ソマリアとプントランドの潜入記。「謎の独立国家ソマリランド」

なんとなくオススメに出た本をポチって読んでみた。ソマリアとソマリランド、そしてプントランドについての本である。
「修羅の国」という情報が広く出回っているので、まず日本人で行く人は滅多に居ないと思う。

謎の独立国家ソマリランド - 高野秀行
謎の独立国家ソマリランド - 高野秀行

しかし中の人は実は、このへんわりとよくグーグルマップで見ていたりする。
何故かというと、去年からずっとサバクトビバッタの大発生でこの地方が入っていたからだ。そして、修羅の国とか治安が悪いとか言われているわりに、バッタ駆除のためのヘリがけっこう飛ばされていて、「何だ、全然マシじゃん。」と思っていた。(ちなみに無政府状態の対岸のイエメンは、初期はガチで駆除が出来ていなかった。空港にロケットランチャーぶちこまれて離陸も出来ない)

そして、プントランドという名称が古代エジプトの「プントの国」から来ているという知識も持っていたので、プントランドの位置とか基本情報だけはなんとなく知っていた。本にも書かれているとおり、古代エジプト人がプントと読んだ国が現在のプントランド近辺にあったかどうかは不明なのだが、古代エジプト語の名前を持つ国が現代にあるというのは、何となくニヤニヤしてしまうではないか。まあ、そんな感じである。

この本はそんな、一般の日本人にはあまり接点がないであろう、海賊だらけのアデン湾に面したソマリア地域に実際に行ってみて、なぜ内戦状態が続いているのか、なぜその地域の中でソマリランドだけが安定しているのか、どんな風に海賊家業が行われているのか、といった内容を確かめていくという内容になっている。知らないことばかりなので「へえ、そうなんだ…?」みたいな感じになる。

ていうか、大黒屋からソマリランドに送金出来るのとか知らなかったぞ。何故。

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ちなみにソマリランドやプントランドは国際的に認められている国ではないので、オフィシャルな地図には出てこない。
世間一般的には「ひとつのソマリア」ということになっている。ただ、氏族の違いや別々の政府が立っていることなど、既に実質、別の国なっているため、実態と建前が違う状態が続いている。

面白かったのが海賊家業のやり方とか見積もりについてだ。
ソマリア海賊といえば、すしざんまいの社長がソマリア海賊を減少させたという逸話が有名だ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/dragoner/20160121-00053658/

さすがに、すしざんまいが雇ったことが海賊行為を撲滅した、までは言いすぎだろうが、減少に一役買ったというのは本当らしい。何故なのか、というのも本を読んでいると見えてくる。

 儲かれば何でも良いのだ。

元々遊牧民が陸地で裕福そうな人を捕まえて、その一族に身代金を請求していたのが舞台を海に変えただけで、海賊というのもソマリアの伝統的な稼ぎ方の一種だったらしい。
実際に海賊するにあたって、海賊したい元請けの人は個人事業主で兼業海賊をやっている漁師を雇って、ランチャーや船をレンタルして、身代金の交渉のための通訳も用意する。そして狙い定めて獲物のやって来たところを捕まえて、流れに従って身代金交渉。うまくいかない時は長老とかに仲介を頼む。「ビジネス」なので絶対海賊しないとダメというわけではない。漁師のほうは、海賊として雇われるか、マグロ漁船として雇われるかだけの違いである。

口利きをしてくれる人のツテと、レンタル代金などが払えれば、新規参入者でも即・海賊が出来てしまうというカジュアルさが、なんというか、不思議な感覚だった。


それと、そもそもソマリアが分裂する原因を作ったのがいつものイギリスさんで、もともとソマリ人には長老が口利きをして氏族間の紛争を解決するという伝統があったのに、イギリスさんが植民地にした時にその伝統をぶっこわした地域が修羅の国になってしまった、というのは、「ああ…いつもの大英帝国だ…」って感じで遠い目になってしまう。イギリスが余計なことせず長老による解決システムが生き残った地域、もしくはイタリアが植民地にした部分は、わりと安定しているようだ。イギリスは一度焼かれたほうがいいと思う。(ヘルシング脳)

護衛つきでないとホテルを出られない、とか、一緒に取材していた記者が後日暗殺された、とかの生々しい話もありつつもも、全般的にそれなりにマイルドに仕上がっているので、読み物として面白い。情報が十年前のものなので政治や海賊の状況はかなり変わっていると思うが、知らない世界を覗き見るにはオススメの本である。


なお、中の人はエチオピアいった時にそのへんの畑で1回だけ朝摘みカート食べさせてもらったことがあるのですが、あれは…なんていうか…食べておいしいものではないっすね…。。。慣れれば覚醒作用とかでパァってなるのかもしれんけど。めちゃくちゃ葉っぱなので…。