北アメリカ先住民社会とイケニエの儀式。人身御供はインカやアステカだけじゃないよという話

天文学の本を読んでいたはずなのに、そこに出てきたネイティブ・アメリカンの一部族、ポーニー族のイケニエ儀式の詳細な描写が気になって調べはじめてしまった…。

ポーニー族というのはアメリカ中部のネブラスカ州あたりに暮らしていた人々。
近隣の大部族、スー族とは敵対関係に合ったため、ヨーロッパからの入植者に協力してスー族を追い払わせたという、いわば侵略者側についたインディオである。そのため先住民社会からは「裏切り者」扱いされることが多いようだが、ぶっちゃけポーニー族からするとスー族も白人も等しくよそ者なので、自分たちにとって得なほうを選んだだけだったりする。「インディオ」とか「先住民」とかの括りで全部まとめてしまうのが変なのだ。

さて、そのポーニー族のイケニエの儀式だが、明けの明星への捧げものとして少女を処刑していたという。
木に縛り付けた少女を殺し、皆で矢で射た上で死体の血を大地に吸わせる、というなかなかハードな儀式だったよう。殺された少女は天に昇り、星となって人々を見守る。また大地に吸われた血は豊穣をもたらす。

ポーニー族にとって明けの明星が大事な星だった、といいうことなのだが、この儀式のやり方がマヤやアステカに良く似てるなぁと思ったのだ。天体の活力が衰えてくると人間を捧げて力を取り戻させる、という概念も一緒。
違うのは、赤道に近い中米地域では捧げる先が太陽、温帯の北米では金星、というあたりか。これは天体の見え方や気候も関係していそう。

※参考
最後にイケニエの儀式が行われたのは1838年らしい。

Pawnee_Sacrifice.jpg

http://www.americancowboychronicles.com/2015/10/the-pawnee-indians-morning-star-ritual.html


同じような儀式は、北米の他の地域でも見られる。たとえばイロコイ族だ。ハワイでも行われていたという。
中米のマヤ・アステカ、南米のインカに見られるイケニエの儀式は北米のあちこちの部族で見られるもので、決して特定地域に集中しているわけではない。おそらく最初に新大陸に到達した人々の間で広く共有されていた概念だったのだと思う。(ただし先住民の全てがイケニエを行っていたわけではなさそう。儀式を行わない部族もある。これは風習が早く廃れてしまったのか、元々やっていなかったのかは不明)

面白いなあと思ったのは、儀式のやり方や血を捧げる対象は違えど、新大陸におけるほとんどのイケニエ儀式は天体に紐付けられているように思えたことだった。そして、人間の血が重要視されている。おそらく遥か昔から続いてきただろう思想が、19世紀まで継承されていたのは実に興味深いことだな、と思った次第。