植物たちの生存戦略、5億年の歴史。「植物たちの戦争」

何となく手にとってなんとなく読んでみたらめっちゃ内容が濃くて壮大な話だった。
動物同様に、植物たちも様々な病原菌と戦い、日々を生き抜いている、という話である。

植物たちの戦争 病原体との5億年サバイバルレース (ブルーバックス) - 日本植物病理学会, 日本植物病理学会
植物たちの戦争 病原体との5億年サバイバルレース (ブルーバックス) - 日本植物病理学会, 日本植物病理学会

植物も病気になることは、園芸や農業をしている人にはおなじみだと思う。いもち病やうどんこ病、さび病に馬鹿苗病。いくらかの名前は、どこかで聞いたことがあるはずだ。病原菌は植物の表面に付着して、なんとか侵入しようと試みる。そのままでは表面が固くてなかなか入れないので、細胞壁を破壊するとか、呼吸のために開いている気功とかから侵入していく。それを植物側は様々に迎撃していく。アポトーシス機能で、感染した部分を自ら切り離すなどは序の口。ウイルスが増える際に生成されるRNAを検知して、RNAの切断をして無効化してしまうという、動物の持つ免疫機能にも似た複雑な機能まで搭載されているというから驚きだ。

最初は「植物ってそんなにアグレッシブに病原菌と戦わないでしょ」と思ってたけど、全然そんなことなかった。かなりアグレッシブなやつだ…まさに戦争だ…。病原菌側が進化していくのと同時に、植物側も進化していく。生存のためのガチな戦いである。まさか、知らないところでこんなに戦っていたとは思わなかった。そのへんの雑草も頑張って生きていたんだな…?

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あと農作物と病気の関わりとして、二十世紀ナシだけがかかる病気のこと、イネの病気の研究に日本人研究者が貢献していること、有名なジャガイモ飢饉についてのトピックスや、病変した部分を珍味として食べる事例としての「メキシカン・トリュフ(ウイトラコチェ)」など、歴史学・人文学としても面白いネタが含まれている。

また、クリスマスシーズンによく売られているポインセチアの木が、実はファイトプラズマに人為的に感染させて美しい樹形を作っているとか、病原菌の研究の過程で菌が生成するホルモンとして発見されたジベレリンが、種無しぶどうの生産に貢献しているとか、植物と病気の関わりの研究から新たな農産物、農業技術が発生しているということも分かり、ものすごく勉強になった。
植物の病気を研究するというのは、単に農作物が病気にかからないようにするだけではなく、どういう仕組で植物が成長するのか、というメカニズムの部分にも深く関わっているのだ。


内容がかなりガチな作りなので、一般人にはとっつきにくいところもあると思うが、判るところから丁寧に読み解いていけば面白いはずだ。
我々の食卓は、こうした見えない研究と、長年の知識の積み重ねによって支えられていると実感できるはずだ。
研究者のみなさんありがとう、ありがとう。