最近「昆虫食」を推して来る人を見かけるのだが、前提として昆虫を家畜化しないと無理だよね

食料事情の改善と絡めて昆虫食の輝かしい未来を語る論調のコラムを何本か読んで、正直「ちょっと浅いな」と思ったので、ツッコミがわりに根本的なことを書いておきたい。


■現状の昆虫食は「ジビエ」と同じポジションでしかない

これは、愛好家だけが食べているとか、珍しい食べ物だとかいう意味よりは、文字通り「野生動物を狩って食べているのと同等」という意味。でもコオロギは飼育されている、と反論してくる人がいるかもしれないが、そのコオロギだって元は外で捕まえてきたものを繁殖させたもののはずだ。裏山に罠仕掛けてとったイノシシや、庭の落とし穴でとったウサギを飼育小屋で増やしているのと変わらないのだ。



■昆虫食に主食の一部を担わせるには、昆虫の「家畜化」が必要不可欠

この状態から抜け出すためには、昆虫を家畜化しなければならない。つまりは飼育に適した種を生み出すという意味だ。人類は今までの歴史の中で、ハチや蚕など何種類かの昆虫の家畜化に成功している。逆に言うと、いま家畜化されていない昆虫は、過去の人類が何らかの理由で家畜化しなかった/出来なかった種だと思ったほうがいい。

たとえばコオロギやバッタの場合、人間が作る作物を食べるため食物が競合するということが挙げられる。害虫が湧いてくるので駆除がてら食べるのはアリだろうが、敢えて増やそうと思わなかったのだろう。というか、うっかり増やして逃げられたらえらいことになるし。

その点、ハチならば、たとえ逃げられても人間と食物が競合することはない。増やしたところで人間にはほぼ利益しかないという、実に優秀な家畜と言える。



■家畜化する際に必要な視点

人類の食糧事情を改善したい、というのがそもそもの目的であるならば、最低限、「人間と食べ物が競合しない」という条件が必須になる。この点において、バッタやコオロギはよほどのことがなければ対象になり得ない。人間の主食は植物なのだ。同じ種類の植物を食べる昆虫を、人間の食料の一部を使って養殖するのでは本末転倒だ。おいしい牛肉を作るために穀物を牛に与えたりしているうちに人間のほうは飢餓に陥る、とかいうバカバカしい状況を、昆虫でも繰り返すことになる。

人間に食べられないものや残飯を食べる昆虫を選定すれば最高だ。その場合、増殖力も高いゴキブリあたりが最適だろう。家畜化して品種改良すれば、人間が「おいしい」と感じる昆虫を生み出すことも不可能ではない。

そもそも、いま家畜化されている動物たちは皆、人間が美味しいと思える肉の味になるよう育てられている。昆虫食を現実のものにしたいなら、当然、味にはこだわるべきだろう。万人ウケする味を目指すもよし、日本人むけなら、お醤油に合うエビっぽい味の肉厚な昆虫とか開発すればどうだろうか。



■現状の昆虫食は「ゲテモノ食い」「なんか意識高い系の我慢くらべ」の位置

ぶっちゃけいうと、現状の昆虫食論は理想だけ先走って、現実に即したものになっていない気がしている。まぁコオロギクッキーもあれば一回くらいは食べてみますよ。ふーん思ってたより食べられるね、ってなりますよ。だけど、「おいしい! これ好きだから次からも食べたい」ではなく「なんとか食べられる」のレベルでしかない。

「好き」と「ガマンできる」の間には、果てしなく高い壁がある。

そして、形がないほど砕くとか、味つけに苦労するとかでなければ食べられないのであれば、それはご家庭の一般食にはなり得ないことも注意してもらいたい。

もしどこかに、本気で昆虫食を世界のメジャーにしたい人がいるのであれば、牛肉や豚肉がどうやって一般的な食材になったかといった歴史をおさらいしたほうがいい。

スーパーでいつでも買える。
いろんな食材と組み合わせて食べられる無難な味。
調理方法が一種類ではなく、好き嫌いのある人でもどれかは好きになれる。

そこまでいかないと、一般食にはならない。そのためには、対象となる昆虫の家畜化が絶対に必要なのだ。





推したい人は、「私は好きで食べられる」で止まるのではなく、「みんなに好きになってもらって食べてもらえる」を目指して欲しい。