人類が海を渡るために必要な技術や成功率について

昔から、人類がどうやって海を渡った先に拡散していったのかを不思議に思っている。
陸路なら歩けばいいだけなんだけど、海が間にあると、泳ぐか、イカダのようなものが無いとムリ。ぐうぜん流れついただけだと、一世代で全滅してしまう可能性が高いため、まとまった数で意思を持って「移住」することが必要だと思われる。

最近の研究では、アフリカからアラビア半島への渡海もけっこう頻繁に行われていたらしいことが分かってきていて、余計に「どうやって渡ってたんだ??」というのが謎になってきているのだ。

人類、アフリカを出たり入ったり。アラビア半島の砂漠から数々の証拠が見つかる
https://55096962.at.webry.info/202109/article_5.html

で、ちょっと論文検索でごそごそ探してみたら、面白そうなのを見つけたのでメモしておく。

Discovering the opposite shore: How did hominins cross sea straits?
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0252885

シミュレーションで色んな条件を設定して、海を渡る行為がどの程度成功するか、どんな技術が必要か、などを推測している。

A 漂流、単に浮いているだけ
B 何かにつかまって泳ぐ
C 何も道具を使わず泳ぐ
D イカダ

journal.pone.0252885.g003.PNG

ここに、水温や上陸人数などの条件を加えたシナリオを設定している。
なかなか面白かったのは、A~Cだと身体の大部分が水につかっているため、水が冷たいと低体温症で死ぬということだ。これは「なるほど」と思った。

目の前に島が見えてて、時間をかければ辿り着けそうな場合でも、寒すぎると死ぬ!
つまり海水面が下がっている氷期でも、イカダ作れないと海は渡れないんだね。距離さえ短ければ成功率が上がると思っていたが、そんなに単純な話でもなかった。

またイカダで移動する場合は、保存食づくりと真水を保存しておく容器がないとダメ。特に水の確保は重要で、何日もかけないとたどり着けない場所は脱水症状で死ぬ。 か、革袋か土器の開発が先…ハードルが…ハードルが高い…!

10キロ越えると移住の成功率が下がるのは、短時間で渡れる場所じゃないと耐えられないからみたいなのだ。
アフリカ~アラビア半島の間やジブラルタル海峡なら、現代でも泳いで渡る人がいるくらいなのでギリギリ大丈夫だが、たとえばシチリア島に渡ろうとかすると、前提となる技術ハードルがとてつもなく上がるということ。

そして、「見えない場所に渡る」というのは、ほぼ不可能に近いなと思った。
この場合の「見える」は、実際に陸地が見えていることを指すのではなく、たとえば、沖合の雲の形や、渡り鳥の飛ぶ方向などから、行く手に陸地があると推測できる知識のことを言う。「知覚の範囲が狭いか広いか」は、かなり重要なポイントとなってくるようなのだ。

おそらく、初歩のイカダを作れるようになるのが最初だろう。
そしてイカダに乗って沖合に出れば、陸地からは見えないものも見える可能性がある。
陸地から15キロのところにある島は、陸からは見えなくても、沖合2キロまで行けば見えるかもしれない、という感じで。

このシミュレーションは個々人の能力や偶然要素をあまり重要視していないので、現実に当てはめるのは難しいと思うが、少なくとも、「海を渡る前提としてどんな条件が必要か」という部分はとても参考になる。そっか保存食か…。保存食づくりのスキルを最初に覚えないと長距離航海出来ないし、海を渡ったあとすぐに食べ物が見つかるとも限らないから、持っていかないと死んじゃうよなあ…。
海渡れても、その先で絶滅しちゃった集団も、それなりに数いたと思うんだよ。


というわけで、果たして人類はいつ、どうやって、具体的にどんな技術を身に着けてそれを成功させたのだろうか。分からないことばかりが増えていくのであった…。

(特に5-6万年前にオーストラリアに渡ってそのまま居住し続けてる人たちとか、一体どうやったのか。あれほんと謎)