エジプトの遺跡から考える観光資源としての古代遺跡。観光に最適化されて雰囲気が壊れてしまう遺跡たち

エジプトさんは最近、観光の目玉となる遺跡群の修復やクリーニングをうちこち行っている。コロナの影響で観光客が減っているので今のうちに…というのもあるんだろうが、何か…こう、修復というより 改造 じゃないかな、これ? というところが気になっている。

切っ掛けは、最近"修復"された、アスワンにあるイシス神殿を見ていた時だ。
去年修復が終わって、その時の写真はなんかぼやけていたのでフーンって感じだったのだが

https://www.egypttoday.com/Article/4/95629/Restoration-of-Isis-Temple-in-Aswan-completed

クリアな写真を見て「???」ってなった。
いやあの。これ…電球とりつけちゃってる…あの…

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https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2021/01/restoration-of-isis-temple-in-egypts.html

電線どっから引っ張って来た。


床にコード落ちてないことから判るように、これ、後ろの石の壁に穴開けて通してるじゃないかと思うんですよ…。ピラミッドの中ですらそうですからね。あとエジプトさん、壁画ないところには平気でドリルで穴開けてネジ打ち込んだりする。

そしてこれ、神殿内部の薄暗い静謐な雰囲気も台無しですよ…確かに壁画は見えるんだけど、見えはするけど、古代の人たちが見ていた風景とは全然違うものになってしまっている。これだと博物館の中に保管されてるのと何も違わない。

確かにこの神殿は、古代と同じ場所にあるわけではない。アスワン・ハイ・ダムの建設による水没危機から保護するためにいったん解体して近くの屋外に再構築されている。しかし、それでも、元の場所に近いところで屋外で、自然光の下で鑑賞できる貴重な建築物だったはずなんだ…。このライトアップは…良くないよ…(´・ω・`)


そしてこれは、以前、階段ピラミッドの修復の際に感じた違和感とも繋がっている。

https://abcnews.go.com/International/egypts-oldest-pyramid-reopens-public-14-year-restoration/story?id=69411249

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動画で見ると雰囲気が分かりやすいのだが、完全にただのアトラクション。
うーん…これ…中に入って楽しいかって言われると…うーん…?
https://www.youtube.com/watch?v=ma7qtMetPtQ&feature=emb_logo

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ピラミッドは古代の王たちの墓であり、地下の暗い通路は冥界そのものだった。
その場所が華麗にライトアップされちゃってビッカビカになっているのは、本末転倒というか雰囲気ぶち壊しというか、この場所が持つ意味を全て殺してしまっているとしか思えない。おまけに地面これ、何で固めたんですかね…? コンクリか何か…? それは…。百年もすれば劣化するのでは…。というか遺跡保護や継続的な現状維持の観点を一切抜いて、大量の観光客を効率的にさばくための構造に作り変えたようにしか見えない。

現代のエジプトの経済は、観光産業にかなり依存する構造になっている。
これらの修復を見るにエジプトさんは、遺跡を"ロマン"という名で味付けした観光産業の商品として切り売りしていく道を選んだんだなぁと思える。
これからコロナが明ければ、貴重な古代の遺跡はもはや、限られた人にしか訪れられない場所ではなく、ローマのコロッセオのように大量の観光客が押し寄せ、写真を撮りまくり、とくに歴史に興味は無くても「そこに行った」ことに価値を置く人たちによって、消費されていくものとなるだろう。もちろん人が沢山来れば来るほど遺跡は痛んでいく。今ですら、つぎはぎだらけなのだが、その状況は悪化こそすれ好転はしない。

とはいえ、すべての形あるものは失われるさだめである。
そして、遺跡を一部の考古学者だけが独占していいのか、という昔から繰り返されてきた議論もある。

ただ、それでも、こんな雰囲気ぶち壊しの改変は望んでいなかったなぁ…というのが、正直な思いである。