チャタル・ヒュユク遺跡に見る定住生活の歴史。アナトリアの定住は「自宅+宗教施設」の複合タイプだった

たまに考古学の記事が載ってるから気になる時は買ってる日経サイエンス、今月はチャタル・ヒュユク(チャタル・ホユック)が載ってたので手に入れてきた。
トルコのアナトリア地域にあり、人類が定住生活を始めた初期の遺跡だ。「最古の都市」と呼ばれることもある。

日経サイエンス2021年9月号(特集:宇宙幼年期の謎/人を襲うカビ 真菌感染症)
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その都市について発掘や研究が進み、最近は解釈の傾向がちょっと傾向が変わってきている。
最初の発掘者メラートさんなどは、この都市を巨大な「神殿施設」と見なしていたのだが、最近はふつーの民家の集合体、かつ、特別な神殿があったといううよりは、各ご家庭に神棚のような宗教施設を併設していたのでは、という方向である。集落から宗教的な遺物がたくさん出てくる、それは確かなのだが、生活用品とごっちゃに出てくるのだ。

これは、現代の日本の家庭が遺跡になった場合を想定すると分かりやすい。鍋と御札が一緒に出てきたら、台所の火の神様、つまり台所という生活空間に併設された「神棚」という神域だったのだと理解出来る。

出てきた遺物を一部だけ切り離して解釈しようとしてはいけない。出てきた場所や、一緒に出てきた品とともに総合的な解釈をしないと答えにたどり着けない。
現在では当たり前のように言われる話だが、半世紀前の考古学では、まだ一般的な概念ではなかったのだろう。

また、アナトリアで定住生活をはじめた初期の人々が何故か家の床下に死体を埋めていた、という話も出てくるのだが、実はむかし講演会にでかけて講演者に質問をしてみたことがある。床下に人間なんて埋めたら臭いし、疫病リスクもあるんじゃないかと思ったのだ。
そうすると、いくつかの点がわかった。

・集落から離れた場所に埋めると野犬に掘り出されることがある。
 →定住するようになったからこそ、死体の損傷が気になるようになったと思われる
 →もしくは子供の遺体をずっと手元においておきたい親心

・床下に埋める場合はだいたい台所、床を漆喰で固める
 →いちおう匂いが気にならない工夫はしていたのかも

家庭内に神域を設ける考え方と、家庭内に埋葬をする行為とは、おそらく繋がっているのだと思う。家の中=自分にとって大事なもの全てがある場所。まさにホーム・スイート・ホームだ。




さて、この遺跡については、初期の発掘者であるメラート氏に対して、近年、とんでもない疑惑が持ち上がっていた。

世界遺産チャタル・ホユック(チャタル・フユック)に関わる捏造疑惑が発覚
https://55096962.at.webry.info/201803/article_13.html

チャタル・ホユック、「世界最古の地図」と呼ばれた壁画の解釈問題が再燃
https://55096962.at.webry.info/201803/article_20.html

遺跡自体は本物だし、発掘されたものも問題ないのだが、その中に自分の解釈に沿う偽物を紛れ込ませようとした形跡とか、故意に解釈を歪めた疑いが持たれている。少なくとも、死後に遺品の中から出てきた文書や壁画の一部は捏造品で確定している。

はっきり捏造と分かる場合はいいのだが、解釈を歪めた部分に関しては後から書き換えるのが大変だろう。
たぶん今回の話もその一部で、過去のあまり良くなかった研究成果の訂正過程だと思うんだ…。

時代によって分析の技術や傾向が変わっていくのも、研究者の方針によって見えるものが違うのもよくあること。まあ…なんかこう…神秘的で壮大な解釈してみたくなる気持ちもわからなくはないんだけど、そっちに走ると考古学ではなくファンタジーかオカルトの世界になっちゃうんだよね…。