てを担当するため、忙しいし、ぶっちゃけ王宮にいつもいるわけではなかったと思う。
宰相は毎朝、王に報告を上げるため謁見していたとされる。いわゆる朝ミーティングである。
しかし逆に言うと、朝ミで情報共有し終わったら、その場から退出して各々の職場に引っ込んでたはずなのである。

彼のお仕事の重要な部分には、税金の取り立てが挙げられる。上エジプトと下エジプトで別れているのも、一人だとエジプト全土の税金の管理が出来ないからなのだ。(ちなみに古代エジプトは42の州に分けられていたが、これは時代を経るごとに州が増えていった結果。人口増加と開拓地の増加によって、古王国時代には一人だった宰相を増やさざるを得なくなったのだと思われる)

これだけでも結構大変だが、税金=穀物の取り立てのために、水路や運河の管理も必要だ。農地にまつわる揉め事(土地紛争)、相続に関する裁判も管理の範囲内。また、家畜も財産のうちなので、家畜の頭数カウントも必要。村ごとの人数など国勢調査も数年ごとに実施されていた。
さらに各地方のお祭り(豊穣祭りが多い)や、地方ごとに建てる王の肝いりのモニュメントの管理までしていたらしい。


宰相の詳しいお仕事については、このへんを参照してほしい。

Ancient Egyptian Vizier
https://www.worldhistory.org/Egyptian_Vizier/

 農業 - 手続き、慣行、土地紛争の解決
 財務 - 課税、国庫、国勢調査
 司法 - 裁判官と警察署長の任命
 軍事 - 将軍の任命とその部下の選択の承認
 建築 - 王の記念碑と墓の計画と建設
 内政-道路の計画・建設、堤防・ダム・運河の修理
 宗教 - 適切な儀式や伝統の維持、大司祭の任命

うん、めっちゃ大変だなこれ。ワンオペってレベルじゃねぇ。
もちろん部下の官僚はいたにせよ、これだけの領域をカバーしないと務まらないってマジ大変。

宰相ってなんかこう、な●う系の小説とかだとやたら悪役にされてるけど、基本的に、すっげえ優秀な人じゃないと務まらないので、単純な悪役にするには勿体なさすぎる役職だと思うんですよ。もっとこう…なんていうか…悪巧みするにも深謀遠慮なやつじゃないと相応しくないというか。

また、宰相は独特の服装をしていて、腹にバスタオル撒いたみたいなのが正装になる。
ヒョウの毛皮纏って出てくるのは宰相ではないのです…たぶんそれは高位神官だから日本で言うと「大僧正」とかだね…

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ある程度ヒマそうにしてて、いつも王の側にべったりな立場がほしいなら、大臣/執事といったポジションだと思う。
大臣/執事の役割は、現代でいうと「宮内庁長官」に近いと思われる。
王家の別荘地の管理やハーレムの管理、王から外国に送られる書簡の手配などは彼らが実施する。一般的に、宰相は王宮内の政治には関わらない(というかその余裕はない)ようだ。

また、神殿の管理に関わる部分では神社庁みたいなノリで、かつ政府直轄の組織があり、そちらに任されていたようだ。

あと軍人も、「将軍」が一人で全部仕切ってたわけではなく、これも上下エジプトそれぞれに責任者がいて、アスワン以南のヌビア(クシュ・ワワト)や、アジアと接する地方(北の国境)などは別の責任者がある。

国が大きくなると、管理体制もがっちり組まれるようになるのだ。ていうか、このくらい体制組まないと回らないよね。
表に出てこないところでは、各州ごとに下っ端役人がいたりして、国家公務員はそれなりの人数いたと思われる。


…という感じで、政治の体制を想像すると、より具体的なイメージがつくのではないかな。とかなんとか。