「世界で最初に銅器を生産しはじめたのは北米インディオ」という現実。(おそらく今後は定説化するはず)

金属器の生産技術の歴史ってユーラシア大陸中心で語られるのがほとんど全部なんだけど、実は世界で最初に銅器の生産技術を手にしたのはどうやら北米インディオ、ということになりそう。(北米先住民の中でも、エスキモー諸部族を除くいわゆる"インディオ"がここでの対象)

Ancient Native Americans were among the world’s first coppersmiths
https://www.sciencemag.org/news/2021/03/ancient-native-americans-were-among-world-s-first-coppersmiths

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ユーラシア大陸での銅器の製造・使用は、早ければ紀元前5千年ごろからスタートすると考えられている。技術が広まり、一般的になっていくのは紀元前3000年を少し遡るくらいの頃。だが、北米の五大湖周辺では、約8,500年前には既に矢じりなどに銅が使われていた。(それが今回の記事になっている部分


この研究の前段となる発見については追えていないのだが、五大湖周辺で銅の採掘がはじまったのはおそらく1万年ほど前のことで、その証拠として湖の底に銅器生産の際に出る金属滓の堆積があるという。

…って言われても「マジかよ…」としか反応出来ないのだが、五大湖が世界でも有数の銅鉱床のある場所だと知ると、なるほどと思ってしまう。
鉱床があり、森林もある。もしかしたら古代人は、山火事や焚火に混入した鉱石の変化を偶然見て、これを利用することを思いついたのかもしれない。そもそもの人間の頭のスペックは世界中どこも同じなのだ。そのくらいは不思議ではない。

ただ、銅器生産の技術はあまり発展しなかった。
実験してみた結果、あまり純度の高くない柔らかい金属は、固い石器に比べて使い勝手はあまり良くなかったらしい。

そのせいなのか、約3,000年前には何故か銅器がほとんど使われなくなってしまい、技術としては廃れていく。
気候変動などによって付近の森林が消え、木材が入手しづらくなったので、石器で代用するほうが効率的と考えられるようになったかもしれないのだそうだ。

継続して利用され続けたのは、少量の銅で作ることが出来、石で作ったものより形を整えやすかった矢じりだけ、なのだそうだ。

なお、

"This month in Radiocarbon, the team reports that the most reliable dates, combined with the sediment data, indicate the Old Copper Culture emerged at least 9500 years ago and peaked between 7000 and 5000 years ago. That makes it at least as old, and perhaps older, than copper-working cultures documented in the Middle East, where archaeologists have documented a copper pendant believed to be 8700 years old."


とのことなので、今回出ている年代が間違っていない限り、新大陸での銅器の使用は、ユーラシア大陸での最古の銅器の事例(約8,700年前)より古くから開始されていたことになり、金属利用に関する資料は最古の事例の書き換えをしなくてはならなくなる。また、アメリカ大陸における「銅器時代」のピークも、ユーラシア大陸より早いということになる。

とはいえ、まだこの時代は太洋を渡る航海技術も無く、アメリカ大陸から外に技術が伝わった可能性は無いのだが。


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世界史を考えるとき、無意識にアメリカ大陸を外して考えてしまうことがある。
また、何となく、「閉鎖された遅れた世界」のようなイメージを持ってしまうこともある。

けれど本当は、あまり知られていないだけで、あるいは後世に伝わらなかっただけで、歴史の先をいっていた部分も多い…と思うのだ。

(ただ、この発見がここ10年で下地固めされてきたように、今後の10年でまた書き換わる可能性もあるんだけどね)
(考古学のジャンルもけっこう常識が覆ったり書き直されたりするジャンルなので。)