ヴァイキング時代の織物と、作るためにかかる手間暇についての覚書

最近発掘された、ノルウェー中央のヴァイキング時代(850~950年ごろ)の裕福な女性の墓から、羊毛の織物が見つかったというニュース。
ヴァイキング時代の織物が発掘されることはなかなかないのでこれは貴重な発見。

Unique Viking Textiles Found In Woman’s Grave
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2021/06/unique-viking-textiles-found-in-womans.html

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真珠やデンマーク式のブローチなど色々と興味深い副葬品はあるのだが、織物についての記述で「ああそうか」と思ったことがある。
羊毛の織物は、ヴァイキングたちにとって資産の一部であり、通貨代わりに使える品だった。ヴァイキング行に出るために必要な船にも織物は必須で、記事内にもあるとおり「ヴァイキング船の帆を織るのに羊2000頭ぶんの毛が必要」。

もちろん織物は手で作るしかないため、羊を飼っているか、羊毛を買い集めて自宅で紡ぐところからスタートするか、大枚をはたいて布を買い集めるかしなければ、船の帆が手に入らないのである。

ヴァイキング行に出られるのは、裕福な大農場主だけだったと言われる。帆ひとつ取っても、揃えるのが相当大変だったんだなと判る。
産業革命以前の世界では、布というものは現代人の感覚よりはるかに高価な財産なのである。新品を使うこと、特別な時にしか着ない服の所有は、ごく限られた階級にだけ許された。ましてそれを埋葬してしまうのは、ごく一部だけだ。(古代エジプトでも、ミイラに巻く布に新品を使ってもらえるのは一般的に王や貴族だけだった)

発掘で出てくるのはボロボロの布だけど、その布の価値や意味は現代人が思うよりはるかに重かったのだと思う。