人体に秘められた恐るべき謎の最新情報「新しい免疫入門」

最近なんか本屋で病気の歴史とか免疫とかの本積んであるのは、コロナウィルスのワクチン摂取が進んでいるからかな、とも思う。
この本は、21世紀になってから増えた研究結果も含め「新しい」免疫入門書、という触れ込みだったので手にとって見た。というか捲った瞬間に古代のアテナイではやった疫病の話から始まってたので、読まざるを得なかったw

新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで (ブルーバックス) - 審良 静男, 黒崎 知博
新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで (ブルーバックス) - 審良 静男, 黒崎 知博

免疫の働きについては一通り知ってるつもりだったが、体系的な知識は中学生くらいのときに読んだ「マンガで判る」的なシリーズと「はたらく細胞」から得たものくらいだったので、「え…本当はこんなに複雑なん…?」と面食らった。
T細胞とかB細胞とかマクロファージとか、お馴染みの細胞たちが出てくるけれど、彼らの中にも種類があり、どういう仕組で免疫のトリガーが引かれるのか研究中の部分もあるという。

免疫の研究は、生命が長い時間をかけてコーディングしてきた、ブラックボックス化したプログラムを読み解いていく作業に似ている。Aという刺激を与えればBという結果が出ることはわかっているが、内部でどう処理されているかがわからない。人体に使われる薬もそんな感じで、ある抗がん剤がやたらとよく効くけどなぜだかわからない→よくよく調べてみたら薬の構造がRNAに似ていて、病原体のRNAに反応する免疫機能のトリガーを引いていたとわかった、などの話が出てくるが、そういうものなんだ…? とちょっとびっくりした。実験して効くことは分かってるけど何でなのか分かってない、とかあり得るんだ…。確かに、製薬会社って何千通りもテストしてその中からアタリを探す仕事だとは聞いたことがあるけど…。

マクロファージなどの病原体を食べる食細胞の中に、食べたものからDNAやRNAを取り出す構造が組み込まれているというのもなかなかすごい発見というか、「そうなんだ?!」という感じだった。しかもDNAやRNAは食べたあと分解しないとわからないから、細胞の表面ではなく内部に反応するスイッチのような部分がある。自分の細胞の死んだのも掃除するから、自己由来のDNAと外部から侵入したDNA/RNAを区別して攻撃するかしないか決めなくてはならないのだが、その際の誤攻撃を防ぐ仕組みもまた凄い。コロナ関連のニュースで散々見た「サイトカイン」という言葉についても、その仕組が詳しく判るので、ニュースで不安を覚えた人にはお勧めだ。

あと、ワクチン接種から時間が経ってから熱が出るなど副反応が出る理由も判る。ワクチンによって身体に入ってきた物質に対してトリガーが引かれてから本格的に攻撃を開始するまでに、T細胞やB細胞といった、名前くらいは知ってる人が多いだろう細胞たちが各自の働きをする。ワクチンを打った後、二回目の反応が素早い仕組み(記憶細胞)も出てくる。なんとなくは知ってても、実際の動きで見ると「なんでこんな複雑な仕組みに???」という感じだ。ドキュメントのない秘伝のソース継ぎ足しまくりシステムみたいだ。そりゃたまにエラーも起きるさ。

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なお、免疫のエラーとしての疾病についても記述があり、たとえば一定以上の年齢の人がなりやすい痛風は、マクロファージによるものだという。花粉症やアルツハイマー病、バセドウ氏病なども免疫の異常によるものだというのが最近の説のようで、意外な気がした。

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分かっていない部分としては、たとえば腸管免疫。人間の免疫細胞の半分は腸の中にあるといい、まさに免疫の最前線なのだが、その免疫機能がなぜ腸内細菌を攻撃しないのかや、口から食べたものに対して獲得した免疫の扱いが他と違う理由が何なのかとかはまだ分かっていないらしい。漆職人が漆にかぶれないためにわざと食べる、そうすると炎症反応がおきず手が被れない、といった、食べ物から獲得される免疫があることははじめて知った。ということは花粉も食べれば花粉症にならないんじゃないか…とか。(幼少時サルビア吸ってた私は花粉症になってないが、まさかなぁ)
→あとで情報いただいて調べてみたら、実際に、花粉を食べる減感作療法が存在するらしい。


あと日本は、免疫学のレベルが世界的にトップクラスなのだそうだ。多くの重要な発見が日本の学者たちによって成し遂げられている。
この本はこれから医学を目指したい人や、医学生に対して、「免疫は面白いぞ! 免疫はこんなに研究しがいがあるぞ! こっちへ来い!」と、強烈にアピールしている本でもある。なんかこう、ブルーバックスによくある自分の研究分野大好きな人が、自分の面白いと思ってるものをてんこ盛りにした感じの本だった。
難解な部分も結構あるが、噛みごたえたっぷりに読める本だった。この手の本の中ではかなり読みやすい部類だと思う。オススメ。