かつて盛んに使われた薬品、DDTとその後の影響についての研究

久しぶりに「沈黙の春」を見てみたら、表紙が新しくなってだいぶ印象が変わってた。
というのはさておき、「化学薬品の蔓延によって自然界がダメージを受けている。特定の生物を殺す強力な薬品は、他の生物の体にもよくない。」という話が言われ始めた初期の本で、古典的な一冊である。読んだことある人もいれば、読んでないけど概要を知っている人も多いだろう。

沈黙の春(新潮文庫) - レイチェル・カーソン, 青樹 簗一
沈黙の春(新潮文庫) - レイチェル・カーソン, 青樹 簗一

この本で何度も繰り返し警告されている薬品がDDT。かつては公衆衛生の切り札として多用され、日本ではシラミ撲滅のため子供の頭にふりかけることさえあったという薬品だが、現在では、人体に被害をもたらし、長期的なデメリットを生み出すことが知られている。その一つが「女性は肥満になりやすい」である。そしてDDTが多用された1950年代末~1960年代半ばにかけて妊娠していた女性の子孫を追跡調査した結果、影響が孫世代まで及んでいるらしいことが分かったという。

たぶん元論文はこれ。

Grandmaternal Perinatal Serum DDT in Relation to Granddaughter Early Menarche and Adult Obesity: Three Generations in the Child Health and Development Studies Cohort
https://cebp.aacrjournals.org/content/30/8/1480

なぜ孫まで影響が出るかというと、

母体がDDTに曝露(身体に浴びる)すると胎児にも影響が出る。
 →胎児が女児の場合、出生前に卵細胞は既に体内で形成されている。
  その卵細胞にDDTによる変異が起きる
 →卵細胞に変異を抱えた女性から生まれた女児(孫世代)にも影響が出る

という流れらしい。
つまり女性で3代続いた場合だけの追跡調査で、孫世代の卵細胞には問題がないとすれば4世代目でDDTの悪影響が消えるのではないかと思われるのだが、孫まで影響が出るとはなんとも恐ろしい薬品だなと思った。

ちなみに女性の場合、DDTによる悪影響は主に以下のところに出るらしい。
 ・肥満体になりやすい
 ・早熟で所長が早くなりやすい
 ・乳がん発症率が高まりやすい

他の影響としては以下を参照。
https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu01730360149
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よくこんな薬を使ってたな…という感じだが、殺虫剤としては確かに優秀なのだ。環境や生物の体内に残留して悪さするのでなければよかったのだが。

化学薬品の多用には、人間の身体に影響するのみならず、土地に残留し続けるという問題もある。今も影響を受けている地域/生物はあると思う。
その反動として発生してきたのが無農薬至上主義などの極端な薬品嫌いだと思うが、私は極端から極端に振れるやり方は支持していない。というか、1か0でしか判断出来ないのは、判断能力がないので加減することが出来ません、考えるの面倒くさいんで簡単な答えだけほしいです。と告白しているのに等しい。

過去の過ちを振り返ることも継続調査をすることも必要だが、いたずらに恐れても始まらない。この研究が、薬品の上手な使い方に繋がってゆくと思いたい。