古代エジプト人もピタゴラスの定理に相当する何かは知っていた。古代世界の数学事情

わりと最近、古代バビロニア人がピタゴラスの定理を知っていて応用もしていた! みたいな話が大々的に報じられていたけれど、うーんいや、それ別に新発見じゃなくて昔からあったよねえ…と、ちょっと思った。
数学問題の解き方として数式などが紹介されているけれど、どう解釈すればいいのかが悩ましく、解釈によって古代人がどこまで理解していたかの説が変わるというあたりで…。


★バビロニアの数学タブレットについては以下を参照

プリンプトン322とシュメール/バビロニアの数学
https://55096962.at.webry.info/201709/article_15.html


で、これとほぼ同じくらいの時代の古代エジプトにも、実は同じようなピタゴラスの定理に相当する考え方を理解していただろうという数学パピルスが存在する。それがこちら、ベルリン・パピルス6619というものだ。

★Berlin Papyrus 6619

https://en.wikipedia.org/wiki/Berlin_Papyrus_6619
Papyrus_Berlin_6619.jpg


書かれたのは中王国時代で、だいたい紀元前1800年前後だろうとされているので、ほぼプリンプトン322と同じくらいの時代になる。ただ、あまりにも断片的なため解釈が難しく、「おそらくピタゴラスの定理に相当する何らかの知識は持っていただろう」くらいの言い方をされている。
書かれている数学問題は以下のような内容で、現代風にxとyの方程式に置き換えれば答えが出せる問題になっている。

"the area of a square of 100 is equal to that of two smaller squares. The side of one is ½ + ¼ the side of the other."

エジプトとメソポタミアは、古代史的には別の地域として扱われるが、隣同士なのでけっこう知識の融通をしていた痕跡が見られ、ほぼ同時に同水準の文化レベルの品が残っていることが多い。数学や天文学の知識は特に顕著だと思う。
なので、本当は「古代のメソポタミア人は既にピタゴラスの定理を知っていた! ナ・ナンダッテー」ではなく、「古代オリエント世界ではギリシア人の使った数学知識の原型が広く存在していましたよ。別にゼロから数学知識をひねり出さなくても基礎はできてたんですよ。」というだけの話だと思う。

ていうか西洋文明が古代ギリシャに始まると思ってる昔の古典主義者でもなければ、わりと当たり前な話だとも思う。


あと多分、これらの知識は、畑の面積を計算してとるべき税金を計算するなどの実務にも多く使われていたのだと思われる。
数学問題という形式で知識が残っているのは、書紀やお役人に問題で学習させて、現場でその知識をバリバリ使ってもらうためだからだ。必要があって生み出されたものだとすれば、既に洗練された形になっているのも当然と言える。