ホモ・ナレディは埋葬の儀式を行ったかどうか、という議論の行方は

そっかまだ議論してたんだな…。という感じ。

2013年に発見され、2015年ごろから議論になっていた南アフリカで発見されたヒトの亜種「ホモ・ナレディ」の骨について、見つかった場所が洞窟の奥の奥だったことから、発見者たちは「仲間を埋葬した証拠だ」と言っている。それに対して、懐疑的な学者たちは「その証拠が薄い」と言っている。

骨は全て洞窟の奥のとても狭い場所で見つかっていて、現在では大人は細身の女性でもなければとても入れないような場所。
そんな場所に成人と子供の骨が同時にあり、動物が運び込んだ形跡もないことや、洞窟に他に入る場所がないことから、死者の遺体を同族たちが故意に運び入れたのではないか、と言われているわけだ。

A child’s partial skull adds to the mystery of how Homo naledi treated the dead
https://www.sciencenews.org/article/homo-naledi-child-skull-hominid-cave-discovery

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240,000-year-old 'Child of Darkness' human ancestor discovered in narrow cave passageway
https://www.livescience.com/child-of-darkness-homo-naledi-discovered.html


ホモ・ナレディについては以下を参照。

ホモ・ナレディの生きた時代が測定される、現時点では「33万~23万年前」
https://55096962.at.webry.info/201705/article_13.html



ただこの議論、どうも最初っから答えありきで発見者側が無理しすぎだと思うんだ…。

まず仲間を埋葬するのだとしたら、人ひとりが入り込むのも精一杯のような細い洞窟を、死体を引きずって奥まで入り込むことはしないと思う。(どう頑張っても、持ち込む間に死体に傷がつく。死者を悼む気持ちがあるのなら、それは逆に冒涜となってしまう行為)

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/c/051100041/?SS=imgview&FD=1707407933
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それよりは、何かに怯えて逃げ込んだまま迷うなどして出られなくなったとか、病気で力尽きたとかのほうが有り得ると思う。
また、他に洞窟に入り口はない、というのが前提となっているが、そもそもが彼らが死んだのは20万年以上も前の話である。1万年前の地形の再現だって難しいだろうに、20万年ずっと地形が変わらなかったと考えるのは微妙である。1000年に一度の天変地異だって、20万年あれば20回は起きる計算になるんだから。

彼らが死者を悼む気持ちや、埋葬の儀式を行っていた可能性は、完全に否定されるものではない。
だが、洞窟の奥から遺体が見つかっていることをもって、その証拠とするのは困難だ。

それに、「死者を悼む」にしても、どのレベルで悼むのか、という議論がある。

猿の母親は子供が死んでもしばらくは手放さないが、果たして死をいたんでいるのか、死を理解できていないのかは意見が分かれるだろう。
狼は仲間が死ねば遠吠えするが、それが死を悼む行為なのか、仲間を失った漠然とした不安なのかまで断言はできないだろう。
死体を埋めることについても、必ずしも死を理解している必要はなく、臭い、うじが湧く、天敵に居場所が見つかってしまう、などの理由でも隠すことは有り得る。

最初からロマンチックなストーリーありきで事象を組み立てようとすると、何か大事な本質を見失ってしまうと思うのだが、どうだろうか。