”楼蘭の美女”は古代人の末裔か。タリム盆地の「西洋人風」のミイラ、ゲノム解析で古代からの土着民と判明

ウイグル自治区、タリム盆地で見つかっている「西洋人風」と言われていたミイラが、DNAの分析結果から、実は最終氷期の終わる以前から住み続けていた先住民、いわば「古代人」の末裔であることが明らかになった。日本で有名な「楼蘭の美女」もタリム盆地から見つかっているので、彼女のことをイメージしてもらうとわかりやすいと思う。

見た目や生活様式から、後世にヨーッロッパ方面から渡ってきた遊牧民ではないかとされていたのだが、実は逆に、他の住民が移動したり混血したりしていた時代でも土着のまま住み続け、古代の風貌をそのまま残していたという話だった、というわけだ。


The Surprising Origins Of The Tarim Basin Mummies
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2021/10/the-surprising-origins-of-tarim-basin.html

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元論文

The genomic origins of the Bronze Age Tarim Basin mummies
https://www.nature.com/articles/s41586-021-04052-7

比較研究されたのは、隣接するジュンガル盆地で出土した紀元前3000~2800年頃の5人と、タリム盆地で出土したの紀元前2100~1700年頃の13人のゲノムデータ。
位置関係はこうなっているらしい。

http://www.arukazan.jp/endo/web/environment/KosaNativePlace/JungarBasin/photo/TarimJungarMap.gif
TarimJungarMap.gif



その結果、隣接するジュンガル盆地の住人は本当にヨーロッパ方面(正確には黒海沿岸あたり)から移住してきた祖先と混血しているようで、タリム盆地の集団だけが古代の遺伝子のまま孤立していた、と出たそうなのだ。

タリム盆地の集団は、遺伝的なグループでいうと最終氷期の頃に存在した古代北ユーラシア人(ANE)になり、現在ではシベリアと北アメリカに分布している人々とつながっているという。アメリカにいる人々は、最終氷期の終わり頃にシベリアの母集団から分裂してベーリング海峡を渡っていった集団の子孫なので、その分裂以前の親戚、ということになる。

結果はかなりキレイに出ている。今まで言われていたヤムナヤ文化との繋がりやイラン高原との繋がりは全然無くて、祖先を辿っても本当に、ずっとそこに住み続けていた人がほとんど、っていう状態。これはとてもおもしろい結果だと思う。文化的には近隣の集団と類似するところがあるのに、遺伝的には固定、つまり柔軟に文化を取り入れながらも、人間の流入や、異なる集団との通婚は、ほぼ無かったことになる。

要因として、タリム盆地の環境がかなり厳しいものだったため、現地に適応している人以外の流入がほとんど無かったのだろうと推測されている。

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ケルト文化の影響を受けていながら、遺伝的にはケルト人とほぼ関係無かったブリテン島やアイルランドのパターンとは逆なんだな…って気がする。さすがにこれは、ゲノム解析まで出来るようになった現代じゃないと分からなかったと思う。




この謎のことはずっと気になってて、ちゃんと解析すれば何科出るんじゃない? とは思ってたけど、この結果は意外だった。
最近ほんと古代人のDNA解析があっちこっちで行われてて、日々新しい発見があるので、なかなか追いかけるのも大変。あんま興味のないジャンルなんかだと、普通に置いていかれてそうな気もします…。