「エラムとインダスの間」2000年代初頭に盗掘品から発見された未知の文化圏の研究成果が少しずつ明らかに

イラン高原で近年見つかった未知の文化圏、ジーロフト文化についての記事がナショジオに上がっていた。

洪水で4000年の眠りから目覚めたジーロフト文化、イラン
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/030100098/?P=1

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この文化は発見地の名前をとってジーロフト文化と名付けられてはいるものの、その位置づけなどはまだ確立されていない。ざっくり言うとメソポタミアがシュメールに続くアッカド時代だった頃にメソポタミア地域と強い繋がりを持っていたらしい都市国家と考えられている。ここの東にインダス文明地域があり、西にはエラムがある。その"狭間"となる地域である。

出てきている遺物の美術スタイルは驚くほどメソポタミアのものに似ている。
そのため、この地域には神話に語られる都市アラッタがあったのではないかとか、都市国家マルハシだったのではないかとかの説が出されているが、いずれも確定はしていない。発掘調査は継続しているものの、結論が出るのはまだまだ先になると思う。

このへんの地域に手を出したのがわりと最近で、中の人もあんまり知らなかったので、ついでに少し調べてまとめておくことにした。


●場所について

記事内にある地図がこれ。

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ここに、ラピスラズリの交易ルートを重ねてみる。
https://irdb.nii.ac.jp/00843/0001635059
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ジーロフトの位置は、ラピスラズリの産地である現アフガニスタンのバダクシャンから、メソポタミアへと続く交易ルートの「南周りルート」と呼ばれているルートの線上にある。ジーロフトの遺跡からはラピスラズリを使った遺物も出ているため、この交易ルートを通じてメソポタミアの影響を受けたのは間違いない。

おそらくこの文化圏は、ペルシャ湾を挟んだ古代の交易網の一端を担っている。
マガンやメルッハといった湾岸の文化圏の手前にあり、中継地点だったはずだ。イラン高原の辺境に高度な文化が栄えた理由も、これで無理なく説明できる。

また、テペ・ヤヒヤ遺跡のすぐ近くで、調べてみるとテペ・ヤヒヤからも似た様式の遺物は出土しているらしい。
その時は「異文化様式」として片づけられてしまっていたようなのだが、実はメソポタミア風に作ったものというよりは、すぐ近くに、この様式を自前のものとして生産している未知の文化圏が隠れていた、というわけだ。

これは、たとえばヒッタイト王国が発見される以前のアナトリアからメソポタミアやエジプトに似た様式の美術品が出て来たとして、「きった真似たのだろう」と考えられてしまうのと同じようなものだろうと思う。確かに似ているし影響も受けていたが、実際は、異文化に似せたのではなく、そこに、その美術様式を己のものとする王国が存在したということなのだ。


また出土品の中で気になるのは、文字らしき謎の記号を記した焼成粘土板が見つかっているということ。
焼成なので、粘土に形を刻んだあとわざわざ焼いて、保存に耐えるようにしてあるのだ。

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原エラム文字に似ているものもあるというが、これがほんとに…よくわからん…。。。

★ジーロフトの焼成粘土板
Ev3CkzKU8AEBmRn.jpg

★原エラム文字
800px-Proto-Elamite_tablet_with_transcription.jpg


右上のやつは確かに原エラム文字と似ている。というかすぐ近くのテペ・ヤヒヤで使われていたのが原エラム文字なので、おそらく交易でやりとりする上で知っていたのだと思う。ただ、もう一種類の□とか〇の謎の記号は…?? わざわざ焼いてあるからには一時的なメモではなかったのでは、と思うんだが、文字にしてはバリエーションが少なすぎるような気も。わからん…。

とにかく、まだ色々と謎が多い。今後の研究成果を正座待機、といったところ。



未知の古代文明に未解読文字。ワクワクする発見は、きっとこの世界にまだたくさん眠っている。
退屈する暇なんて無いんだぜ、まだ知らないものを探しに行こう。

…とりあえず、この年度末処理が終わってからね(涙目になりながら


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なお、途中に出した交易ルートの図は少し古いものになっていて、最近ある程度分かり始めたオマーンやバーレーンを経由した海上ルートが描かれていない。ディルムンなど湾岸の中継都市国家を経由するルートについては、こちらの記事を参照してもらいたい。

メソポタミアとインダスの間、知られざる「湾岸文明」の話
https://55096962.at.webry.info/201602/article_16.html