イスラームの宗派あれこれ。実はイスラムじゃないけどそう名乗ってる人たちもいるんだよっていう話

キリスト教といえばカトリックとプロテスタントと正教系、イスラム教といえばシーア派とスンニ派、くらいの派閥は認識されていると思うのだが、多分そのへんで止まっている人は多いと思う。仏教のように細かい宗派の違いなんて無いだろうと思われているかもしれない。

しかし実際のところ、一神教も実に様々な宗派があり、地元でローカライズされていることも多い。

というわけで今日は、イスラム教の地方差とかについて書いておこうと思う。


●エジプトで盛んな「スーフィズム」

スカートみたいなの履いてぐるぐる回ってる姿で有名なアレ。実はあれもれっきとしたイスラム教の一派で、修行によって神との合一を目指すという、どこか古代のグノーシス主義の生き残りのような雰囲気を持つ宗派だ。仏教でいうと禅宗が近いと思う。ちなみにあのグルグル回ってるのは、瞑想の修行のようなものだという。

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コーランは使うし確かにイスラム教ではあるのだが、修行によって火の上を歩くことが出来るようになる、剣を呑めるようになる、など大道芸的な側面があったこと、聖人崇拝(要するに偶像崇拝)が盛んなことなどから、次第に禁止されていくようになった。ただし、今でも一定数の信徒は存在する。

詳しくは以下などを参照。

スーフィー教団―民衆イスラームの伝統と再生 (イスラームを知る) - 高橋 圭
スーフィー教団―民衆イスラームの伝統と再生 (イスラームを知る) - 高橋 圭


●アレウィー教徒

面白いのがトルコに居るアレウィー教徒だ。
資料によってはイスラム教の一派と書かれていることもあるが、これは妥当な見方とは言えない。信者たちが迫害を恐れて、あるいは本来のイスラム教を知らないまま、自分たちはイスラム教徒だと自称しているだけで、実際は全く違う色々ごちゃまぜ宗教となっている。

具体的には、以下のような違いがあるという。

・コーランなどの書物を拠り所としない
・日に五回の礼拝はしない
・メッカ詣でをしない
・断食期間が違う

唯一神を信仰しているものの、コーランを使っていない、という時点でかなり大きな差異がある。
また、コーランを使っていないため、断食の時期も違うし、女性は髪などを隠さないし、タブーとされる食物も違っている。元々の地元の宗教体系に、一部シーア派の教義が取り込まれたものではないかとされている。(「漂流するトルコ」/旅行人)
こうした場合、本人たちは「イスラム教のxx派だ」と名乗るので、実態まで研究しないと、実際は別なのが見えてこない。

漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」 - 小島 剛一
漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」 - 小島 剛一

尚、北アフリカにあるアウィー教徒とは、名前が似ているだけで特に関係はないようだ。


●世界の各宗派

全体的な話をすると、イスラム教の宗派はだいたいこんな感じで別れていることになっている。

Madhhab_Map2.png

細かく見ればotherの部分はもっと多種多様に別れるだろうし、一つの国の中でも沙漠地帯と都市部などで信仰が違っているのが分かると思う。部族によって、地方によって、宗派が違う。イスラム教徒の世界も一枚岩ではない。そして、みんなコーランを使ってるのは一緒かと思ったら、アレウィー教徒の例のように例外もいる。

「イスラム教」といっても、仏教と同じように宗派も内容も色々なのだ。
という、ちょっとした豆知識である。何かの参考になれば。



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おまけ

海外の「ブルカ禁止」にまつわる、最初に知っておくべきこと。
https://55096962.at.webry.info/202103/article_13.html