古代のペスト菌はそんなに凶悪じゃなかった。という説が強化される

最近はコロナ関連研究が注目を集めていることもあり、中世にパンデミックを起こしたペストに関する研究もちょくちょくおさらい記事のようなものが出ている。そんな何でこれは古代人の骨からペスト菌を回収した、という話で、パンデミックが起きるよりはるか以前の5,000年前のものだ。

初期のペスト菌は、実は後々のものより感染力や毒性が弱かったのではないか、というのが、最近の研究である。


The discovery of the bacteria in a 5,000-year-old hunter-gatherer suggests it took time for plague to become the fearsome disease we know today.
https://gizmodo.com/scientists-say-theyve-found-the-earliest-case-of-the-pl-1847193175

元論文
A 5,000-year-old hunter-gatherer already plagued by Yersinia pestis
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(21)00645-8

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分析されている骨はラトビアで19世紀に発見されていたもので、狩猟民。


★中の人が把握出来ている、ここのまでの流れざっくり

・古代人の骨からペスト菌の痕跡が回収され、思われててたより古代から感染例があったこと判明
・古代人の間でパンデミックが起きたことがあるのでは? それが人類のボトルネックになってたりするのでは?
・詳しくゲノム解析してみると、古い系統は後々の時代に悪さしてた特性を持っていない
・ペスト菌にも色んな系統があったことが判明、初期はそれほど怖くなかったのでは

<<今このへん>>

初期のペストは弱毒性のものがあり、既に絶滅してしまった系統もある、ということが分かってきたのがここ最近のこと。古代人の遺骨に残された病原体のゲノムを回収できる技術が出てきたのがそもそも最近なので、これは技術力の向上による研究範囲の広がりの恩恵だと思う。

新石器時代に疫病で大量絶滅がおきた、と考えている人もいれば、疫病は局地的なもので全体には当てはまらないのでは、と考えている人もいて、このあたりは今のところ定説なし。

元論文中に「ymt gene」という単語が出てくるが、これが問題の、ペストの伝染に関わる遺伝子のことらしい。

ペスト菌 DNA の進化から見たペスト流行史
http://jsmh.umin.jp/journal/64-2/64-2_ip28.pdf

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この遺伝子が欠けているということは、この系統のペストはノミやネズミを介して伝播しなかっただろうということになる。最終的に、ymt遺伝子を獲得した系統が生き残り、獲得しなかった系統は消えてしまうのだが、その特性変換が起きたと推定されるのが、ちょうど今回の分析より少し前の時代なのだ。


ペストだけでなく、他の疫病が古代人の世界でどのくらい流行していたのか、どのくらい影響があったのは、これからも研究が続いていくだろう。一つの研究では劇的な結果は出なくても、積み重ねによって見えてくるものがある。
少なくとも、この十年で見えるようになってきたものは多い。これからの研究が楽しみだ。


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参考: ちょっと前の研究

スウェーデンで最古のペスト菌の痕跡発見、起源地と拡散の既存説に矛盾
https://55096962.at.webry.info/201812/article_10.html

この時点で5,000年が最古だろうって言われてたのに、遡りましたよねー