現代の君主たちはいかにしてその座にあるか。「現代世界の陛下たち」

タイトルがなんかカッコいいな、とかそんな理由で適当に読み始めたら思いのほか面白かった。
テーマは「君主制とデモクラシー(民主主義)の並立」だ。現代に存在する各国の王室のあり方と、それらがどのようにして生き残ってきたか、また消えてしまった王室はどのように消えてしまったのか、これからの王室のあり方とは…といった内容になっている。

現代世界の陛下たち:デモクラシーと王室・皇室 - 水島治郎, 君塚直隆
現代世界の陛下たち:デモクラシーと王室・皇室 - 水島治郎, 君塚直隆

言われてみると確かに、君主制と民主主義が並行して成立しているのはおかしな状態だ。うちの国も君主制(天皇制)と民主主義が並行しているが、天皇の権限は制限されている。にもかかわらず大多数の人には必要とされている。国家のアイデンティティのためには象徴となる君主は必要なものかもしれない。王政を倒してしまったがゆえにアイデンティティに悩むこともあるフランスの例など上げつつ、「デモクラシーの弱点を補えるのが君主制かもしれない」という話も出てきていた。

フランスやイタリア、ドイツでは王家の存在は消えてしまった。
しかしイギリスやスペイン、オランダには残っている。その差は何なのか。

また王家のあり方とはどういうものなのか。
ヨーロッパのみならずタイも大きく取り上げられていた。欲を言えば、消えてしまった王家の一覧の中に中国や韓国のような日本の近隣国が入っていると比較として面白かったとは思うんだけど。
タイの王家はヨーロッパにおける王家のあり方とはかなり違う。そもそも王政と民主政が並立しているのかどうかも微妙な感じだ。タイの場合は、亡くなった前国王の話がよく出てくるように、君主制という制度というよりは個人の資質に大きく依存しているものらしい。

多額の財産を持つために批判されることのあるサウジアラビアの王家と同じで、タイの王家も贅沢を批判されることが最近では多いなと思うが、存続の危うい王家の一つかなと思う。というか、この本の主軸の一つが「現代の王家は民衆の支持無くして存続出来ない」というところにある。

あと面白かったのは、現代に生き残った「陛下」たちは、お互いを参照しあって振る舞いを決めているのではないか、という指摘だ。
たとえば日本の天皇陛下の退位は、オランダのベアトリクス女王の退位の実績を参考にしているのではないか、演説内容もオランダの事例に沿っているのでは、という話。これはなるほどなと思った。
現代における君主と、19世紀以前の君主のあり方の違い。時代に合わせて王室のあり方は変化していく。逆に言うと、変化出来なければ消えてしまう。

他国はもちろん、日本の天皇制についてもグローバル視点から考えられるいい本だと思う。